何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「あの頃。」感想 オタクなら共感できる青春ドラマ

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どうもきいつです


ドラマ映画「あの頃。」観ました

劍樹人の自伝的コミックエッセイ「あの頃。 男子かしまし物語」を実写映画化した作品
さえない日々を過ごす青年が
アイドルや同じオタクの仲間たちに出会い
青春を謳歌する姿が描かれます

監督は「愛がなんだ」の今泉力哉
出演するのは松坂桃李、仲野太賀などです

 

あらすじ
恋人もお金もないどん底の生活を送る劍は
ある日、松浦亜弥のミュージックビデオを見て
ハロー!プロジェクトのアイドルに夢中になる
イベントで知り合ったコズミンなど個性的なオタク仲間たちとともに
くだらない青春の日々を送っていく

 

感想
起承転結は特になく淡々とした日常が描かれます
でも、その中で描かれる青春の日々には
とても懐かしさを感じさせられる
何かに熱中した馬鹿な男子なら共感できる映画
男子中学生みたいなノリの映画なので女子ウケは悪いかも

 

アイドルオタクがテーマ
松坂桃李が主演
今泉力哉が監督
ということでとても期待していた作品

実際に観てみると
予告で見た印象とはちょっと違いました

予告ではアイドルオタクという部分がメインに思わされたんですけど
そこは舞台設定にすぎず
メインはオタク仲間との青春物語

しかも、劇的なものはほぼなくて
淡々と彼らの日常を見せられているような映画です

予告と実際の内容とのギャップで
この映画に批判的になってる人もいると思います

もっとハロプロの楽曲が流れると思ってたとか
オタクとアイドルの関係性が深く描かれると思ってたとか
そんな人も多いと思う


僕も予告とのギャップは感じましたけど
これはこれでとても共感させられる面白い映画だと思えた

アイドルオタクだけが感じる共感ではなくて
多くの人が普遍的に共感できる青春映画で
面白く観ることができました


まず、ストーリーですけども
これはちょっと掴み所がないかもしれません

わかりやすく起承転結があるわけではなく
なにかが始まってどこか終わりに向かっていくような物語ではありません

アイドルにハマった青年が
同じアイドルオタクの仲間たちとともに
なんでもないしょうもない日常を過ごしていく

ただそれだけの映画

その中で
アホでくだらない仲間内のノリをコミカルに見せてくれたり
この人たちだからこその変な人間関係を見せてくれたりします

そして、時間とともに薄れていく青春
でも、確実にキラキラしていて
時間が経っても消えることがなく
現在進行形で輝いてもいる青春

青春の儚さと揺るぎなさを同時に感じることができる
みんなが普遍的に持っている青春を描いた作品でもあると思います

僕はそんな青春の描写に懐かしさや共感を感じ
何とも言えない気持ちにさせられました

この映画と全く同じ経験はしてないけど
自分に重なるところもすごくある

同じ何かを共有して馬鹿みたいに騒いでいた時期もあります

同じものを共有していてわかり合っていても
みんな仲良しってわけでもなく
嫌な奴はいるし、そんなに知らない人もいる
面倒くさい人間関係もあったりするけど
それでも同じものを愛する仲間なのは間違いなかったり

この映画を観ると
そんな過去を思い出さされました

今は全く会わなくなったあいつ今どうしてるのかなー?
みたいなことを考えてしまいます

 

本作はそんな青春をリアルに描けていたと思うんですよね

登場人物の会話のやり取りなんかも
妙にリアルだったりします

全体的にコメディー要素の強い作品ではありますが
笑わせる会話がとても自然なんです

ここで笑わしてやろう
ここ笑うとこですよ
みたいなわざとらしい部分はあまりなく

登場人物たちの何気ない会話がなんか面白いって感じなんですよね

自分達もなんかやってそうな普通の会話
でも、実はちゃんと笑わそうとしてたりもする
これが絶妙なバランスだったと思う

これは、俳優たち自然な演技の賜物なのかなと思います
それに、なんか楽しんで演技してるんだろうな
ってのも感じる
そういうのもあって
会話のシーンがとても笑えるし楽しい場面になってたんじゃないでしょうか


その中でもロッチのコカドがめっちゃいい役割をしていたと思います

もともとロッチのコントも自然な雰囲気だし
この映画でもそれが生きていると思うんですよ

コカドのツッコミがちょうどいいんですよね
お笑い芸人になりすぎてない
ちゃんとツッコミは入れてるんですけど
普通の会話の延長線上になっていて嘘っぽくないんです

彼がいなければこの映画の笑いの部分はもっと薄くなってたかもしれない


あと、仲野太賀が演じるコズミン
これもなんかいそうなリアルさがあってよかった

コズミンは本作のもう一人の主人公でもあると思いますが
あまりの存在感に主役の松坂桃李を食ってしまう勢いでしたね

彼は本当にクズすぎて最低の人間
コズミンが嫌いで受け付けないって人もいるだろうけど
だからこそ輝いているキャラでもありました

そして、こんな嫌な人間性が妙にリアルで
自分の周りにもいそうな気がする

それに、こんなクズでも愛されている
ってのもなんかわかる

てか、実はコズミン以外もどうしようもない人間たちで
だからこそみんな引き合ってると思うんですよ

そんな人間の集まりだから
コズミンのクズな言動にも笑っていれる
それがキラキラと輝く青春だったりもすると思うんです

このコズミンの存在が
本作の青春というテーマをより深くしていたような気がしました

 

あと、本作にアイドルオタクの生きざま
みたいなものを求めて観た人は
ちょっと拍子抜けかもしれません

この映画ではアイドルオタクという部分はそんなに深掘りされず
あくまでもメインはアイドルオタクたちの青春

オタクたちがどれだけアイドルに命を懸けてるかや
オタクとアイドルの関係性
などは描写されません

そこに物足りなさを感じる人は多いと思う
主人公の劍が松浦亜弥にハマっていく過程も薄いと思いますし

ただ、僕はアイドルにめっちゃハマってた時期がありましたし
その目線からこの映画を見ると

劍が松浦亜弥のMVに釘付けになり涙を流すシーン
これだけで全てがわかる
これだけで全てが物語られてると思うんです

このシーンだけで
アイドルの魅力
アイドルの存在意義
なぜ人はアイドルにハマるのか

全部が込められていて
これだけで理解できる

このシーンさえあれば
この先の劍の行動の原動力として納得できるんです

このシーンだけでアイドルオタクを描ききっていたんじゃないかとさえ思いました

 

どうでもいい淡々とした日常が描かれるだけの映画ですが
そこにはリアルさがあって
自分もその場にいたかのように感じれました

多くの人にこんな馬鹿らしくしょうもない青春はあっただろうし
それは大切な思い出だと思います

何とも言えないノスタルジーを味わえて
笑える楽しい映画でした

 


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