何もかもが滑稽

何もかもが滑稽

映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「タクシードライバー」感想 すごくヤバい奴だけど気持ちはわかる

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どうもきいつです


クライム映画「タクシードライバー」観ました

夜のニューヨークを走るタクシードライバーを
主人公に彼の葛藤と狂気を描いた1976年の作品
第29回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作品です

監督は「グッドフェローズ」などの
マーティン・スコセッシが務め
主演はロバート・デ・ニーロです

 

あらすじ
ベトナム戦争帰りの元海兵隊員トラヴィスは
戦争によって不眠症を患っており
夜の街をタクシー運転手として過ごしていた
世界の不浄さにいら立ちを感じていた彼は
やがて、闇ルートから銃を手に入れ自己鍛錬を始め
やがて、彼の胸中に一つの計画が沸き上がる

 

感想
共感できないようなサイコパスな主人公なのに
なぜか気持ちが共感できる
変化を求めて足掻く姿は
滑稽ながらもグッとくるものがあります
ヒーローとヤバい奴は紙一重なのかも
とも思ったりしました

 

よく耳にする作品だったんですが
今まで観たことがなく
初めて観てみました

ちょっと掴み所の無いような作品でしたね
でも、心に伝わってくるものもある
なんか不思議な作品でした


この映画は
正直言ってそんなに面白い映画ではないと思う
ストーリーがよくわからないし
何を伝えたいのかもいまいちわかりづらい

それに主人公がすごくダサい
全然格好良くない上に
好感を持てる人間性でも無かったりします

主人公がやっていることも
支離滅裂で何がしたいのか…


この映画が面白くなかった
好きじゃない
って人も多いと思います
その気持ちもよくわかる

でも、僕はこの映画が嫌いになれない
むしろ好きだと思います

 

そもそも、本作は全然エンターテイメントでは
ないですね

アクションシーンがあるわけでもないし
ストーリーは淡々と進んで山も谷も少なく
仕掛けのある展開も無いのでちょっと退屈

物語のラストは
ハッピーエンドのように見えるけども
すごくモヤモヤが残ると思います

 

この映画で描かれているのは
主人公のトラヴィスという男
彼が何を考えどういう生活を過ごしているのかを
淡々と見せられます

ただ、彼の言動には全然感情移入できない

なんでそんな行動はできるの?
と疑問に思うことが多く
彼の目的なんかも漠然としすぎていて
一体何がしたいのか理解に苦しむ

完全にサイコパスな人間なんですよね

他人の気持ちは全然理解できていないし
行動が全て自分本位

デートにポルノ映画を観に行くのなんて
明らかにおかしいですが
彼はそのおかしさには全く気付けていない


そんな主人公なので
嫌いになる人も多いでしょうね

 

でも、僕はトラヴィスの行動に
すごく共感できる部分もある

基本的に彼のサイコパスな言動には
共感できない
戦争経験の後遺症でそうなってしまってるのかも
しれないですが
やっぱり、彼が何をしたいのか
何を考えているのか
というのはよくわからない


ただ、彼がどうにかして
自分や世界を変化させようと足掻いているのは
とても伝わってくる

自分の現状から抜け出すために
何かをしようとしている姿には
やり方がどうであれ
心に刺さるものがあります


彼がやろうとしていることは
明らかに間違っています

それに、行動を起こす理由を
世間のため、誰かのためと
正義の味方のような理由をこじつけてますが

結局は自分のための行動なんです


なぜ彼がそんな事をするのかと考えたら
たぶん自分の心の穴を埋めるためだと思う

何者でもない自分が嫌で
何者かになろうとしているんです

そして、その気持ちはすごくわかる
僕にもそういう気持ちがある


だから、彼のやろうとしていることは
理解できないけど
なぜか彼にとても共感できる

トラヴィスが筋トレをしていたり
銃を構えてセリフを決めたり
武装のための道具を作っていたり
それらの場面はすごく滑稽でギャグみたいなシーン
なんですが

その姿でさえ
なんかグッとくるんですよね


トラヴィスは本当にダサい男で
やることなすこと全部ダサい

女性に冷たくされるだけでブチギレるし
家でセリフの練習とかしてる
「俺に用か?俺に向かって話してるんだろ?」
とかカッコつけて言ってるけど
ダサさすぎて笑ってしまいますよね
計画の直前で怖気づくのもめっちゃダサい

でも、そんなところに彼の哀愁を
感じてしまいます

彼自身もそんな自分に違和感があるんだと思う
だから、何か大きなことをすれば
自分を変えることができると漠然と思っていて
あんな行動に出ているんでしょう


売春で稼ぎ生活しているアイリスと出会って
トラヴィスは彼女を救おうと必死になりますが

ここも、やっぱり
アイリスのために行動しているんじゃなくて
自分のためです

彼女を救うことで
何者かになれるんじゃないのか
という気持ちだけで彼は動いている

だから、最後の行動も
トラヴィスの自分本位な行動で
アイリスのことなんて全く考えていないわけです


そして、ラストで彼は英雄のように扱われて
ある意味、彼の望みが達成できたわけですが
ハッピーエンドには見えません

むしろ、トラヴィスはあそこまでやったにも
関わらず
結局、何者にもなれず
終わってしまったように見えます

ああなってしまうのは自業自得だけど
とても切なさを感じました


それに、あのラストは怖くもありますよね

トラヴィスみたいなヤバい奴が
ヤバいことをした結果
英雄視されてまた街へ解き放たれてしまう

あんなヤバい奴は野放しにしちゃダメだろ
とも思いますが

あんな奴だからこそ
ヒーローの素質があったのかもしれません
ヒーローって結構ヤバい奴多いような気がするし

タイミングさえ合ってしまえば
あんな人がヒーローになっていくのかもしれません

 

この映画を観て
以前観た「ナイトクローラー」を思い出しました

めっちゃ似てますよね

主人公の雰囲気や物語
ラストなんかも

本作の影響をかなり受けているように
思います

どちらもサイコパスな主人公ですが
共感できる部分がありますし
両方とも好きな映画ですね

 

あと、この映画
音楽がすごく良かったですね

内容と音楽がとてもマッチしていると思いました

トラヴィスの不安定な感じや
憂鬱な雰囲気なんかを
音楽ですごく表せていたと思う

それに、緊張感を煽る音楽も
良い使い方をしていましたね

 

面白くないって言う人もいるでしょうが
僕はこの作品がとても好きになりました

彼のサイコパスな言動より
彼の心の葛藤のほうに目を向ければ
共感ができるかもしれません

結構、昔の作品でしたが
現代の人にも伝わるものが
込められている作品だと思います

 


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映画館の4D上映設備は宝の持ち腐れ

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どうもきいつです


先日、TOHOシネマズで上映されている
「マトリックス」を観てきました

「マトリックス」製作20周年を迎えたということで
期間限定で4D上映されています

正直、僕は4D上映にはあまり興味がなく
観に行ったのも
「マトリックス」を映画館で観たい
って動機だけです

多少、既存の作品が4Dになるとどうなるのか?
という好奇心もありましたが


そして、今回僕が観に行ったのはTOHOシネマズで
TOHOシネマズの4D設備はMX4Dと言います

その他に4DXと言うのもあるんですが
TOHOシネマズ以外の映画館は
ほとんどこれだと思います

MX4DはTOHOシネマズが独自で
展開しているものみたいですね


MX4Dと4DXには多少の機能の違いもありますが
ほとんど同じです

MX4Dのほうが若干機能が多いみたいですけど
根本的にやってることは同じ
料金に関しても
どちらも通常の鑑賞料金にプラス1200円くらい
正直、高いですよね


で、僕はMX4Dを観るのは2回目
だと思っていたんですが
以前観たのはどうやら4DXだったようです

確かに、2つの違いを
若干感じれたように思います

 

まず、4D映画の説明をすると

映画の映像に合わせて座席シートが動いたり
水が掛かったり、風が吹いたり
フラッシュや匂いなど
様々なことを映像と同じく体感できる
体感型の映画です

遊園地のアトラクションみたいな感じですね
USJのアトラクションなんかにもあります


細かい機能の詳細や
MX4Dと4DXの違いなどは
面倒くさいから端折ります

そういうのをまとめてるサイトは
たくさんあるのでそこで見れば
詳しく解説されてますよ

 

今回、僕が言いたいのは

映画館で公開されている4D映画は
4D映画じゃないってことです

上映設備やシステムは素晴らしいと思うんですが
肝心の作品が普通の映画

現状では
4D上映設備が全く生かされていない
宝の持ち腐れです

 

今回MX4Dで観てきた「マトリックス」で
それをものすごく感じました

映画の映像に合わせてシートが揺れ動いたり
銃撃に合わせて風圧が来たり
格闘シーンでは衝撃を与えられる
様々な効果を体感できます

ただ、映画を観ていて
それらの効果をやっぱり邪魔に思ってしまう


これは最初から予想はしてました
でも実際に観てみると
それ以上に細かいところまで気になってきます

例えば
敵に攻撃されてシートが動いたり衝撃が加わるのは
わかります
でも、敵がダメージを受けたときにも衝撃が来る

他にも
静かな会話シーンでも
登場人物の少しの動きやカメラワークに合わせても
シートが動いたりします

雷が鳴る場面や銃撃の場面では
ストロボがビカビカと光り
ちょっと目障りだったりする


全体的に
とりあえず動きのあるシーンは動かそう
激しいシーンでは風を出そう
雷が鳴れば光らそう
みたいに無理やり4Dを当てはめているわけです

ただ、それは仕方がないことで
もともと普通の映画として作られているわけだから
そうなってしまうのはあたりまえ

4Dの効果が弱ければ
わざわざ高い金を払って観る意味は無いですからね


で、最近はMX4D、4DXともに
観ることができる映画館が増えてきていて
いろんな作品が上映されています

でも、その上映されている作品って
大体が新作で話題になってるアクション映画
なんですよ
後は人気のアニメ映画など

これじゃあ全然4Dを生かせてない

とりあえず人気の映画を4Dにしておこう
って状態がずっと続いています


そもそも4D映画ってアトラクション重視なんですよ
だから、本当は終始シートが動きっぱなしで
風が吹きまくり、水がぶっかかり
過剰なほど体感できる方が絶対に楽しいはず

そして、映像との一体感も大切
まるで自分が映画の中に入ってしまったような
気持ちになれれば最高だと思う


しかし、4D化されている人気映画は
ことごとく4Dとの相性が悪いと思うんですよね

ストーリー性があって2時間ほどの上映時間
根本的にアトラクションには向いていない

そんな映画には
動きの少ない場面は絶対あるだろうし
カット割りやカメラ-ワークが凝っていたりもする
ストーリーが複雑なものもあるでしょう

ただ、それは映画として面白くなる要素であって
4D映画としてはあまり向いていない
4Dで観たら
やっぱり普通のほうが良かったって
思ってしまうでしょうね

せっかくの4Dを全く生かせていないと思うんです

 

ここからは、僕が初めて観に行った
4D映画の話をします

2016年に公開された
「ボクソール★ライドショー 恐怖の廃校脱出!」
というホラー映画

「貞子vs伽椰子」などの白石晃士が
監督を務めている作品です

本作はかなり知名度が低い作品だと思う
DVDにもなっていないので
今では見る術が無いようなレアな映画
内容は低予算でチープなホラー

でも、この作品実はすごいんですよ

この作品は
完全に4DX専用に作られたホラー映画

この作品はめっちゃ面白かったです

4DXの機能をフルに活用するという
コンセプトをもとに作られていて
いろんな効果を存分に味わえる作品です
POV方式の一人称視点で臨場感もすごくある

それに、上映時間は30分ほどで
映画としてはかなり短いんですよ

時間は短いんですが
ガンガン動きまくる4D映画としては
かなりちょうどいい尺です

酔わない程度で終わってくれる


そして、監督の個性がとても出ていて
クセのある作風が
遊園地のアトラクションでは体験できないような
面白さも生み出しているんです


僕はこれでこそ4D映画だと思うんですよ

普通の映画では体験できないような
一体感や刺激を味わえて
ただのアトラクションではなく
映画だからこその面白さも味わえる

 

で、この作品が公開されたのは2016年で
それから3年
4D映画として作られた作品って
全然なくないですか?

僕はこの作品以降で
4D専用映画というのを耳にしたことがない
もしかしたら作られているかもしれないですけど
数えるほどでしょうね

せっかく全国のいろんな映画館にも
4D映画の設備が整ってきているんだから
そんな映画がもっと増えてもいいと
思うんですけどね

でも、現状は4D設備があるから
とりあえず話題の映画を4Dにして上映しておこう
って感じで
4Dの良さを全く生かせず
4Dの面白さを伝えることもできていない


低予算でも4Dの面白い映画が作れるんだから
お金をかければ
もっとすごいのができると思いますよ

 

それに、4D専用映画を作らなくても
4D設備をもっと活用することはできると思います

既存の作品であっても
4Dと相性のいい作品はたくさんあるはず
そんな映画をもっと公開していけばいいんですよ

4Dと言えばアクション映画って感じですけど
ホラー映画なんかも相性が良いと思う

4D映画の効果は恐怖演出にも使えそうです

特にPOVの作品は4D向きじゃないですかね

動きなんかもリンクさせやすそうですし
より臨場感を生み出せるはず

ゾンビ映画の「REC/レック」とか良さそうですし
「クローバーフィールド/HAKAISHA」とか
すごく相性が良いと思う
「武器人間」とかも面白くなりそう


アクション映画では
「ハードコア」とかめっちゃ4D向きですよ
この映画は4Dで観れば絶対楽しいでしょ


やっぱり4Dは一人称視点と相性が良いように思う
一人称視点なら観客との一体感を作りやすいし
前進する時の浮遊感も上手く使えそうです

4Dの良さは
疑似的に前進する動きが魅力でもあると思っていて
普通の映画では前進する場面が少なく
あまり魅力を伝えれていない

でも、POVなどの一人称視点なら
必然的に前進するし
カット割りが少なく映像に区切りがあまり無いから
より映像と一体化しやすいと思います


人気映画を4D上映したところで
そんなに客は入っていないと思うし

それなら、もっと4Dと相性の良い作品を
たくさん上映すればいいのに
と思うわけです

 

4D映画ってかなり可能性を秘めた
エンターテイメントだと思います
ただ、今のところ全然うまく活用されていないのが
すごくもったいないですよね

現状じゃ、内容に対して
値段が高すぎると思ってしまう
4Dで観るより普通に観とけばよかったと
思ってしまう

映画業界はそう思われない工夫を
もっとするべきだと思います

 

 

映画「僕のワンダフル・ジャーニー」感想 犬好きなら感動できる でも絶賛はできない

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どうもきいつです

ドラマ映画「僕のワンダフル・ジャーニー」観ました

2017年の映画「僕のワンダフル・ライフ」の続編
最愛の飼い主イーサンとの再会をを果たした
犬のベイリーのさらなる生まれ変わりの旅を描いたファンタジー映画です

前作の監督ラッセ・ハルストレムが
製作総指揮を務め
監督はドラマシリーズ「フレンズ」などの
ゲイル・マンキューソです

 

あらすじ
イーサンと再会したベイリーは
彼の家族とともに農場で幸せな日々をおくっていた
そんなある日、イーサンの孫娘のCJが
母親に連れられ農場から出ていってしまった
悲しむイーサンの姿を見たベイリーは
次の生まれ変わりでCJを見つけ出し彼女を守ることを誓う

 

感想
犬が好きならばそれだけで満足できそうな作品
感動もできると思います
ただ、冷静になってみると絶賛できる映画ではない気もする

 

前作の「僕のワンダフル・ライフ」が
なかなか感動できて良い映画だったので続編である本作も観てきました

率直な感想は
感動できたし良い映画だったと思いました
それに、犬がとても可愛い
とても微笑ましい作品でした

単純に
犬が好きな人、犬を飼っている人はこの映画に好感的だと思います

共感できる部分はありますし
劇中の登場人物や出来事を
ペットを飼っている自分に置き換えて見ることもできる


そもそも、犬好きが観に行く映画
って作品なのかもしれません

僕が観に行ったときも
たぶん犬好きが多かったんじゃないかと思う
劇場内はとても微笑ましくほっこりとした雰囲気
犬可愛い~
って空気が充満していました


そんな僕も犬を飼っていますし
この空気感の一員になっていました
癒されたし感動した

犬を飼っているのは実家なので
犬に会いに実家に帰りたくなりましたもん


とにかく、犬が好きならば無条件で好きになれる作品ですよね

犬好きの人からすれば犬が頑張っている姿さえ見れりゃ
それはもう名作なんですよ


それ故に
批判しづらいジャンルでもありますよね
ちょっとでも否定すれば人でなしみたいに言われそうで少し怖い

 

個人的に特に良かったと思った点は

終始、犬がバカに描かれているところ

主人公の犬ベイリーは
一応擬人化されているというか
心の声がアテレコされてる

でも、そこまで人間っぽくないんですよ

基本的に食べ物のことばかり考えてるし
それ以外では遊びたいとか

飼い主を幸せにしたいという目的はあるんですが
そのためなら他のことはどうでもいい
って感じです

飼い主以外の人間には結構酷い仕打ちをしたりする

人間同士では重たい空気が流れてるけど
ベイリーは能天気な事を考えてたりもします


それが犬のバカさが上手く表現できていると思いました

人間らしく描かれていないのが逆に犬っぽさをすごく表している


現実世界では犬の声なんて聞こえるわけありませんが
本作でのベイリーの声はなんかリアルに感じてしまう

犬を飼っている人ならわかると思いますが
犬ってマジで餌のことしか考えてなかったりするし
飼い主や家族のこと以外はどうでもいいとかも思ってそう

家の中で大惨事が起きてるのに
なぜかめっちゃテンション上がってる時とかあるし

基本バカなんですよ
犬の性格にもよりますけどね


だからこそ癒されたり
心の支えになったりもする存在でもある


この映画では
そんな犬のバカさがとても伝わってきます
ファンタジーな作品だけどリアルにも感じる

その犬のバカさが笑いを生んでるし感動も生んでる

そして、うちの犬もこんなだな
とか共感できたりもします


こういうところが
犬好きにとってはたまらないんでしょうね

こんなベイリーを見ているだけで
微笑ましくて癒されるしなんか泣けるんですよ


本作は犬好きの心地よいツボを押さえている作品だと思いました

 

ただ、犬最高!!
って言って絶賛してるだけでもあれなので
冷静になって振り返ることで感じたことも
言っていこうと思います


本作は1つの映画として観たら
ストーリーは大したことないと思います

犬が何回も生まれ変わる
というのは前作でやってるし
人間ドラマは平坦で
たいして大きな動きはありません

特に生まれ変わり設定は
前作より全然上手く扱えていなかった
生まれ変わることによる面白い展開があまりなかった

前作は何回も生まれ変わりながらはじめの飼い主イーサンのもとへ戻る
というのが面白さを生み出していましたが

今回は生まれ変わっても基本CJのもとにいつづけるんです
だから、生まれ変わりによる面白みが極端に少なくなってしまう


でも、犬と共に生きる人間の人生が面白くなれば
そこは大した問題ではなかったかもしれないです

ただ、人間ドラマは正直あまり面白くない
よくある感動話みたいな内容で
そんなに深さも無くちょっと薄っぺらい

記号的に感動を描いている感じで
そんなに感情移入はできないんですよね

 

そして、1番引っかかるのは
主人公中心の良い話になってしまっていること

この映画ってよく考えてみると

ベイリー、CJ、イーサンたちを中心に地球が回っている
みたいな物語なんですよ

この人たちが幸せならば他はどうだっていい
って内容なんです


だから、その他の登場人物たちの扱いがとても雑
そこには好感が持てないです


例えばCJの母親
最終的には良い感じで終わってますけども
根本的なものは解決してないと思う

何かわからんけど
母親がいつの間にか改心しています

CJと母親はストーリー上も
ちゃんと向き合わなければならないのにいつの間にかふわっと仲直りしてしまう


他のキャラも
CJのはじめの彼氏やトレントの彼女
この人たちもかなり雑な扱いでしたね

ただの悪者としてしか描かれない

後のCJの幸せを彩るための記号的な不幸の象徴みたいなキャラでした


CJが家出してからできた彼氏の扱いなんか本当に酷いですよ
この人なにも悪いことしてませんからね
むしろ、CJを養ってくれてたんですよ
すごく良い人

でも、そんな人ですら印象が悪くなる描き方をしている


最終的には
CJとトレントが素晴らしい人間で最高のカップル
みたいな着地の仕方がちょっと気持ち悪い


それと、ベイリーがCJのもとから離れている時に
飼ってくれていた人の扱いも酷いですよ

愛情も注いでくれていただろうに
でも、ベイリーはCJのことばかりで…

ここは飼い主目線で観たらかなり悲しいですよね


全体的にベイリーの気まぐれにストーリーが引っ張られ過ぎなんですよ

だから、ベイリーたち中心の気持ち悪い幸せ物語になってしまってる

ベイリーの気まぐれと人間ドラマは
もう少し分けて描いた方が良かったと思います

 

あと、この作品自体が
人間目線でのペットの理想像なんですよね

飼い主の願望が溢れ出てしまってるようにも思う

ペットは飼い主が幸せなら自分も幸せ
みたいになってる

確かにそういう一面はありますよ
それほど犬は人間に従順です


ただ、それを人間目線で言ってるような作品であまり良い印象ではないですよね

そう思うと
今回のベイリーの生まれ変わりの旅は
イーサンによってかけられた呪いのようでもある

この作品自体が人間の理想の押し付けみたいになってしまっていたのは
良くなかったかもしれません

 

冷静になって考えると
気になる点もたくさんあった作品
でも、犬好きの心地良いところは押さえているので
犬さえ好きならば感動できると思います

そう思えば
やってることはアベンジャーズとかと同じかもしれない

 


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映画「アス」感想 なかなか怖いし面白い 風呂敷を広げ過ぎな気はしたけど…

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どうもきいつです


サスペンス映画「アス」観ました

自分たちと全く見た目が同じ存在が現れ
それらと対峙する一家の恐怖を描いた
サスペンススリラー作品

数々のホラーやスリラー作品をヒットさせてきた
ジェイソン・ブラムが製作
「ゲット・アウト」がアカデミー賞の脚本賞受賞し
大きく話題を集めたジョーダン・ピールが
監督を務めています

 

あらすじ
アデレートは夫と2人の子供たちとともに
幼い頃に住んでいたサンタクルーズの家を訪れる
彼女たちはビーチへ出かけるが
不可解な出来事に見舞われ
過去のトラウマがフラッシュバックする
その夜、自分たちと瓜二つの
謎の4人組が家の前に現れた

 

感想
怖かったり笑えたり
とても楽しめる作品です
社会問題なども描いていて深さもある
ただ、風呂敷を広げ過ぎて
最終的に辻褄合わせが上手くいってないような
印象で終わってしまいました

 

監督の前作「ゲット・アウト」が面白くて
この映画はとても楽しみにしていた作品です

そして、期待どおり面白い映画でした
エンターテイメントとして
とても楽しめる内容だったと思います


本作は前半がホラーっぽい雰囲気で
後半になるとぶっ飛んだ展開になっていく
という作りの作品です


前半のホラー部分はちゃんとホラーでしたね

すごく不気味な雰囲気ですし
ビックリ演出も多くてハラハラドキドキする

そして、謎が謎を呼ぶような展開で
画面に引き込まれていきます


序盤のビーチでの
不穏な空気感もとても良かったと思いますよ
これから何かが起きそうな
不気味な空気感がすごく伝わてきます

そこで気持ちを煽って

家の前に謎の4人が現れてからは
怒濤のホラー展開で
もう最高でした

主人公のアデレードたちを狙う4人の
風貌、表情などが気味が悪くて
恐怖感をすごく感じる

アデレードにそっくりのレッドの喋り方も
めっちゃ怖かったですし
他の奴らも急に奇声を発したりするので
ビビらされました


敵は容赦なく襲ってくるんですが
それにどうにか対抗している家族たちの姿も
なかなか面白さがあります

みんなギリギリのところで上手く立ち振る舞うので
スリルがあってハラハラさせられます

お父さんはめっちゃやられてましたけどね
最終的にケガだらけで歩くのもやっと
この情けなさがちょっと面白かったりする

 

そんな感じで前半はがっつりホラーな
雰囲気の作品ですが

白人一家が襲われるあたりから
雰囲気が変わってきます

なんかコミカルになります

ユーモアがありますし
笑えるとは思いますが
今までのこともあるし笑えない人もいそう

まだ殺伐とした空気も残ってますしね


このあたりからは
ホラー色が薄まって
ちょっとSFっぽくなっていくんですよね

そして、正直言うと
このあたりからちょっと退屈でした

ここからは答え合わせみたいな感じで
今までの真相が徐々に明かされていきます

伏線の回収や謎の解明などがメインで
なるほど
とは思わせられるけど
あまり面白くはないですよね

しかも、終盤に向けて進んでいるのに
さらに風呂敷が広がっていって
これ収まるのか?
とちょっと不安になってきます

結果的には
強引ですけど収まっていたとは思います


後半は答え合わせメインの話になっていて
冗長に感じてしまいましたね


それでも、全体の流れで言ったら
後半は謎が解けていくというだけでも
見入ってしまいますし
そこまで悪くなかったようにも思えます

それに、ここでは
格差社会への問題提起みたいな
メッセージ性が込められていていましたしね

 

そして、この作品のメッセージ性は
なかなか良かったですよね

普段、目をつむってしまっているような事を
直視させるような内容です


「ゲット・アウト」では人種差別を
テーマにしていましたが
今回は格差社会、貧富の差を取り上げています

直接的に描いてはいませんけど
地上の人間は裕福な人間
地下の人間は貧しい人間と
単純にあてはまるのでわかりやすいです

そこで描かれるのは
生きる環境によって生まれる弊害と
それを無視することによって生まれる弊害


これはアメリカだけの問題でなく
日本にも当てはまりますよね

やっぱり貧しければ
学力が落ちるでしょうし
将来的に貧しいままの可能性は高い
犯罪率も上がるでしょう

で、問題はそこじゃなくて
そんな部分に蓋をして
見ないようにすることなんですよ

そんな事じゃ
格差の問題は解決することも無く
ますます格差が広がっていくだけ

それを無視し続けていたら
最終的にはこうなっちゃうよ
というのをこの映画では描いています


それでも裕福な人は言うんですよ
でも育ちや環境は関係ない
自分の努力次第でどうにでもなるんだ
みたいなことを

それに対してもこの映画では
クローンという存在を使って描いている

全く同じ性質を持った人間であっても
生きる環境が違えば
最高にも最悪にもなりえる

そして、最悪な環境で生まれても
良い環境で育てば真っ当に成長するし
良い環境で生まれても
最悪な環境で育てば歪んでいく

この映画は
生きる環境が人に与える影響の重要さを
描いている作品でもあると思いました

 

基本的には面白い映画だったと思います
メッセージも込められてましたし

でも、不満に思うこともあるんですよね

監督の前作「ゲット・アウト」では
小さく上手くまとまっていたんですが

本作はスケールが大きくて
ちょっとまとまってない

終わり方もちょっと強引に思ったし


矛盾と言うか
辻褄が合わないことが多いんですよ
そこがすごく気になってしまう

地上の人間と地下の人間が
シンクロしてるのかしてないのか問題
これが1番気になる

地下の人間たちは地上の自分と同じ人間と
同じ動きをしながら生活している描写があるけど

実際は地上に出てきてるし
そのときは違う動きしてます

何らかの理由でそのルールが壊れて
そんな事が起きてるのかと思いきや
弟の動きはリンクしている

その弟も都合の良い時だけ
リンクしてますしね

そもそも、なぜ動きがリンクしてるのか
地下のクローンたちは何なのか
結局、コイツらの目的は何なのか

疑問がめっちゃ多いし解消もされない

そのへんがすごくモヤモヤします


他にも
禁断の場所のような地下世界に
あまりに簡単に出入りできてしまったり

主人公の記憶やトラウマが
最終的に何だったのか疑問です

細かい部分で言ったら
まだあると思う


とにかく設定が風呂敷を広げ過ぎて
ゴチャゴチャしてしまってます
そしてあまり上手くまとめ上げれていない

ラストは全てを説明しない終わり方なんですけど
設定の詰めが甘いから考察も捗りませんし

いろいろと強引に推し進めていた
映画だったと思います

 

でも、細かいことを気にしなければ
楽しめる作品だったりするので
そのへんをスルーしたら面白い映画ですよ

ストーリー自体は面白いし
軽い気持ちで観るのがいいかも
ちょっとバカなエンターテイメントとして
観れば楽しめるんじゃないでしょうかね

 


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映画「曇天に笑う」感想 全ての描写が薄すぎる 何を見せたいのかがわからない

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どうもきいつです


アクション映画「曇天に笑う」観ました

月刊コミックアヴァルスに連載されていた
唐々煙による人気漫画「曇天に笑う」の
実写映画化作品
明治維新後の滋賀県を舞台に
災いをもたらす大蛇をめぐって
3人の兄弟が戦いを繰り広げる2018年のアクション映画

監督は「踊る大捜査線」シリーズや「幕が上がる」
などの本広克行が務めています

 

www.nanimokamogakokkei.com

 

あらすじ
300年に一度よみがえり災いをもたらすという
大蛇を封じるために
曇神社を継ぐ曇家の天火、空丸、宙太郎の三兄弟が
立ち上がる
政府直属の部隊ヤマイヌや忍者集団の風魔一族も
動き出し、三つ巴の戦いが始まる

 

感想
全部が中途半端な映画
描写不足で感情移入ができない
そもそも、この映画は何を見せたいのか?

 

原作のことは全然知りませんでしたが
福士蒼汰が好きなので観てみました

本広監督ということで
期待半分、不安半分って感じで観始めたんですが
本作はダメな方でしたね

本広監督の作品では
「幕が上がる」「亜人」なんかは
好きな方の作品ですけど
本作はそれらの作品には全然およんでいないと思う


僕は原作を知らないので比較することは
できないんですが
たぶん原作のほうが面白いんでしょうね
それはこの映画を観ていてなんとなく感じました


でも、導入部分はすごく期待させられるんです

町で祭りみたいなことをやっていて
太鼓の音をバックに
悪人っぽい奴が追いかけられ
そこからの主人公登場まではすごく良かった

映像のカラフル感だったり
祭りのゴチャゴチャ感だったりが
明治維新後のカオスな雰囲気も醸し出してましたし
そんな世界観に登場人物のコスプレみたいな衣装も
馴染んでいて悪目立ちしていなかったです


主人公登場時も
短いセリフですけども

立ち振る舞いや表情から
どんなタイプの人物なのか
どんな性格なのか
なんとなくキャラクターの雰囲気が伝わってきて
主人公に興味が湧くんですよ

このときの福士蒼汰のたたずまいもすごく良いです
表情も優しい雰囲気がめっちゃ出てますし
ビジュアル面がとても様になってました
身長も高いですしね

 

まあ、良かったのは最初だけで
そこから先はかなり微妙

全体的にとても薄い印象でした

いろんなものを描こうとしているのは
わかるんですけども
結果的に全部の要素が中途半端で
何を見せたい作品なのかがわからない


ドラマ、アクション、世界観
そのどれもがあまり出来が良く無いように
思ってしまいました


ドラマ部分で言うと
たぶん原作の話を詰め込んだのか
ストーリーの中心がわかりづらい

メインは天火と兄弟たちの
兄弟愛の話なんでしょうけど

ヤマイヌや風魔一族も
かなり物語上で出しゃばってきます

それに、それぞれの過去なんかも
ちらつかせてきますし
キャラ同士の関係性なども見せてくる

その割にはそのへんを深く掘り下げないので
消化不良で終わっていきます

いろんな人間ドラマを描こうとしていて
それぞれのエピソード的なものがありますが
短い時間でそれをやるから
全部が中途半端で終わってる


だから、基本的にキャラ描写も薄くなってます

ストーリーはシンプルでわかりやすく
流れるように進んでいくんですけど

登場人物が多すぎるんですよね

多いだけならいいですが
複数のキャラに
同じだけの見せ場を作ろうとしていて
結局は一人一人のキャラクターが
薄まってしまっています


主人公の天火でさえすごく印象が薄いです

この人は何がしたいのか謎ですよね
兄弟に対してもそうですし
ヤマイヌの関係性でもそう思います

大蛇の封印のことも
いまいちはっきりとどういう気持ちなのかが
よくわかりません

白子への信頼の気持ちも
なぜそこまで強い気持ちなのか
説得力に欠けている

天火の表面的な設定の説明はされますけど
彼の内面は全然描かれていないように思います

優しくて強い人
というのは第一印象で伝わってきて
面白そうなキャラクターだと興味を惹かれますが

そこから先は薄っぺらい描写が続くだけで
全然魅力を感じれないキャラクターに
なっていました


他の登場人物も同じで
みんな設定の説明だけで
その内面であったり人物像は描かれない


だから、どの登場人物にも
感情移入できないままで映画が終わってしまう

終盤のとある人物の裏切りや
ピンチに駆けつけるヤマイヌに助けられる展開も
感情移入していないから全然盛り上がりません

普通ならすごく盛りあがりそうな
展開なんですけどね…

 

そして、今回はアクションも微妙

「亜人」のときの本広監督は
どこへ行ったんでしょう?

「亜人」のアクションは
かなりはっちゃけていてとても楽しかったんです
ストーリーよりアクション重視の作品でした

でも、本作は
そもそもアクションが少なかったと思う
だらだらと会話シーンが続いたりします

まあ、ドラマ部分が面白いのであれば
全然良いですけど
さっきも言った通りドラマも微妙

指摘してきた細かい部分を置いといたとして
大筋のストーリーもシンプル過ぎで
そんなに面白いようには思えません

だったら、「亜人」のときみたいに
アクション重視でストーリーを捨てた方が
面白くできたんじゃないでしょうかね


さらに、アクションの内容もいまいちです

中盤の町中でのアクションシーンは
なかなか良かったと思うんですよ
一人称視点のチャンバラはなかなか面白い

でも、終盤のアクションは
ちょっと酷いと思いました

ただ、ダラダラと戦ってるだけのシーンが
結構な長尺で続きます
ここはマジで眠かったです

ひたすら単調な戦闘が続くだけで
メリハリも無いし面白みも無い


ここで思ったのが
天火の戦闘スタイルが地味すぎる

天火はかたくなに扇子で戦うスタイルなんですが
全然画面映えしないですね

すごく強いキャラのはずなのに
全く強く見えないですよ

原作がそういう設定だから
仕方がないことなのかもしれませんが
あまりにも地味でカッコよく見えません

しかも、すごく敵に押されてましたし

じゃあ、刀使って戦えよ
って思いますよね

弟の命や平和のために絶対に
勝たなきゃいけないんでしょうが
扇子に何のこだわりがあるのか…

せめて、扇子で戦う理由の説明さえあれば
まだ納得できるでしょうけども

 

他にもツッコミどころや雑なところが
多々ある作品でした

そもそも大蛇って何だったんかよくわからない

白子が最後消えていったけど
あのシーンの全てが意味不明

死んだと思っていたやつが
普通に生きて出てきたときは
死んでなかったんかい!!
ってツッコミたくなると思いますよ

 

とにかく、全てが中途半端で
お世辞にも面白いとは言えない出来です
良かった部分もほぼ無かったし
残念な映画でした

イケメンがたくさん出ているので
目の保養にはなるかもしれんせんね

 


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映画「ジェーン・ドウの解剖」感想 前半は面白いミステリー 後半は普通のホラー

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どうもきいつです


ホラー映画「ジェーン・ドウの解剖」観ました

身元不明の女性の検死を行うことになった
検視官の親子が解剖を進めるうちに
怪奇現象に襲われる2016年のホラー映画
トロント国際映画祭などの世界各地の映画祭で
高い評価を得ている作品です

監督は「トロール・ハンター」などの
アンドレ・ウーヴレダルが務めています

 

あらすじ
とある一家が惨殺された家の地下で
身元不明の女性の変死体が見つかる
検死をすることになったトミーと
息子のオースティンは死因を調べるため
解剖を進めると驚くべき事実が明らかとなっていく
そして、親子に恐怖が襲い掛かる

 

感想
解剖することで真実に迫っていく
ミステリー的なストーリーは
とても面白くて引き込まれていく
後半はちょっと普通のホラーになってしまっていて
少し拍子抜けしました

 

なかなか評判がいいみたいでしたし
個人的にも好きそうな感じの作品だったので
観てみました


全体的に不気味な雰囲気を醸し出していて
とても好きなタイプの作風でした

はじめは科学的なミステリー映画だと
思っていたんですが
後半は王道のホラーって展開でしたね

 

特に良かったと思ったのは

不可解な死体を調べていき
謎の真相に迫っていくという展開が
すごく興味を惹かれるし
物語に引き込まれていきます


本作の入り口は
ホラーというよりもミステリーです

一体この死体の正体は何なのか?
という謎を原動力に物語が進んでいく


まず、死体の存在がとても不気味です

ホラーでの死体と言えば
腐っていたり、破損していたりと
グロさや気持ち悪さを前面に押し出しているものが
多いと思いますが

本作の場合は
死体がものすごく美しい
まるで死体と思えないほど綺麗な状態
なんですよね

それが逆にすごく不気味なんです

もしかしたら生きているんじゃないのか?
って気持ちにさえなってくる

そんな生きてそうな死体を解剖していくので
ちょっとヒヤヒヤする気持ちも生まれます

生きてそうなほど美しい死体というのは
後の展開にも機能してきますしね


死体の解剖が始まってからは
いくら死体と言えど
体を傷つけたり内臓を取り出したりと
なかなかグロテスクな場面が続くので
そんなのが苦手な人だったら
見るのがちょっと苦痛かもしれません

しかし、この解剖のシーンが
なかなか面白いんですよ

死体の状態を調べ、解剖していく過程で
死体としてはありえない事実が発覚していき
不可解なことがいくつもみつかります

外傷が無いのに骨折していたり
内臓は傷つき肺は焼けている

死体なのに血が流れ出たりするし
謎の布が体内から発見されます

このあたりがとても不気味な上に
好奇心も煽ってくるんですよ

この死体には一体何が起きたのか?
と疑問が生まれて
真実を知りたいという気持ちにさせられます

検死を進めて行く中で
徐々に真相が明かされていく様子は
とてもワクワクしました

解剖の場面にリアル感があって説得力もあり
面白く観ることができましたね

 

そして、死体の真相が少し見えてきて
この死体ヤバいぞ!!
ってなってからは王道ホラーな展開が始まります

お決まりパターンの密室ホラーって感じです

閉じ込められた人たちが
何かから逃げるために四苦八苦する
みたいな展開

ここでのホラー演出はかなりベタで
お約束みたいなことがたくさん起きます

隙間を覗くと向こう側にオバケがいたり
オバケと思っていたら実は人間だったりと

とにかくベタな展開のオンパレード

だから、それなりに怖いし楽しめました
ここはお化け屋敷的な感覚の
面白さはあると思います


ただ、あまりにもお決まりパターンだけに
なってしまっていて
先の展開は容易に予測できてしまいます

たぶんこうなるだろうな
ってことが予測通りに起きていく


前半の謎解きミステリー要素で作り上げた
絶妙な雰囲気を
後半のベタなホラー展開が
ぶち壊してしまってるような気がする

前半は
この先どうなるんだろう?
という気持ちを上手く作り上げてきたのに
後半は先読みできる予定調和な展開ばかりで
前半と後半が全く真逆になってしまってるんですよ

物語の結末も
普通のホラーっぽく少し曖昧で
その後も呪いは続いていくんだろうな
って終わり方だったりするし

ミステリー的な面白さは前半だけで
それ以降はそんなのが無かったかのように進み
ただオカルトな超常的なものだけで
話が終わっていく

前半の解剖のシーンで
せっかく謎に対する好奇心で盛り上がってきたのに
ホラー展開が始まるとそんな謎は放ったらかし
最後にこの死体は魔女的な不思議な存在なんですよ
って雑に片付けられて
ちょっと拍子抜け


後半になってオカルト路線に方向転換するのは
全然良いんですけど
それはそれでミステリー要素も残してほしかった

終盤は意味不明な展開が多かったですし
物語の着地もちょっと強引
超常的な現象で全て丸くお収めようとしていて
バカっぽくも見えてしまう

序盤は知的な話の進め方をしていただけに
悪い意味でのギャップが生まれてしまっていました


謎を全て解き明かす必要はないと思いますが
最後まで謎を引っ張るような物語でも
よかったよな気がします

本作では中盤あたりで
この死体が悪魔的な何か
ということが発覚してしまうんですが

それ自体も終盤まで伏せていても
よかったんじゃないですかね

あくまで物語の主軸はミステリーで
所々にホラーを散りばめる
って作りでも面白くなったように思います


それにしても
前半があんなにも知的で面白いミステリー
だったのに
なぜ後半はただのホラーで終わってしまったのか

すごくもったいないですよね


死体の鼻からハエが出てくるのとか
悪魔的、魔女的なものを示唆する伏線としても
面白いし
皮膚の裏側に魔方陣的なのが刻まれてる表現
とかすごく良かったんですけど

前半部分だけだったら
良いところがたくさんあるんですよね

 

個人的には
前半部分はめっちゃ好き
後半部分は普通
総合的にはちょっと好きな映画
くらいの感じだったと思います

前半が良かっただけに
すごく惜しい作品でしたね

 


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映画「台風家族」感想 クズ家族たちがすごく笑える

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どうもきいつです


コメディー映画「台風家族」観ました

両親の財産分与を行うために
久しぶりに集まった兄弟たちが
巻き起こす騒動を描いたコメディー作品

「箱入り息子の恋」などの市井昌秀が
構想に12年をかけた自身のオリジナル脚本を
映画化し監督を務めています
主演は草なぎ剛です


あらすじ
強盗事件を起こし2000万円を奪った鈴木一鉄と
妻の光子が失踪してから10年
いまだに行方知れずの両親の葬儀をして
財産分与を行うため
妻子を連れた長男の小鉄とその兄弟たちが
実家に集まる
そこで遺産をめぐった大騒動が巻き起こる

 

感想
クズな草なぎ剛がとても面白い
草なぎ剛の新しい一面が見れました
ストーリーもなかなか凝った作りで
楽しめます

 

新井浩文の件があって公開が延期されていた本作
やっと無事公開され
観に行ってきました


予告映像なんかの印象では
ドタバタコメディーって感じでしたが
思った通りの内容でしたね

結構ブラックな笑いも多かったり
現実離れしたような内容でしたが
とても楽しめる作品でした

笑いあり感動ありの
面白い映画だったと思います

 

本作は基本的に会話がメインの作風です

主人公の小鉄の実家を舞台に
兄弟たちがひたすらケンカをする
なかなかめちゃくちゃな内容

映像に変わり映えが無く動きも少ないんですが
それでも面白く見せてくれます

個性豊かな面々の
めちゃくちゃなやり取りがとても笑える
自己中心的な言動だったり
意地の張り合いだったり
暴走しだしたり

とにかく、この家族が面白すぎです


その中でも特に主人公の小鉄が
良いキャラしてます

人としても父親としても
最低の人間
金のためならなんだってするような男

はじめは大人を装っていて
まともな雰囲気なんですけど
本性を現してからは
怒濤のクズさ

実はケガをしてなかったのには
本当に笑った

思い通りにいかなければ
タンスの中をぶちまけて暴れ出すし
YouTubeで世界に配信されてたことを知ってからの
開き直りなんて素晴らしすぎる

一貫してクズを貫き通す姿は
逆にカッコいいですよ


それに、小鉄を演じる草なぎ剛が
ハマり役だったと思う

草なぎ剛の一見優しそうだけど
実は何考えているのかわかならい雰囲気が
小鉄のキャラクターにとてもあっていました

草なぎ剛がクズ役をやるという
ギャップの面白さはもちろんあるんですが

終盤の実はこうだった
という展開が
草なぎ剛だからこその
説得力が生まれてると思います

彼の根が優しそうな雰囲気と
逆に、ちょっとヤバい奴なんじゃない?って雰囲気が

小鉄のクズキャラの伏線を
とてもうまく機能させていたんじゃないですかね

 

あと、MEGUMIも素晴らしかったですね
そこまでする?ってことやってましたし

なんかリアルなエロさがあふれ出ていた

AVみたいなファンタジーなエロさじゃなくて
現実的なエロさです
妙に生々しいですし

それに、あの時の効果音は笑えましたね


他にも
包丁を振り回す中村倫也
久々に見た新井浩文
小鉄の娘役の甲田まひるなど

俳優陣がみんな素晴らしかったです

 

そんな、ドタバタで
バカバカしいコメディーである一方

家族の絆を取り戻す物語として
グッとくる作品でもあります


昔は仲よく過ごしていた家族が
いつの間にかバラバラになり
疎遠になってしまう

久々に会ったと思えば
金のことでケンカばかり

そんなバラバラになった家族が
お互いに向き合って
再びあの頃の家族に戻っていく物語


そのストーリーの描き方も
作り込まれていましたし
なかなか面白かったです

前半のコメディー部分にも
いろいろ伏線を張っていたりしましたし

それを回収しつつ後半は良い話へ
方向転換していくんですが
それがとても自然で
話の流し方が上手いと思いました


一番の伏線でもある
なぜ小鉄はそんなにもクズなのか?
という部分の見せ方もすごく良いです

小鉄と一鉄の父親だからこそクズになる覚悟
というのが最後には繋がって
それが家族があの頃に戻っていくきっかけにもなる


そして、父親の一鉄の真相を知ってからの
怒濤の展開が素晴らしいと思う

ここからは
すごくチープだったり
ツッコミどころがあったりと
結構めちゃくちゃな展開なんですけど

そもそも現実離れした物語でもあるし
謎の勢いもあって
そんなのはあまり気にならない

むしろ、すごく良いシーンになってます

川を流れる白骨を嵐の中追いかけて
最後は家族みんなで海へたどり着く
という、なんじゃそりゃって展開ですけど

すごく感動するんですよ

最後の
小鉄の娘のユズキが笑顔で発する「最低」の言葉で
家族の絆が完全に取り戻せたんだと思わされます

止まっていた家族に時間が
この瞬間に動き出したよう思えて
このラストはすごく良い終わり方でしたね

 

ここまで、すごく絶賛しましたけど
少し微妙だと思う部分もありました

1番感じたのは
全体的にチープ過ぎるかなと…

カメラワーク、演出など
ちょっと安っぽく感じます

おそらく、そんなにお金がかけられていない
作品でもあると思うので
仕方ない部分もあると思います


でも、カメラワークなんかは
もう少し良い見せ方が無かったのかな?
とか思っちゃいますし


YouTubeのコメントの見せ方とかも
なんかダサいというか
テレビドラマなんかでやりそうな演出

それと、YouTubeで配信されているって設定が
あまり上手く生きてなかったようにも思う

ただ外側の人たちを
家族のもとへ呼び出す役目しかないんですよ

YouTubeを使って
他にも面白いことができそうな気もするんですが
それがあまり機能していなくて
ちょっともったいなく思いました

 

そして、後半の良い話路線になってからは
少し湿っぽすぎると思う
所々にコミカルなシーンはありますが
やっぱり少ない

作り手の感動させようという気持ちを
もう少し抑えても
よかったなんじゃないかと思います

感動させようとし過ぎて
演出なんかもチープに見えてしまいますし
ここで描かれる家族愛が
逆に安っぽくて薄っぺらに感じてしまいました

ストーリーはしっかりしてますし
ここで多少おふざけが過ぎたとしても
芯の部分は伝わると思いますよ


こんなチープさが無ければ
この映画はもっと面白くなったような気がします
だからこそちょっともったいないですよね

 

多少安っぽさが目立つ作品ではありましたが
それなりに笑えて面白い作品でした
クズな草なぎ剛はとても面白かったし
家族の物語には感動もできると思います

 


台風家族