何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「名も無き世界のエンドロール」感想 それなりに面白かったけど 思ったより予想外ではない

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どうもきいつです


サスペンス映画「名も無き世界のエンドロール」観ました

第25回小説すばる新人賞を受賞した
行成薫による同名小説を映画化した作品
表と裏の世界での仕上がった2人の青年の壮大な計画が描かれます

監督は「累 かさね」「キサラギ」などの佐藤祐市
主演は岩田剛典と新田真剣佑が務めます

 

あらすじ
幼馴染みのキダとマコトは転校生ヨッチと共に
子どもの頃から3人で支え合いながら成長してきた
20歳になりヨッチが姿を見せなくなり
2人の平穏な日々は失われる
キダは裏社会で交渉屋として暗躍し
マコトは表社会で社長として成功をつかむ
そんな2人は10年の歳月をかけた計画を実行に移す

 

感想
ストーリーの流れは面白いと思いました
サスペンスとして楽しめる内容だと思います
ただ、それだけにこだわりすぎたのか
人間ドラマが薄く感じて感情移入はあまりできなかった
あと、言うほどラストに衝撃は受けない

 

予告を見てとても気になっていたので見に行ってきました

宣伝では
ラスト20分の~
みたいなことを言ってますが
言葉通りそういうタイプの映画です

謎が散りばめられていて
最後にタネ明かしって感じのサスペンス

予告でそれを言っちゃうのはどうかな?とは思うけど
この作品に限ったことじゃないし
今さら文句を言うことでもないかな

 

映画の内容は
時系列が入り乱れ
過去と現在が同時進行で描かれます

その中でいろいろと伏線が散りばめられていて
ラストの展開に繋がっていきます

全体の流れやストーリーは面白いと思う

主人公2人の目的はなんなのか?
という最大の謎に向かって進んでいくストーリーなので
とても興味が引かれ
それが終盤まで持続する

いろいろと予想しながら楽しめる
いかにもサスペンスらしい作品です

サスペンスとしてはそれなりに楽しめる映画かなと思う

 

とは言え
めちゃくちゃ面白いのかと言うと
そこまででもなくて
普通って感じ

特にサスペンス映画なんかをよく観る人なら
これじゃあちょっと物足りないかもしれません

この映画の最大の魅力でもあるラストの展開
これに関しても
正直、読めてしまいます

ってか、想定内の事が起きてそれで終わってしまうので
ラストにはさほど衝撃を受けないと思います

勘のいい人なら
序盤の犬を轢いたって件のところでオチに気づくと思いますし

ラストを簡単に予測できてしまうので
これじゃ終わらないだろ
と変にハードルも上がってしまってる

でも、結局は思った通りのオチなので
宣伝で推してるわりには
ラストの盛り上がりは弱いかもしれない


これはやっぱり伏線が多すぎるというのがあると思います

最後にこれ伏線でしたよ
ってのをやりたいからなのか
いろいろと手数を打ってきます

しかも、何回も同じようなものを見せたり
意味深にセリフを言ったりと
ちょっとくどかったりもするので
伏線があからさまだったりもする

なので、途中でもいろいろと読めてくるんですよね

わかりやす過ぎるのでミスリードなのかとも思うんですが
意外とそんな引っ掛けは全然なくて
ストレートに全部伏線を回収します

真相が明かされるまでに
ほとんどの人がオチを読めてしまってると思います


それと、隠しすぎて逆に隠れてない
というのもあります

本作のキーパーソンであるヨッチですが
現代パートでは明らかにその存在が隠されている

回想シーンでは常に登場するヨッチが
現代パートでは全く登場せず
何故いないのかも全く説明されません

現代パートでは徹底してヨッチに触れないので
これが謎の中心だと安易に予想できる

そして、それが謎の中心なら
たぶんヨッチは死んでるよなってなります

じゃあ、犯人は絶対にアイツだよなってなる

そうなれば主人公2人の目的も簡単にわかってしまう

結構早い段階で
これは予測できてしまうので
やっぱりこれ以上のどんでん返しは期待してしまいますよね

結果的にこれ以上のものはないので
物足りなく感じてしまうわけです

もっと壮大な計画を期待していたので
少し拍子抜けでした


でも、このサスペンスの作り自体はそんなに悪くもないと思っていて
つまらないってほどでもないと思うんですよ

問題はサスペンスの仕掛けにこだわりすぎて
それ以外があまり面白くないというところ

形だけで中身の無い映画になってると思う

登場人物の感情や気持ちはわかりづらく
それぞれの関係性などの人間ドラマもほぼ描かれない
いまいち感情移入ができないんです


これを言っちゃうのはネタバレになりますけど

この物語は復讐劇で
殺されてしまったヨッチの思いを晴らすための戦いなわけです

ヨッチの忘れられたくないという思いのため
キダとマコトは計画を実行したことが最後には発覚しますけど

2人がヨッチのその思いにどう共感してるのか
なぜ2人はそこまでそれに執着するのか
という部分があまり描かれていない

もっとその部分を丁寧に描いてくれれば
2人に感情移入できてラストの展開もさらに盛り上がったと思います

それにドラマが薄いから
ラストがネガティブなバッドエンドにしか思えない
これただの自殺願望ですよね


ここもやっぱり真相を隠そうとしすぎて
登場人物の感情や思いまでも隠れてしまってるんですよ

そりゃ出しすぎれば結末がわかってしまいますけど
本作に関してはそこまで結末を隠す必要もなかったと思いますし

結末を隠そうとするが故に中身が薄くなってしまい
観る側はストーリーを追うことだけをして
結果的にオチを予想することだけに集中してしまう

それって本末転倒ですよね

ドラマの部分を濃く描いていれば
ここまで作業的にに結末を予想していなかったかもしれません


それと、リアリティもちょっと薄いですかね

全体的にトントン拍子で物事が進みすぎだし
具体的なものが描かれていなかったりします

特にキダとマコトがそれぞれの世界の中で成り上がっていく過程
これが抽象的すぎます

キダは裏の世界で交渉屋として働くことになりますが
一瞬で凄腕交渉屋になってしまってる

具体的に何をしてきたのか
どれくらいの時間を費やしたのか
そんなのは曖昧で
頑張ったら成功しましたくらいの浅い描写


マコトも同じで
会社を買うために大金を貯めてるけど
どうやって稼いだのか
合法なのか非合法なのか
そんなのは全く描かれない

会社を買った後も
何をしてるのかいまいちわからん
でも、いつの間にかなんかすごい社長にはなってるんですよね

この、なんかすごい2人
みたいな軽い描きかたが稚拙にも思えて
映画自体もちょっと安っぽく見えてしまう


大物政治家や娘のクズ女もやっぱり具体性がなくてリアリティに欠ける

事件の揉み消しに関しても具体性が弱いし
やってることも現実離れしていて
ちょっと嘘っぽく感じてしまいます

クズ女のモデル役を演じる中村アンはなかなか評判がよくて
実際すごくハマり役でよかったんですけど

キャラ設定がテンプレな悪い女で終わってしまっててもったいない

いかにもな設定な上
ちょっとやり過ぎな過剰さもあり
このキャラが薄っぺらくて嘘っぽい


リアリティの薄い部分がとても多くて
チープさを感じてしまうし
ご都合主義にも思えてしまう

リアリティがあって嘘っぽさがなければ
本作の格ももっと上がったと思います


あと、エンドロール後のあれ
これはちょっと観客をなめてますよね…

動画配信サービスで続きのドラマが配信されますってやつ

わざわざ加入してまでも続きを観たいとは思わないけど
こういうのは好きじゃない

この映画ってこれのための宣伝だったの?
って損した気分にもなった

こういうの見せられると金の臭いも感じて印象悪いですよ

 

そんなに悪い映画とも思いませんでしたが
もったいない部分がとても多かった

やってることは面白いし
もっと面白い作品にできたような気がします

衝撃も感動も予想より下回ってる映画でした

 


名も無き世界のエンドロール (集英社文庫)