何もかもが滑稽

何もかもが滑稽

映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「パプリカ」感想 夢の映像化が素晴らしい カオスなのにリアル

f:id:kiitsu01:20191207001015p:plain

どうもきいつです

アニメ映画「パプリカ」観ました

SF作家の筒井康隆の同名小説のアニメ化作品
夢に入り込み夢を犯すテロリストに
立ち向かうパプリカの活躍を描いた
2006年のSFファンタジー映画

監督は「千年女優」「東京ゴッドファーザーズ」
などの今敏です

 

あらすじ
千葉敦子は時田浩作の発明した
夢を共有する装置DCミニ使用するサイコセラピストで
夢の世界ではパプリカとして活動していた
ある日、DCミニが研究所から盗まれてしまい
DCミニを悪用して他人の夢に強制介入し
人々の精神が崩壊させられる事件が発生する
敦子たちは犯人の正体と目的を探るため動き出す

 

感想
夢の表現がすごい
夢を映像化するとこうなるだろうな
と思わされる
めちゃくちゃな世界なのにリアルに見える
アニメだからこそできる表現だと思いました
でも、ストーリーに関してはちょっと微妙に思う


この映画はすごく好きな作品なんですが
爆音映画祭という映画館の企画で
この「パプリカ」が上映される
ということだったので
観てきました

本作を映画館で観るのは初めてでしたし
爆音上映も初めてだったのでとても楽しみでした


この映画自体を観るのもかなり久しぶりだったので
あらためて観ることで新しく見えてきたことが
あったり
良いとこ悪いとこにも気づけた
そして、爆音上映の良さも知れました

 

まず、爆音上映の話をすると

通常の映画用の音響セッティングではなく
音楽ライブ用の音響セッティングをフルに使い
大音響で映画を観るというものです

全国各地の映画館で期間限定で
様々な映画が上映されています

僕は大阪のなんばパークスシネマで観てきました


爆音上映で観る前は
ただただデカい音で上映するだけなのかな?
とか思っていたんですが
実際に体験してみると
さすが音楽ライブ用の音響を使ってるだけはあり
ただデカいだけの音ではありませんでした

確かに音はすごくデカいんですが
うるさくないです

すごく体に響くような音でした
特に低い音はずしんと体に響く

そして、音が大きいので
逆に静寂が際立って静けさの見え方も
また違ってきます
音のメリハリがすごく効いていました

小さい音の聞こえ方もよりはっきり聞こえて
セリフの途中の息づかいなんかも聞こえてくる

ただデカい音を楽しむだけでなく
音をより繊細に聞くことができたと思います


爆音上映に相性が良いのは
ミュージカル映画などの
音楽に重きを置いている作品や
爆発シーンなどの派手な場面が多くて
音にメリハリがあるような作品が
合っているんじゃないでしょうか

実際に取り上げられている作品も
そんな映画が多いですしね

で、本作の場合は
平沢進の独特な音楽が世界観を
彩っている作品でもあるので
この上映方法は相性が良いほうだったと思います

 

そして、ここからは「パプリカ」の話

とにかくこの映画は映像が素晴らしいです

アニメのクオリティが高いのはもちろんですが
映像表現のセンスがすごい

夢を夢らしく表現するという
なかなか難しいことをやってのけている

こういう夢を取り扱った作品って
ただカオスでめちゃくちゃな世界の表現だったり
逆に現実の延長線上で夢と現実どちらかわからない
みたいな作品が多いと思いますが

この映画の場合は
そのどちらでもないし
そのどちらでもある

カオスだけどリアルな表現をしているんです

実際に夢って
明らかにおかしなことが起きていたり
支離滅裂な状況だったとしても
夢を見ている時はそれを現実だと思っているし
なにも疑問に思っていないじゃないですか

この映画はそれを表現できていると思います


本作でも夢の中は規則も全く無く
めちゃくちゃな世界観なんですけども
そのめちゃくちゃな世界をとてもリアルに
描いています

言ってしまえば
デッサンが完璧な抽象画
みたいなイメージ

矛盾しているし
自分でも何言ってるかわからないですけど
そういう事なんですよ


明らかにおかしい世界で意味不明なんですが
なんか説得力がある

なんでそんな事ができているのか考えてみると

人物、物の動きや空間の表現などが
理にかなっているからだと思う

この作品の表面的な部分は
すごくカオスでめちゃくちゃな表現が多いんですが
実は動きや空間表現は全然現実離れしていない

むしろ、めちゃくちゃ現実的に描かれています

根本的な部分が全く崩れることなく
現実的な表現を徹底しているから
表面の部分を崩したとしても
違和感なく納得できてしまうんだと思います


これは映像だけでなく
セリフの部分も同じで
島所長のカオスなセリフがとても有名ですけど
これもめちゃくちゃ言ってるようで
文法的にはちゃんとしてるんですよね

言葉をごちゃまぜにしてるだけじゃなく
一応規則にのっとってはいる
だから意味があるようにも聞こえるんです


この映画はカオスなだけに見えるけど
芯の部分は秩序に忠実に作られているんだと思う

それがあるから
まるで夢のような世界を表現できたんじゃないでしょうか

 

この映像表現や世界観を生み出せているだけで
素晴らしい作品ではあるんですが
映像と世界観に全振りの作品でもあると思うんです

正直言って
ストーリーはちょっと微妙…
中途半端だと思います

説明不足と言うか
投げっぱなしのことが多かったりする

敦子にとってパプリカの存在とは何なのか?
現実と夢の世界が交わったのはなぜ?など
疑問に残ってモヤモヤする

特に主人公であるはずの敦子の描写が薄すぎる

敦子の感情や成長みたいなのが
あまり伝わってこないし
敦子と時田の恋愛描写も唐突だと思う

パプリカも敦子にとってどういう存在だったのか
全く説明がありませんし

全体的に説明不足で
敦子に掴み所が全然無いんですよ
なので感情移入もいまいちできない


それと、サスペンス要素もメインの
作品ではありますが
そこもやっぱり弱いですよね

黒幕は誰なのかを追っていく話で
そこが原動力の物語です
でも、そこにあまり興味をそそられない
それになんとなく黒幕の正体も予想つきますしね

誰が犯人か興味を持てないから
真相への好奇心も無い上にスリルも感じれない

で、最終的にはなんかよくわからなかったりします
最後の展開も強引ですし敵の目的もなんか曖昧
この物語はなんだったんだ?
って感じです


結局、人物描写が雑なんだと思う
主人公に魅力を感じなければ
敵にも魅力を感じれない

だから、ドラマも生まれないし
ストーリーに面白みが無かったです

そこがもったいないですよね
せっかく素晴らしい映像表現なのに…

 

とは言え
ストーリーの弱さを補えるくらいの
素晴らしい映像だったのは間違いないです
それだけでこの作品を好きになれる

平沢進の音楽も素晴らしいですし
世界観が本当に魅力的

映像や雰囲気を楽しむという点では
最高の作品だったと思います

 


パプリカ [Blu-ray]