何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」感想 これは原作を超えてるかも

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どうもきいつです


アクション映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」観ました

週刊少年ジャンプで連載され人気を博した
和月伸宏による漫画「るろうに剣心 明治剣客浪漫譚」を実写映画化した作品
完結編2部作の第2弾です
原作では剣心の過去が語られる追憶編を基に
剣心が不殺の誓いを立てるまでの物語が描かれます

これまでのシリーズ同様に監督は大友啓史
主演は佐藤健が務めています

 

あらすじ
動乱の幕末
剣心は長洲藩の桂小五郎のもとで暗殺者として暗躍し人斬り抜刀斎の呼び名で恐れられていた
ある夜、偶然出会った雪代巴に人斬りの現場を見られてしまい
口封じのため彼女を側に置くことになる
そこから剣心の十字傷に秘められた真実が明かされていく

 


感想
これまでのシリーズとはうって変わり
かなりシリアスでリアル路線の作風
この作風が原作以上にこのエピソードを面白く描けていたと思います
かなり地味な映画にはなってるけど
この映画は原作超えかも

 

最終章1作目のThe Finalを観たので
2作目の本作も観に行ってきました

前4作がどれも漫画実写化としてなかなかクオリティが高く
この映画にもかなり期待していました

そして、期待通りとても良かった
てか、期待以上の出来だったかもしれません

僕は原作がとても好きで
今までの作品は原作好きとしてちょっと納得いかない部分もそれなりにありました

でも、本作は
原作が好きな僕でも
原作よりも面白いんじゃないか?
と思わされた

とにかく
とても完成度が高い映画だと思います

 

まず、本作は今までとかなり作風が違います

前4作はどれも
アクションがメインのエンタメ映画で
原作よりも少しリアルな時代劇風にはなってるものの
如何にもジャンプ漫画を実写化したような映画でした

漫画らしいちょっと過剰なアクションシーンだったり
個性的で存在感のある悪役だったり
そんなのがこのシリーズの魅力であり
実写化成功の要因であると思います


しかし、本作は今までとは全く違う方向性で
かなりリアルな幕末の歴史もの映画になっている

アクションはかなり少なくなっているし
ストーリーはすごく暗い
わかりやすく敵がいるわけでもない

アクション全振りの前4作とは逆の
アクション控えめの人間ドラマ重視の内容になっているんですよ

そんな作風の変化についていけず
この映画がつまらないと思ってしまう人もいるかもしれません

そりゃ爽快に戦いまくる剣心の姿を見たいですもんね
それが真逆の地味な映画ですから

その上
本作はかなり説明が少ない映画で
そこにハマれない人もいるかも

幕末が舞台で史実に則った背景があり
フィクションではあるけど
登場人物や出来事は実際のものが多く基礎知識は必要です

幕末がどんな時代なのか
剣心はなぜ暗殺を任されてるのか
桂小五郎って誰で何をしてる人なのか
奇兵隊って何なのか
新撰組とはどんなグループなのか
沖田総司はなぜ血を吐いて苦しんでるのか
などなど

そういう説明は全くされず
知っている前提で物語が進んでいきます

なので知識がなければちょっとついていけないかもしれません

とは言え
中学生くらいまでに習う常識レベルの知識でもあるし
これくらいは知ってて当たり前ではありますが…


そんな歴史的背景以外にも
この映画は極力説明が省かれていて
ちょっと説明不足なのは否めない

そこに戸惑い乗りきれない人もいると思います


ただ、だからこそリアリティも生まれていて
創造力が掻き立てられる部分は大いにある

しかも、説明不足を補う役者の演技や演出がすごく良くて
言葉以外の要素からいろいろ伝わってくる映画になっている

本格的な幕末時代劇になっている上に
映画としても質が高いと思います

 

次は何故この映画が
原作を超えてるんじゃないか
と思ったかの話です

原作での追憶編の位置付けはと言うと
剣心の過去の謎を解き明かす回想で
あくまで剣心と縁の戦いを描く人誅編を補うエピソード
という感じでした

で、本作はと言うと
回想というよりは前日譚で
このエピソードが1つの物語として成立しています

原作では伏線回収が中心なんですが
本作の場合は伏線なんかよりも
剣心が如何にして不殺の誓いを立てたのか
のドラマが中心で
その中で巴との関係性を描いたラブストーリーにもなっている

なので
原作以上にドラマの深みがあって
1つの作品として見応えのある内容なんです

特に剣心の人を斬ることへの葛藤は
原作以上に深く描かれていて
ストーリーの重みが全然違うなと思いました

 

さらに、幕末という動乱の時代を
原作よりもリアルに深く描いている作品でもあります

原作では
悲しく重いエピソードではあるけども
やっぱり少年漫画というのは間違いなく
結果的に勧善懲悪な話になっていく
幕末に関してもそんなに深く描写されません

それが本作では
実写という利点を生かして
幕末の悲惨さや残酷さを上手く表現している

殺陣にしたって
これまでのエンタメなアクションと違い
血生臭く痛々しい表現になっています

アクションは爽快さよりも
グロくて残酷な描写が印象的です

死体に虫がわくなど
今までにない気持ち悪いシーンも多々あります

 

そして、わかりやすく善悪を分けた物語にもなっていなく
幕末という時代をリアルに描いています

剣心が人斬りを続けるのも日本を変えるための戦いで
それが善か悪かの答えなんてなく
維新志士にしろ新撰組にしろ
各々の信じる正義のため戦っているわけです

何よりも本作のラスボスである辰巳のキャラクターが原作とは大きく違う

原作ではこの辰巳が少年漫画らしいわかりやすい悪役に描かれていますが
本作では
辰巳も幕府のために仕え己が信じる正義のために戦う人物になっているんです

このキャラ設定の変更が
よりこの物語に深みを出していると思うんですよね

悪人だから倒す
敵を倒せば平和になる
みたいな単純な物語になっていなくて
そこが物語のリアルさにも繋がっています


そんなリアルな幕末の描写も
実写だからこそストーレートに伝わってきますし
このエピソードの重々しさや悲しさにはピッタリとハマっていて
よりストーリーの魅力引き立てていました

これは原作にはない実写だからこその表現で
原作を超えている点だと思うわけです

 

あと重要なのは役者の演技
これも本当に素晴らしいと思う

特にメインの佐藤健と有村架純
この2人が剣心と巴の心を原作以上に上手く表現できている

微かな表情の変化や動作
声の出し方などで
内面や心の変化を繊細に表現しています

もちろん原作のキャラの雰囲気は損なわず
でも原作以上に2人の恋愛を深く表現しているように感じます

ただ、わかりやすい表現は本当に少なくて
言葉での説明は全然無い
言葉での好きだの愛してるだのは全く言わず
あくまで表情などの演技で伝えてる

だからこそ嘘っぽくないと言うか
この2人が生きた人間なんですよね
2人の関係性の深さもハリボテではなく
本物のように感じてきます


他のキャストの
高橋一生や北村一輝なども存在感を放っていて
とても魅力的な人物に仕上がってましたし

村上虹郎なんてそんなに登場しないし
そこまで重要なキャラではないけど
すごく印象に残りますよね
沖田総司にもハマってました

江口洋介が演じる斎藤一も今まで以上にカッコよかったし
自然な牙突もすごくいいですね
1作目の牙突よりこっちの方が絶対にいい


この映画を観て思ったのは
たぶんはじめから追憶編を実写化したかったのかなと

本作に対する気合いの入りようは
今までとは圧倒的に違うと感じました

追憶編だけやると意味がわからないから
ここまで全部作ってきたんじゃないかな
と思ってしまうほど

ラストが1作目の冒頭に繋がりますけど
これを見ると
最初からそれを見据えて作っていたのかな
なんてことも思わされます

何よりも本作を最後に公開したのがそれの表れかもしれません

普通ならこのエピソードの後に
縁との戦いを描いた方がわかりやすいし納得できるんですよ
でも、あえてそれをしてないんですよね

ってことは
やっぱり本作を1番やりたかったし1番見せたかったんじゃないでしょうか

実際、この追憶編は実写に向いているエピソードだと思いますし
それを最高の形で実写化することに成功していました

 

本作は原作を忠実に再現するだけではなく
映画としてアップデートしています
実写だからこそできる表現のこだわりに
実写化することの意義を感じさせられました

だから原作を超えるような作品に仕上がったんだと思います
実写版「るろうに剣心」の素晴らしい締めくくりでした

 


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