何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「blank 13」感想 初監督でこんなの作れるんですね


どうもきいつです

 

家族ドラマを描いた映画「blank 13」観ました

 

俳優、斎藤工の長編監督デビュー作
放送作家のはしもとこうじの
実話を基にした家族の物語を描いた
2018年の作品です





あらすじ
13年前に借金を残し姿を消した父親が
余命3カ月という状態で
消息が判明した
しかし、父と家族の溝は埋まることなく
3カ月後にこの世を去ってしまう
そして、葬儀に参列した人々が語る
父親のエピソードによって
家族の13年間が埋まっていく



感想
特別に面白い映画ではなかったけど
ヘタな邦画よりは
全然良い作品だと思います
斎藤工のこだわりも
たくさん詰め込まれた映画



斎藤工の監督作として
前から気になってた作品でした

斎藤工は結構好きな俳優でもあるので
期待もしていました


そして本作は
かなりこだわって作られた作品
だと感じました

もともと、映画好きで知られる
斎藤工さんですけども
だからこそこういう映画が撮れたのかな
とも思える作品です


正直言うと
そんなに面白いとは思わなかったんです
描かれているドラマが
心に刺さったわけでもなく
コメディの部分も
そんなに笑えなかった

ただ、監督がどういうものを表現したいのか
どういう映画を作りたいのか
この作品に対する熱量
そういうのはひしひしと伝わってきます

この時点でヘタな邦画なんかより
全然好感が持てるし
良い作品だとも思えました

金のために人気漫画を実写化するだけで
中身がカラッポの映画や
感動のために人を殺しているだけの映画
何種類も入場特典を用意して
何回もリピートさせるだけアニメ映画

そんなのに比べれば
この映画はちゃんと映画です



この映画で良かった点は

映画だからこその表現を
しっかりと見せてくれるんです


例えばストーリーの見せ方です

セリフで状況や心境を全部説明している
ってのは邦画ではよくあるんですが

本作では
極力セリフだけでは説明せずに
役者の演技や表情、位置関係
映像の見せ方
最低限の情報でその場の状況や
キャラの心情を描いています

それも、ちゃんと観ている側にも
伝わるように見せてくれています

回想シーンの入れるタイミングで
主人公の気持ちを表したり

兄弟のさりげない言動で
母親が倒れてしまったことを
表現したり

兄弟の位置関係の違いでの暗喩で
兄弟の気持ちの違いを表したり

とにかく細かい部分まで作り込まれています


この映画のテーマやメッセージも
主人公たちの家族の葬式と
隣の大々的な葬式を対照的に描いて
伝えたいものを
説明臭くなく伝えているので
すっと入ってきます



そして、この映画が
ただの美しい家族愛みたいな
安っぽい話になっていなかったのも
良かったです

映画の後半部分は
父が行方不明になっていた間の
空白の部分が
父の知り合いたちの思い出話によって
明らかにされていきます

そこで息子たちは
父の知らなかった部分を知り
心の穴も少し埋まっていきます

それでも、やっぱり割り切れない部分や
父を許せない気持ち
そういう部分もあるわけです

そこで、お父さんが実は
すごく良い人だったんだ
みたいな涙と感動の物語にはせず

嫌いだった父の知らなかった一面を
知ることで
息子たちがなんとも微妙な感情を現し

良い話だったな
と、簡単には思えない
繊細なドラマを描いています


その部分も言葉で説明するわけでなく
あくまで役者の演技で表現しています

役者の演技とストーリの見せ方
それも相まって
この映画に深みを出していると感じました



あと、笑いの部分の描き方も
とても良かったと思います

これもよくあるのが
変顔であったり
面白そうな喋り方だったり
ボケツッコミだったり
そういうのが多いんですけど

この映画ではそういうのは無く
物語の中で起きる変な事
それによって生まれる変な空気
そういうもので笑いを作ろうとしています

こういうのは映画の中でも違和感を
感じませんし不自然じゃないんです

もし笑えなかっても
そんなにスベった感じにもなりませんし



このどれもが
役者たちの演技の賜物だとも思います
斎藤工が信頼している仲間たちを
集めたことで
成り立った映画でもあるんじゃないでしょうか



単純に
初めて撮った映画がこれなんだ
すごい
そう思える映画でした

次回作も期待してます



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