何もかもが滑稽

何もかもが滑稽

映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「あの頃。」感想 オタクなら共感できる青春ドラマ

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どうもきいつです


ドラマ映画「あの頃。」観ました

劍樹人の自伝的コミックエッセイ「あの頃。 男子かしまし物語」を実写映画化した作品
さえない日々を過ごす青年が
アイドルや同じオタクの仲間たちに出会い
青春を謳歌する姿が描かれます

監督は「愛がなんだ」の今泉力哉
出演するのは松坂桃李、仲野太賀などです

 

あらすじ
恋人もお金もないどん底の生活を送る劍は
ある日、松浦亜弥のミュージックビデオを見て
ハロー!プロジェクトのアイドルに夢中になる
イベントで知り合ったコズミンなど個性的なオタク仲間たちとともに
くだらない青春の日々を送っていく

 

感想
起承転結は特になく淡々とした日常が描かれます
でも、その中で描かれる青春の日々には
とても懐かしさを感じさせられる
何かに熱中した馬鹿な男子なら共感できる映画
男子中学生みたいなノリの映画なので女子ウケは悪いかも

 

アイドルオタクがテーマ
松坂桃李が主演
今泉力哉が監督
ということでとても期待していた作品

実際に観てみると
予告で見た印象とはちょっと違いました

予告ではアイドルオタクという部分がメインに思わされたんですけど
そこは舞台設定にすぎず
メインはオタク仲間との青春物語

しかも、劇的なものはほぼなくて
淡々と彼らの日常を見せられているような映画です

予告と実際の内容とのギャップで
この映画に批判的になってる人もいると思います

もっとハロプロの楽曲が流れると思ってたとか
オタクとアイドルの関係性が深く描かれると思ってたとか
そんな人も多いと思う


僕も予告とのギャップは感じましたけど
これはこれでとても共感させられる面白い映画だと思えた

アイドルオタクだけが感じる共感ではなくて
多くの人が普遍的に共感できる青春映画で
面白く観ることができました


まず、ストーリーですけども
これはちょっと掴み所がないかもしれません

わかりやすく起承転結があるわけではなく
なにかが始まってどこか終わりに向かっていくような物語ではありません

アイドルにハマった青年が
同じアイドルオタクの仲間たちとともに
なんでもないしょうもない日常を過ごしていく

ただそれだけの映画

その中で
アホでくだらない仲間内のノリをコミカルに見せてくれたり
この人たちだからこその変な人間関係を見せてくれたりします

そして、時間とともに薄れていく青春
でも、確実にキラキラしていて
時間が経っても消えることがなく
現在進行形で輝いてもいる青春

青春の儚さと揺るぎなさを同時に感じることができる
みんなが普遍的に持っている青春を描いた作品でもあると思います

僕はそんな青春の描写に懐かしさや共感を感じ
何とも言えない気持ちにさせられました

この映画と全く同じ経験はしてないけど
自分に重なるところもすごくある

同じ何かを共有して馬鹿みたいに騒いでいた時期もあります

同じものを共有していてわかり合っていても
みんな仲良しってわけでもなく
嫌な奴はいるし、そんなに知らない人もいる
面倒くさい人間関係もあったりするけど
それでも同じものを愛する仲間なのは間違いなかったり

この映画を観ると
そんな過去を思い出さされました

今は全く会わなくなったあいつ今どうしてるのかなー?
みたいなことを考えてしまいます

 

本作はそんな青春をリアルに描けていたと思うんですよね

登場人物の会話のやり取りなんかも
妙にリアルだったりします

全体的にコメディー要素の強い作品ではありますが
笑わせる会話がとても自然なんです

ここで笑わしてやろう
ここ笑うとこですよ
みたいなわざとらしい部分はあまりなく

登場人物たちの何気ない会話がなんか面白いって感じなんですよね

自分達もなんかやってそうな普通の会話
でも、実はちゃんと笑わそうとしてたりもする
これが絶妙なバランスだったと思う

これは、俳優たち自然な演技の賜物なのかなと思います
それに、なんか楽しんで演技してるんだろうな
ってのも感じる
そういうのもあって
会話のシーンがとても笑えるし楽しい場面になってたんじゃないでしょうか


その中でもロッチのコカドがめっちゃいい役割をしていたと思います

もともとロッチのコントも自然な雰囲気だし
この映画でもそれが生きていると思うんですよ

コカドのツッコミがちょうどいいんですよね
お笑い芸人になりすぎてない
ちゃんとツッコミは入れてるんですけど
普通の会話の延長線上になっていて嘘っぽくないんです

彼がいなければこの映画の笑いの部分はもっと薄くなってたかもしれない


あと、仲野太賀が演じるコズミン
これもなんかいそうなリアルさがあってよかった

コズミンは本作のもう一人の主人公でもあると思いますが
あまりの存在感に主役の松坂桃李を食ってしまう勢いでしたね

彼は本当にクズすぎて最低の人間
コズミンが嫌いで受け付けないって人もいるだろうけど
だからこそ輝いているキャラでもありました

そして、こんな嫌な人間性が妙にリアルで
自分の周りにもいそうな気がする

それに、こんなクズでも愛されている
ってのもなんかわかる

てか、実はコズミン以外もどうしようもない人間たちで
だからこそみんな引き合ってると思うんですよ

そんな人間の集まりだから
コズミンのクズな言動にも笑っていれる
それがキラキラと輝く青春だったりもすると思うんです

このコズミンの存在が
本作の青春というテーマをより深くしていたような気がしました

 

あと、本作にアイドルオタクの生きざま
みたいなものを求めて観た人は
ちょっと拍子抜けかもしれません

この映画ではアイドルオタクという部分はそんなに深掘りされず
あくまでもメインはアイドルオタクたちの青春

オタクたちがどれだけアイドルに命を懸けてるかや
オタクとアイドルの関係性
などは描写されません

そこに物足りなさを感じる人は多いと思う
主人公の劍が松浦亜弥にハマっていく過程も薄いと思いますし

ただ、僕はアイドルにめっちゃハマってた時期がありましたし
その目線からこの映画を見ると

劍が松浦亜弥のMVに釘付けになり涙を流すシーン
これだけで全てがわかる
これだけで全てが物語られてると思うんです

このシーンだけで
アイドルの魅力
アイドルの存在意義
なぜ人はアイドルにハマるのか

全部が込められていて
これだけで理解できる

このシーンさえあれば
この先の劍の行動の原動力として納得できるんです

このシーンだけでアイドルオタクを描ききっていたんじゃないかとさえ思いました

 

どうでもいい淡々とした日常が描かれるだけの映画ですが
そこにはリアルさがあって
自分もその場にいたかのように感じれました

多くの人にこんな馬鹿らしくしょうもない青春はあっただろうし
それは大切な思い出だと思います

何とも言えないノスタルジーを味わえて
笑える楽しい映画でした

 


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映画「素晴らしき世界」感想 残酷な世界の隙間にある微かな優しさを感じれた

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どうもきいつです


ドラマ映画「素晴らしき世界」観ました

佐木隆三の小説「身分帳」を原案に
舞台を原作の35年後である現代に置き換え
13年の刑期を終えた元殺人犯の出所後の日々が描かれます

「ゆれる」「永い言い訳」などの西川美和が監督と脚本を手掛け
役所広司が主演を務めています

 

あらすじ
殺人を犯し13年の刑期を終えた三上は
東京で真っ当に生きようと
身元引受人の庄司の助けを借りながら自立を目指していたが
目まぐるしく変化する社会にすっかりと取り残されてしまっていた
ある日、生き別れの母親を探す三上のもとに
テレビディレクターの津乃田が現れる

 

感想
現代社会の生きづらさがひしひしと伝わってくる
でも、そんな中にも人間の優しさを感じれた
生きることや幸せとは何かを考えさせられる
“素晴らしき世界”とは何かを問われたような気がしました

 

予告を見て気になっていたので
観に行ってきました

本作のテーマは最近観た「ヤクザと家族」にとても似ていました

どちらも
裏社会で生きてきた男が刑務所に収監され
数年後に出所し社会の変化に翻弄される
といった内容

両方とも不器用な男の生きざまを描いたような作品なんですが

大きく違うのは
裏の世界を中心に描いているのか
表の世界を中心に描いているのか
という部分だと思います

「ヤクザと家族」はヤクザの目線
ヤクザの世界からみた時代の変化
というものを描いた作品で
かなりフィクション感の強い作品だと思います

なので、一般人である自分たちは共感しづらい部分も多少ありました


しかし、本作は
かつて裏社会で生き殺人を犯した男が
現代の一般社会でどう生きていくのかが描かれています

社会の冷たさ、残酷さ、理不尽さ
そんな生きづらさがこの映画からは痛いほど感じさせられます

主人公の三上はかつて殺人を犯した殺人犯ではありますが
この映画で描かれていることは
普通に生きてきた自分達でも共感できる部分は大いにあると思います

むしろ、現代進行形でこの生きづらさを感じている人はたくさんいるはず

その点ではこの映画はとてもリアルで
現実に三上という人物がいるように思えるし
自分もこの世界と繋がっているようにも思える

だからこそ
この映画を観るといろいろと考えさせられました

 

物語の内容は
出所した三上が
どのようにして社会に馴染んでいくのか
というものを淡々と描いていて

正直、あまり盛り上がりは無いですし
劇的な出来事が起こる物語ではありません

かなり地味な映画だと思います

「ヤクザと家族」はエンタメな面白さもありましたが
本作はあまりエンタメ要素はありません

同じようなテーマでも作風は全然違っていました


そんな地味な映画ではあるものの
主人公の三上という男はとても魅力的で
彼の行く末はどうなるのかと
最後まで引き付けられる

基本的に三上の日常をひたすら描いているだけの作品で
あまり面白い映画ではないと思うんですが
何故かとても面白く見せられてしまいます

それはなぜかと考えてみると

やっぱり役所広司の力が大きいと思います

三上というキャラクターが役所広司の演技で
この世界のどこかに存在する人物のように感じさせられます

不器用で粗暴で根は優しい三上が
嘘っぽくないリアルな人物として表現されています

そもそも実在の人物をモデルにしたキャラクターではありますが
とは言え、ここまで魅力的に感じれるのは
役所広司だからこそだと思う

 

それに、役所広司だけがすごいというわけでもなく

三上を魅力的に感じさせるような
脚本や映像の見せ方もありますし
監督の力も大いにあると思いました


とにかく
本作は三上という人物を
とても好きになるし感情移入してしまうし
それだけでこの映画に最後もアで引き込まれてしまいました

 

そして、本作は三上を通して見た社会の生きづらさが描かれています
一度道を踏み外してしまった人間が
如何に生きづらいかがひしひしと伝わってくる内容

そりゃ今までの自分の行いが悪かったから
つらい思いをするのは当然とも思うけど

それがすべて一人に人間の自己責任なのか?
と少し疑問にも思わされます


生まれや育ちなどの環境の問題もあって
スタート地点が最悪なら
まともに生きることすら難しい社会
それは間違いないことだと思います

最悪な環境からでもまともな人生をつかみ取る事ができる人もいるけど
そんな数少ない成功者だけを取り上げて
その他の人たちを自己責任と言って切り捨てるのは思うし


本作の三上も
生きてきた環境は全くいいものではなく
それ故に欠けているものがとても多い人間です

だからこそ社会ではとても生きづらい

三上が自分の言動のせいで社会から弾かれるのは自業自得で
それが当たり前のことでもありますが
こんな人間が生まれてしまうのも社会の仕組みのせいで
そこに理不尽さも感じます
三上の存在を通してこの世界の残酷さが伝わってくる


ただ、本作は
観ているのがつらい映画なのかと言うと
意外とそうではなくて

人間の優しさを感じれる
少しほっこりとした内容だったりするんですよ

社会全体で見れば理不尽で残酷な世界だけど
そんな世界の中にも手を差し伸べてくれる優しい人間は確実にいて

そんな部分にフォーカスを当てた
希望を感じれる作品です


三上が出会う人たちは
みんな無条件で三上を助けてくれるような存在です

何のメリットも無いのに他人にこんな優しくする人なんているわけない
と言う人もいるかもしれない

でも、現実もおっせかいで優しい人は絶対いて
そんな人に救われてたりもする

残酷な世界であっても
そこには絶対に光があって
それこそが“素晴らしき世界”なんだと思うわけです


でも、本作はただの美談で終わってるわけではなく
優しさやまともに生きることの曖昧さも感じさせられる

三上に対するみんなの優しさや
社会で上手く生き抜くために自分の気持ちを押し殺すこと
三上にとってそれは本当の幸せだったのかな
と疑問に思いました

終盤の
職場で障害者の男性がいじめられるのを目の当たりにした三上が
気持ちを殺して周りに合わせる場面

ここでは三上の成長を感じられるしホッとさせられます
でも、なんかモヤモヤしたもの感じるんですよね

本当にこれでよかったのか?
と思ってしまいました

社会で生きて行くためには社会に順応するしかない
みんなが当たり前で揺るぎのないことだと思い
それに抗うことなく生きてるけど

その先に本当の幸せはあるのかと考えさせられる

変わるべきは
自分なのか社会なのか
本当の優しさは何なのか
そこまでして生きるべきなのか

この映画を観ると
いろいろなことが頭をめぐって
それでもなかなか答えを見い出すことができませんでした

三上の生きざまを観ることで
自分の生き方についても考えさせられた気がします

 

少し地味な映画ではありましたが
三上がとても魅力的な人物だったので
最後まで全然飽きずに観ることができました

この作品を通していろいろと考えさせられ
自分にとって何か糧になるような作品だったと思います

 


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映画「樹海村」感想 思ったより悪くない 面白い映像が見れた

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どうもきいつです


ホラー映画「樹海村」観ました

「犬鳴村」に続き
実在の心霊スポットを題材にしたシリーズ第2弾
自殺の名所として知られる富士の樹海を舞台に
呪いの箱をめぐる恐怖が描かれます

監督は「犬鳴村」に引き続き「呪怨」シリーズなどの清水崇
主演の2人は山田杏奈と山口まゆが務めます

 

あらすじ
天沢鳴と妹の響は
友人の引っ越しを手伝う最中に謎の箱を発見する
それ以来、姉妹の周りで異変が起きはじめる
その箱は関わった者が死に至る呪いの箱だった
そして2人は箱の真相が富士の樹海にあることを知る

 

感想
やたら評判が悪いけど個人的にはそんなに嫌いじゃない
ホラーとしては微妙かもしれないけど
独特な雰囲気や映像に魅力を感じさせられました
「犬鳴村」よりは全然よかった

 

前作の「犬鳴村」は怖くもなく微妙な出来でしたが
それでもやっぱり本作が気になったので観てきました

映画サイトなんかでのレビューはかなり酷評されてるみたいでしたし
不安を抱えながら観てきたんですが
みんなが言うほどつまらない映画だとは思いませんでした

むしろ、面白い映像も多かったし
ストーリーや世界観もなかなか魅力的
個人的には好きなタイプの映画

確かにツッコミどころはあります
ホラー映画として観るとちょっと違う気もする
なので批判されるのもわかりますが

ここまで酷評されるほどかな?
と、ちょっと疑問にも感じました

 

まず、ストーリーなんですが
これはまあまあ面白かったと思います

方向性は「犬鳴村」と同じで
ミステリー的に物語が進み
最終的にはちょっと感動のいい話
という路線

この映画のストーリーがよくわからない
っていう感想をよく見かけましたが
僕はそんなにわかりにくいストーリーだとは思いませんでした

確かに説明不足は否めませんが
普通に理解できるレベルだと思う

逆に少し説明不足でミステリアスな内容が
この作品にとってはいいエッセンスにもなってます

この箱は一体何なのか?
樹海村とはどんな場所なのか?
呪いの正体とは?
そんな謎の部分が気持ち悪くて妙にこの世界に引き込まれるんです

全体的に不気味な魅力が漂っていて
いい空気感が生まれていたと思います

「犬鳴村」はちょっと全部説明しすぎてたと思いますし
それに比べると本作はちょうどいいバランスでした


終盤に関しては「犬鳴村」と同じく
ちょっと強引で勢い任せかな…
って感じはします

鳴が樹海村で異形の者たちに襲われるところまではいいんですけど
そこから母親が助けてくれたり
妹の響が助けに来たり
この辺りがあまり納得できなかった

さすがに無理やり話を進めようとしすぎだと思う
もう少しここは丁寧に描いてくれてもよかったです

感動路線も「犬鳴村」同様にちょっとくどすぎるかな…
感動演出がチープなんですよね

母親の感動エピソードがあってからの
すぐに妹との別れですから
個々も湿っぽくて時間をかけてる上に
それが連続しますから

独特な世界観に引き込まれてたのに
ここで現実に引き戻された感があります


とは言え
総合的には面白いストーリーだったと思います
そんなに捻りは無いですけどシンプルに楽しめました

 

そして、映像なんですけど
個人的には好きなタイプの映像で面白いなと思わされました

本作は怖いと言うよりシュールな映像が多くて
だからこそ評判が悪いのかな
とも思います

やっぱりホラーとして観るとちょっと違うよな
と思ってしまいます
正直、全然怖くはない

ホラー耐性が無い人なら怖いと思うシーンも多少あるとは思うけど
それでも恐怖を感じる演出は少なかったと思う

王道の心霊ホラーを期待すると
裏切られたような気持ちになってしまうかもしれない

でも、センスはあると思うんですよね
普通に面白いと思える映像が多かった

「犬鳴村」もシュールではあったんですけどチープで滑稽な印象が強かったんですよ
ただ、本作はチープに見えなくもないけどギリセーフって感じなんです

病院を出たときに上から人が降ってきて友達が死ぬシーンなんかは
唐突で驚かされるし映像的にもブッ飛んでいて面白い

あとは、友達が自分の指を切ろうとしてるシーンもなかなか面白いですよね
なにやってんだ俺!?からの
主人公が救急に電話してる後ろで首切り自殺

気持ち悪さとシュールさがとてもマッチしてると思う

他にも箱の描写や樹海の死体など
面白いと思わされる表現が多くて
映像表現だけでも最後まで飽きずに観れました


終盤なんかは怖さは全然なくてシュールが全開でしたけど
ここまでやればアリだなと思わされます

ゾンビみたいなオバケたちは気持ち悪さかあって
森に同化してるオバケが動き出す表現は
ホラーであまり見たことのない表現でよかったですし

人間が木になっていく表現も面白くて
でも不気味さはしっかりとあるんですよ

シュールが笑ってしまう手前で止まってたと思うんです
「犬鳴村」の場合は行きすぎて笑ってしまいましたからね

終盤はブッ飛んだ表現も相まって
とても盛り上がるシーンになっていたと思います


人が死んだり死体が映し出されたりするシーンが多いですけど
意外とグロさはあまりありませんでした

ショッキングなのが好きな人は
ちょっと物足りないかもしれません

まあ、グロいの苦手はに人はこのレベルでも無理だろうけど…

そこは大衆向けのホラーとして作ってるだろうし
グロさは控えめなんだろうと思います

けれど、控えめなわりに気持ち悪さは伝わって
直接的じゃないキモさの表現は上手いと思いました

 

不満がないと言えば嘘になりますけど
全体的には面白いと思える映画でした

「犬鳴村」に出てきた男の子が登場する
クロスオーバー的なのは邪魔でしたけどね…

ホラーとしてはあまり怖くないし微妙かもしれないですが
シュールで面白い映像を見せてくれたので
個人的には満足

評判は悪いですが
僕はそんなに悪い映画だとは思いませんでした

 


犬鳴村 [Blu-ray]

 

 

映画「ポゼッション」感想 なかなかキモくて好き

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どうもきいつです


ホラー映画「ポゼッション」観ました

呪いの箱にまつわる実話を基にした2012年のホラー映画
ある少女の身に降りかかる恐怖が描かれます

「死霊のはらわた」などのサム・ライミが製作を手掛け
監督を務めるのはオーレ・ボールネダルです

 

あらすじ
妻と離婚したクライドは
週末に2人の娘と過ごすのを楽しみにしていた
ある日、ガレージセールでアンティークの箱を購入する
それ以来、次女エミリーの様子が一変してしまった
徐々に凶暴になり異常な振る舞いがエスカレートするエミリーに
クライドは危機感を感じていく

 

感想
気持ち悪く不気味な演出に引き込まれていく
子役の演技も素晴らしい
終始、気持ち悪さのある映画でした
終盤のお祓いシーンはやり過ぎな気もするけど
サム・ライミらしさがあって嫌いじゃない

 

サム・ライミ製作ということで
気になったので観てみました

個人的にはとても好きなタイプのホラーで
最後まで楽しんで観ることができた


どちらかと言えばB級よりで
その上、サム・ライミ製作ということもあり
たぶん好き嫌いは別れるかも

すごく怖いホラーを求めるとちょっと違うし
実話を基にしてるからと真面目なホラーを求めるとかなり違う

そもそも、実話を基に~
とか言って実話で押してる作品ですけど
完全にフィクションなホラーです

こんなのあり得ないですから

呪いの箱っぽいものがあるらしい
ということから着想を得て作られた映画
くらいの軽い感じで観るのがいいと思う


そういうこともあり
観る側に若干マイナスなギャップが生まれてしまったので
この映画の評価もちょっと低めなのかもしれません

 

ただ、個人的には結構好きな作品で
ホラーとしての魅力をとても感じれました


まず、ストーリーですが
これはかなりシンプルで王道

いわゆる悪魔払い系のホラー
「エクソシスト」みたいなタイプの映画です

呪いの箱を手に入れることにより
主人公の娘の様子が段々とおかしくなり
最終的には悪魔払いをする
ってそれだけの話

そんなに捻りもなく
やってることはほぼ「エクソシスト」みたいなものです

だからこそシンプルでわかりやすく
観やすい映画ではあります

 

そんな映画なので
斬新なホラーではないんですけど
所々に散りばめられているホラー描写は
面白いものが多々あってそれなりに怖いし楽しめる内容です


蛾の使った描写なんかはなかなか気持ち悪くて
虫が苦手な人ならゾワゾワすると思う

口から蛾が出たり入ったりなんかは想像もしたくないくらいキモいし
単純に飛び交ってるのもなんか嫌

頭にとまってたりするのも
リアルにありそうな感じが妙に不快感を煽られます

部屋の中の大量の蛾なんて発狂ものですよね…

それに、あの蛾の大きさがちょうど嫌な大きさなんですよ
でかすぎればファンタジーだし
小さすぎると迫力に欠ける

あの大きさは絶妙に気持ち悪い大きさでしたね


それ以外にも

箱の中身の絶妙に気持ち悪い小物の数々
箱の鏡に移る少女の顔
喉の奥から指
狂っていく少女の姿
若干のグロ描写

などなど、気持ち悪くて不快な描写が多くて
キモ怖くてゾクゾクさせられます

 

そして、やっぱり子役の演技がとてもよかった

悪魔に取り憑かれるエイミーなんですが
如何にも子どもらしくとても可愛らしい女の子
でも、悪魔に取り憑かれた姿はマジで怖いし気持ちが悪い

それに、悪魔と少女の狭間の絶妙な演技も上手いですし

箱に魅了せれて徐々におかしくなっていく不安定な様子なんかも
とても心配な気持ちにさせられる

クラスの男の子が箱に触れてぶちギレたときは
完全に狂気の沙汰でしたし

こんな演技ができる子役に
単純にすごいなと思わされました


あとは、ちょっと笑ってしまうくらいの
やり過ぎな演出もサム・ライミ作品らしさがあって好きでした

母親の恋人の歯がボロボロ抜け落ちるのは
ちょっと笑ってしまった
しかも、この人狙われる理由がない
それに歯医者
可哀想です

部屋の中の蛾も
さすがに大量すぎて笑ってしまう
やりすぎ


で、ラストの悪魔払いシーン

ここはもうリアリティなんて全くなくて
完全にエンターテイメントでした

エミリーは完全に取り憑かれ白目を剥いて暴れまわるし
立ち位置や光の演出はあからさまだし
最後はなんか感動的だし

ちょっとブッ飛んだお祓い場面で
ここで冷めてしまう人もいるかもしれない

リアルさや静かな恐怖が好きな人は
このタイプのやつは苦手かも

ただ、このエンターテイメントな感じがサム・ライミらしくて個人的にはとても好き
僕はかなり満足できました

 

とは言え
基本的に大味なホラーでもあってツッコミどころも多い
だからこそB級っぽくもあって
良くも悪くもB級映画なホラーです


中でも
悪魔がストーリーの都合がよくなるように行動してるのが気になる

最初からこうすればいいのに
なんでこんなことするの?
みたいなことがとても多いです

はじめはエミリーの友達になる
ってあるあるな方法で誘惑してる感じなんですが
途中で唐突にエミリーの中に入るわけです

取り憑くための条件なんかもなかったし
それなら最初から取り憑けばいいのに
と思ってしまう


他にも
やたら人が死ぬんですけど
これも完全に悪魔のさじ加減で
主人公の家族は全然死なないのに
そんなに関係ない人はすぐに死んじゃたりする


何より
最後に主人公に取り憑くのは意味わからん

純粋な子どもを狙ってたからエミリーに取り憑いていたのに
なんで急におっさんに取り憑くの?

俺に取り憑け!!って言葉を素直に聞き入れたのかな?
意外と優しい悪魔ですね


アーーービーーーズーーー!!
って神父に名前呼ばれただけで箱に封印されてしまったりもするし

じゃあ神父
最初からそれやれよ
なに狼狽えてるんだよ


そんな感じの雑さも多いので
そこを好きになれない人も多いんじゃないでしょうか

僕はこの雑さ含めてこの映画は好きですけど


ただ、インパクトがあって印象に残るシーンはなかったかな
とも思いました

サム・ライミ作品でも「死霊のはらわた」や「スペル」なんかに比べると
おとなしいしあっさりしてた印象です

まあ、本作はサム・ライミが監督ではないですし
そこは仕方なかったのかな

 

実話が~とか言ってますが
全然リアルじゃない雑ホラー

そんなB級っぽさが個人的には好きだし
サム・ライミらしい描写も多くて楽しめました

好き嫌いは分かれそうですけど
サム・ライミが好きなら満足できる作品だと思います

 


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映画「ヤクザと家族 The Family」感想 考えさせられる映画 ちょっと一方的な気もするけど

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どうもきいつです


ドラマ映画「ヤクザと家族 The Family」観ました

1人のヤクザの生きざまを
3つの時代の価値観から描いたヒューマンドラマ
ヤクザになった男の仲間や恋人との出会いから
時代の流れにより排除されていくヤクザたちの姿が描かれます

日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝いた「新聞記者」を手掛けた藤井道人が監督を務め
主演は綾野剛です

 

あらすじ
父親を覚せい剤で失った山本賢治は
柴崎組組長の危機を救ったことによりヤクザの道に足を踏み入れる
そして、ヤクザとして名を上ていく賢治は
様々な出会いと別れの中で
組を守るためある決断をする

 

感想
ヤクザのヒューマンドラマとして面白く観れるエンタメ作品
その中で描かれるメッセージは
心に刺さるものや考えさせられるものもあります
ただ、テーマと作風に若干の矛盾も感じてしまう
この映画を何も考えず鵜呑みにしてしまうのはどうかと思いました

 

「新聞記者」の藤井道人の監督作ということで
期待して観に行ってきました


本作は「新聞記者」と同様に
社会問題に切り込んだような作品で
考えさせられるようなメッセージが込められた作品です

でも、小難しい映画なのかと言うとそうでもなく
ヒューマンドラマとしても楽しめる
エンターテイメントな作品でもあると思います

綾野剛演じる主人公もとても魅力的で
切ない物語ではあるけど面白く観ることができる
最後まで退屈せず引き込まれる内容でした

 

まず、時代の変化に合わせてヤクザの立場の変化を描いていく作りは面白い

かつては強い力を持っていたヤクザたちが
時代の移り変わりによって
今や生きづらい世の中で生きていかなくてはならない

そんなヤクザの栄枯盛衰を描いていて
今の時代だからこその新しいヤクザ映画
って感じで興味深い内容です


ヤクザの中でも義理人情を大切にするヤクザたちが主役で
そんな人たちだからこそ社会に振り回されてしまう

過去の映画などでダークヒーロー的に描かれてきたようなヤクザたちが
現実の世界では時代に取り残されてしまうような

切なさや哀愁を感じさせれてしまう


主人公の賢治を中心に
組織の立場やそれぞれの登場人物が描かれますが
やってることは結構シンプルでわかりやすい

中盤あたりはヤクザ映画らしさもあります
ヤクザ同士の抗争があったり
主人公の不器用な恋愛が描かれたり
バイオレンスな描写もなかなかあります

社会派映画ではあるけどエンタメ的にも楽しめました

本作のメッセージもわかりやすく伝わってきて
社会派っぽい内容だけど意外と観やすい映画だと思います

万人ウケするような映画になっている

その点ではこの映画の評判がいいのは納得できます
普通に面白い映画なんですよ

 

ただ、個人的に引っ掛かるところもあって
そこがすごく気になってしまう

これは同じ藤井監督の「新聞記者」を観たときも
同じようなことを思ったんですが

エンタメ的な映画の作りと
込められているメッセージに矛盾を感じてしまう

この映画ってグレーな問題を描いた作品だと思うんです

反社会的な組織のヤクザではあるけど
社会の一部であることは間違いなく

この映画はそんなヤクザと社会の変化を描いているわけです

ヤクザに関しては
必要悪と言う人もいるだろうし絶対に排除すべきと言う人もいると思う
ヤクザの中にもいろいろな考え方の人がいると思う

この問題って白黒はっきりつけれるようなものではない


ただ、この映画はそういうものをテーマにしてるわりに
白黒はっきり分けてしまってる気がするんですよ

いいヤクザがいて悪いヤクザがいる
悪徳警官もいる

主人公の賢治は絶対的ないいヤクザで
義理人情を重んじて
組長を父親のように慕い自分の組の人間たちを家族のように思っている
愛した女性やその娘も14年経っても無条件で愛するような誠実な男

そんないい人が時代に取り残され
切なくて可愛そうな話

主人公の周囲はみんないい人だったりもする


逆に悪いやつは徹底的に悪で
ひたすら主人公を苦しめ私利私欲のために行動している

主人公と敵対してる組は悪の組織って感じです


エンタメ的にはわかりやすい構図で
そっちのほうが面白い映画にはなると思うけど

社会派っぽい描きかたをしているのなら
これは安易なように思うし
ちょっと美化しすぎにも思います


この映画ってヤンキー漫画みたいな感じがするんですよね

ヤンキーの信念や葛藤や友情みたいなのをカッコよく見せてるけど
ヤンキーたちに強いたげられたり迷惑をかけられたりしてる人たちのことは完全に無視
みたいな…

こんな作風はエンタメ作品としては全然ありだけど
社会派作品となるとこれじゃないと思うんですよ

この映画も
時代に取り残された可哀想なヤクザ目線だけで
それ以外は放ったらかし

義理人情を重んじるいいヤクザがいても
それはヤクザには違いないわけで

そこに属するのならそれ相応の対価は支払わなければならないし
どんな境遇にあろうとその道を選んだ自分の責任でもある

時代が変わって生きづらくなった
辞めても再出発が難しい
それはわかるけども仕方がないことでもあると思うんです

そこをこの映画では
エンタメ的に観客が感傷的になって可哀想と思わすような演出もしていて
なんかちょっと納得できない

社会派っぽくするのなら
こんな一方的な見せ方はよくないと思うんですよね…


そもそも、本作はフィクションですし
作り物だとわかって観るのなら全然いいと思うけど

変にこの映画を鵜呑みにして感化される人もいそうです
そこに危うさも感じてしまう

 

そして、SNSの描写なんですが
これはちょっと雑な気がします

現代の社会問題になっているSNSの炎上も本作に絡めてるんですが
いまいちしっくりこなかったです

言いたいことはわかるんですよ
些細な書き込みでも1人の人間の人生を壊してしまうのがSNSの怖いところ

ただ、本作の場合はなんか無理やり繋げてる気がしてしまう

現実的に考えてみると
本当に賢治のような人がいたとして
こんな炎上のしかたや噂の広がりかたは
ありえないと思うんですよね

この炎上のしかたは芸能人なんですよ
もしくは無罪になった犯罪者や少年法に守られた殺人犯とか

ヤクザを辞めて底辺の仕事をしながらひっそり暮らす元ヤクザや
役所で働く中学生の娘がいる地味な独身シングルマザーは
SNSでこんなことにならない

こんな人たちは普通にスルーされる存在です

僕の思う炎上の心理って
成功者を引きずり下ろしたい
幸せそうな人が妬ましいから潰したい
悪いことしたのにお咎めなしはズルい
そんなとこだろうと思います

そこがこんな炎上問題の一番の闇だとも思うんです

だから、この映画でのSNSの扱いはちょっとズレてる気がするんですよね

もし、この主人公が元ヤクザを隠して
コネで高給のいい仕事をして家族と幸せに暮らしていれば
炎上するかもしれませんが

全くそんなわけでもなく
質素に人生の再スタートをしようとしてるのなら
SNSだとむしろ応援されるんじゃない?

変にSNSを絡めずに
普通に口コミで周囲の人に噂が広まって生きづらくなった
みたいな描写のほうがリアリティがあったと思います

 


あと、この映画は綾野剛に頼りすぎじゃない?

綾野剛という存在のお陰で
主人公の賢治は魅力的に見えてますし
この映画自体もとても魅力的になっています

でも、それに頼りすぎかも

よく考えれば
主人公の描写はすごく薄いし
賢治の人間関係の描写もかなり薄い

賢治と組長の関係性や賢治と由香の関係性など
もっと掘り下げてもいいと思う
と言うとか、ほとんど描かれてなかったし

綾野剛や他の役者たちの演技力や存在感で
それを補えてるし誤魔化せてるけど
実際はなかなか薄い内容だと思う

とは言え
綾野剛が主演
ってだけでこの映画は勝ちのような気もして
それで成り立っているのなら成功なのかも

俳優の能力を観るというのなら
この薄い人間ドラマがちょうどいい働きをしてるのかもしれませんね

 

個人的に感動したところもあるし
主人公の賢治はとても魅力的で好きなキャラクターです
ヤクザの栄枯盛衰も切なくて好きな内容

ただ、社会派っぽくしてるぶん
映画の内容と伝えたいメッセージにはズレを感じます
あくまでフィクションのエンタメとして観るのがいいと思います

 


新聞記者 [Blu-ray]

 

 

映画「花束みたいな恋をした」感想 気持ちはわかるけど共感はできない

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どうもきいつです


恋愛映画「花束みたいな恋をした」観ました

終電を逃し偶然であったことから始まる恋を描いたラブストーリー
主人公2人の5年間の恋愛が描かれます

「東京ラブストーリー」など様々なドラマを手掛けてきた坂元祐二がオリジナル脚本を書き下ろし
監督は「映画 ビリギャル」などの土井祐泰
主演は有村架純、菅田将暉が務めています

 

あらすじ
京王線の明大前駅で終電を逃した
大学生の山音麦と八谷絹は駅の回札前で偶然出会う
お互いに映画や音楽の趣味がほとんど同じで
2人は瞬く間に恋に落ちる
大学卒業後、2人はフリーターとして働きながら同棲をスタートさせるのだった

 

感想
邦画のラブストーリーのわりには
ちゃんと恋愛を描いていて好感が持てる作品
それなりに面白く観ることができました
ただ、あまり共感はできない
すべてにおいて理屈っぽくて嫌気がさす
サブカル文化ぶち込みすぎなのも鼻についた

 

普段はこんなタイプのラブストーリーはあまり見ないんですが
なかなか評判がよくて気になったので観に行ってきました

 

現代の若者のリアルな恋愛
みたいな感じの映画で
それをここ5年ほどのサブカルチャーを絡めて描いたという作品
作風はなかなか面白いと思いました

実際、自分もこの主人公たちとは近い世代だったりもするので
懐かしさを感じつつ楽しむことができました

あの時こういうの流行ったな
自分も似たような経験したな
とか思いながら観れるノスタルジーな映画
いわゆるエモいってやつですね


それにちゃんと恋愛してるのも好感が持てます

邦画の恋愛映画って
ただデートしてるだけだとか
どちらかが死んで泣きじゃくるだとか
人間ドラマは薄っぺらく出来事だけを見せる
そんな稚拙なラブストーリーがとても多いですけど

本作は2人の恋愛の過程やそれぞれの気持ちはちゃんと描かれます
なぜ2人は惹かれ合うのか
なぜ気持ちがすれ違うのか
ドラマをちゃんと見せてくれます

邦画ラブストーリーのハードルが低すぎるのか
それをやってくれるだけでもなんか安心してしまう


それに今どきの男女の恋愛っていうのも
目の付け所は面白いと思いますし
それなりに楽しんで観ることができました

 

とは言え
なんかこの映画を観ていると違和感もあって
最後まで観ても少し腑に落ちない気持ちにもさせられる

それは何なのかと考えてみると

全体的にすごく理屈っぽいんですよね

主人公2人の考え方や語り口調なんかもそうだし
そもそもこの映画自体も理屈っぽい

恋愛を理屈で語っているところに違和感があるんです

基本的に小難しい御託を並べ
サブカル知識をひけらかし
それで取り繕ってるだけのようにも思います


この映画で描かれる2人が惹き合う理由は
如何に自分と知識や情報を共有できるか
というだけで

それって本当に恋愛なのかな?
と疑問に思ってしまう

出会うきっかけとしては知識や情報を共有できるというのは重要だけど
付き合ってから恋愛を重ねていっても
2人のその関係性は変わらずに

同じ漫画を読んで泣けるとか
本棚に同じ本が並んでいるとか
好きな映画の知識を語り合えるとか
それだけが重要視されてる


思いのすれ違いに関しても

趣味を楽しめなくなったかずっと趣味を楽しみたいかの考えの違いだけ

この気持ちはとてもわかる
同じものを好きでいることの大切さも理解できます
でも、あまり共感はできないんです


この映画を観ていると
この2人は実は恋をしてないし感情も動いてないんじゃないか?
とさえ思えてきます

この2人には趣味以外の価値観は無いのか?

もし、この2人からサブカル知識を取り除いてしまえば
残るものって何なのか?
2人を繋げておくものが無いと思うんですよ


はじめは
気むずかしいサブカル大学生の2人が
本当の恋愛に向き合っていくような成長物語
になるんだろうと思っていたんですが

実際は最後まで
趣味がどうこうの理屈っぽい話で終わってしまう

恋愛なんて趣味が合わなくたって上手くいくし
逆に趣味が同じだからこそ相性が悪かったりもします

そもそも、誰かを好きになるのは理屈じゃない
そこから結婚するにしても別れるにしても
それも理屈じゃない

そんな部分にまで踏み込んでこそ
本作のこのテーマだと思うんですけどね

この映画は無駄に理屈で塗り固めて
堅苦しさすら感じてしまいました

 

それと、他に気になるのが
ラブストーリーとしてちょっとつまらなすぎる

サブカル要素で誤魔化されてるけど
実は当たり障りの無いあるあるな恋愛

趣味が合ってラブラブで付き合い出すけど
5年経つとマンネリで気持ちが薄れて別れました
っていう
普通すぎてつまらない内容です

リアルな若者の恋愛というので
そんな内容なんだと思うけど

さすがに面白味が無いですよね

現実の世界の人たちの方がもっと面白い恋愛してるんじゃない?


これは結局
オジサンが作った俺の思う今どきの若者の恋愛
だからだと思うんですよ

若者が共感しそうなあるあるを詰め込んで
それっぽい恋愛に仕上げてみましたって感じ

でも、それってリアルっぽくは見えるけど
結局はただのハリボテ


この映画のメインでもあるサブカル文化もそれで
結局はその時代の流行りのサブカルを詰め込んでるだけ
若者はこんなの好きだろ
と言わんばかりに見せつけられます

とにかく詰め込むサブカル文化には
ちょっとウザさも感じてしまいました


この映画のサブカルって
ヴィレヴァンみたいなんですよ
乱雑にそれっぽい流行りのものを陳列してるような

だから、主人公2人は何オタクなの?
って思ってしまう

これじゃあ
ただのオシャレサブカル大学生ですからね
流行りのものに飛び付いてるだけだし

それに、そんなオシャレサブカル大学生は気むずかしくないし面倒くさくない
飲み会でウィーイ!!ってやってますよ


現実の若者の思考と
この映画の主人公たちの思考にズレがあって
リアリティに欠ける

無理に今の若者を描こうとして
逆に嘘っぽくなってる気がしました

 

あと、この映画に登場するサブカルが
個人的に全然趣味に合わない

この映画を観て
昔こういうの好きだったな
って懐かしく思う人もいるだろうけど

僕の場合は
こんなのあったけど別に好きじゃなかったな…
というのがほとんどでした

 

それと、終電逃した4人の好きな映画の会話

ショーシャンクと小芝風花をディスられた気がした

てか、好きな映画の話で実写版の魔女の宅急便をあげる人はたぶん面白い人
ただ者じゃない

まあ、これはどうでもいいことですけど

 

それなりに面白く観れる映画でしたけど
なんか引っ掛かる部分もすごく多かった

でも、邦画のラブストーリーとしては出来がいいほうですかね
有村架純と菅田将暉が好きなら十分満足できる映画だと思います

 


映画 ビリギャル Blu-ray プレミアム・エディション

 

 

映画「名も無き世界のエンドロール」感想 それなりに面白かったけど 思ったより予想外ではない

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どうもきいつです


サスペンス映画「名も無き世界のエンドロール」観ました

第25回小説すばる新人賞を受賞した
行成薫による同名小説を映画化した作品
表と裏の世界での仕上がった2人の青年の壮大な計画が描かれます

監督は「累 かさね」「キサラギ」などの佐藤祐市
主演は岩田剛典と新田真剣佑が務めます

 

あらすじ
幼馴染みのキダとマコトは転校生ヨッチと共に
子どもの頃から3人で支え合いながら成長してきた
20歳になりヨッチが姿を見せなくなり
2人の平穏な日々は失われる
キダは裏社会で交渉屋として暗躍し
マコトは表社会で社長として成功をつかむ
そんな2人は10年の歳月をかけた計画を実行に移す

 

感想
ストーリーの流れは面白いと思いました
サスペンスとして楽しめる内容だと思います
ただ、それだけにこだわりすぎたのか
人間ドラマが薄く感じて感情移入はあまりできなかった
あと、言うほどラストに衝撃は受けない

 

予告を見てとても気になっていたので見に行ってきました

宣伝では
ラスト20分の~
みたいなことを言ってますが
言葉通りそういうタイプの映画です

謎が散りばめられていて
最後にタネ明かしって感じのサスペンス

予告でそれを言っちゃうのはどうかな?とは思うけど
この作品に限ったことじゃないし
今さら文句を言うことでもないかな

 

映画の内容は
時系列が入り乱れ
過去と現在が同時進行で描かれます

その中でいろいろと伏線が散りばめられていて
ラストの展開に繋がっていきます

全体の流れやストーリーは面白いと思う

主人公2人の目的はなんなのか?
という最大の謎に向かって進んでいくストーリーなので
とても興味が引かれ
それが終盤まで持続する

いろいろと予想しながら楽しめる
いかにもサスペンスらしい作品です

サスペンスとしてはそれなりに楽しめる映画かなと思う

 

とは言え
めちゃくちゃ面白いのかと言うと
そこまででもなくて
普通って感じ

特にサスペンス映画なんかをよく観る人なら
これじゃあちょっと物足りないかもしれません

この映画の最大の魅力でもあるラストの展開
これに関しても
正直、読めてしまいます

ってか、想定内の事が起きてそれで終わってしまうので
ラストにはさほど衝撃を受けないと思います

勘のいい人なら
序盤の犬を轢いたって件のところでオチに気づくと思いますし

ラストを簡単に予測できてしまうので
これじゃ終わらないだろ
と変にハードルも上がってしまってる

でも、結局は思った通りのオチなので
宣伝で推してるわりには
ラストの盛り上がりは弱いかもしれない


これはやっぱり伏線が多すぎるというのがあると思います

最後にこれ伏線でしたよ
ってのをやりたいからなのか
いろいろと手数を打ってきます

しかも、何回も同じようなものを見せたり
意味深にセリフを言ったりと
ちょっとくどかったりもするので
伏線があからさまだったりもする

なので、途中でもいろいろと読めてくるんですよね

わかりやす過ぎるのでミスリードなのかとも思うんですが
意外とそんな引っ掛けは全然なくて
ストレートに全部伏線を回収します

真相が明かされるまでに
ほとんどの人がオチを読めてしまってると思います


それと、隠しすぎて逆に隠れてない
というのもあります

本作のキーパーソンであるヨッチですが
現代パートでは明らかにその存在が隠されている

回想シーンでは常に登場するヨッチが
現代パートでは全く登場せず
何故いないのかも全く説明されません

現代パートでは徹底してヨッチに触れないので
これが謎の中心だと安易に予想できる

そして、それが謎の中心なら
たぶんヨッチは死んでるよなってなります

じゃあ、犯人は絶対にアイツだよなってなる

そうなれば主人公2人の目的も簡単にわかってしまう

結構早い段階で
これは予測できてしまうので
やっぱりこれ以上のどんでん返しは期待してしまいますよね

結果的にこれ以上のものはないので
物足りなく感じてしまうわけです

もっと壮大な計画を期待していたので
少し拍子抜けでした


でも、このサスペンスの作り自体はそんなに悪くもないと思っていて
つまらないってほどでもないと思うんですよ

問題はサスペンスの仕掛けにこだわりすぎて
それ以外があまり面白くないというところ

形だけで中身の無い映画になってると思う

登場人物の感情や気持ちはわかりづらく
それぞれの関係性などの人間ドラマもほぼ描かれない
いまいち感情移入ができないんです


これを言っちゃうのはネタバレになりますけど

この物語は復讐劇で
殺されてしまったヨッチの思いを晴らすための戦いなわけです

ヨッチの忘れられたくないという思いのため
キダとマコトは計画を実行したことが最後には発覚しますけど

2人がヨッチのその思いにどう共感してるのか
なぜ2人はそこまでそれに執着するのか
という部分があまり描かれていない

もっとその部分を丁寧に描いてくれれば
2人に感情移入できてラストの展開もさらに盛り上がったと思います

それにドラマが薄いから
ラストがネガティブなバッドエンドにしか思えない
これただの自殺願望ですよね


ここもやっぱり真相を隠そうとしすぎて
登場人物の感情や思いまでも隠れてしまってるんですよ

そりゃ出しすぎれば結末がわかってしまいますけど
本作に関してはそこまで結末を隠す必要もなかったと思いますし

結末を隠そうとするが故に中身が薄くなってしまい
観る側はストーリーを追うことだけをして
結果的にオチを予想することだけに集中してしまう

それって本末転倒ですよね

ドラマの部分を濃く描いていれば
ここまで作業的にに結末を予想していなかったかもしれません


それと、リアリティもちょっと薄いですかね

全体的にトントン拍子で物事が進みすぎだし
具体的なものが描かれていなかったりします

特にキダとマコトがそれぞれの世界の中で成り上がっていく過程
これが抽象的すぎます

キダは裏の世界で交渉屋として働くことになりますが
一瞬で凄腕交渉屋になってしまってる

具体的に何をしてきたのか
どれくらいの時間を費やしたのか
そんなのは曖昧で
頑張ったら成功しましたくらいの浅い描写


マコトも同じで
会社を買うために大金を貯めてるけど
どうやって稼いだのか
合法なのか非合法なのか
そんなのは全く描かれない

会社を買った後も
何をしてるのかいまいちわからん
でも、いつの間にかなんかすごい社長にはなってるんですよね

この、なんかすごい2人
みたいな軽い描きかたが稚拙にも思えて
映画自体もちょっと安っぽく見えてしまう


大物政治家や娘のクズ女もやっぱり具体性がなくてリアリティに欠ける

事件の揉み消しに関しても具体性が弱いし
やってることも現実離れしていて
ちょっと嘘っぽく感じてしまいます

クズ女のモデル役を演じる中村アンはなかなか評判がよくて
実際すごくハマり役でよかったんですけど

キャラ設定がテンプレな悪い女で終わってしまっててもったいない

いかにもな設定な上
ちょっとやり過ぎな過剰さもあり
このキャラが薄っぺらくて嘘っぽい


リアリティの薄い部分がとても多くて
チープさを感じてしまうし
ご都合主義にも思えてしまう

リアリティがあって嘘っぽさがなければ
本作の格ももっと上がったと思います


あと、エンドロール後のあれ
これはちょっと観客をなめてますよね…

動画配信サービスで続きのドラマが配信されますってやつ

わざわざ加入してまでも続きを観たいとは思わないけど
こういうのは好きじゃない

この映画ってこれのための宣伝だったの?
って損した気分にもなった

こういうの見せられると金の臭いも感じて印象悪いですよ

 

そんなに悪い映画とも思いませんでしたが
もったいない部分がとても多かった

やってることは面白いし
もっと面白い作品にできたような気がします

衝撃も感動も予想より下回ってる映画でした

 


名も無き世界のエンドロール (集英社文庫)