何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「花と雨」感想 映像から感情が伝わる ちょっと説明不足な気もするけど

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どうもきいつです


ドラマ映画「花と雨」観ました

ヒップホップアーティストのSEEDAが2006年に
発表したアルバム「花と雨」を原案に
SEEDAの自伝的なエピソードを交え
1人の青年の成長物語を描いた青春ストーリー
周囲に馴染めない若者がヒップホップによって
困難な現実を乗り越えようと奮闘する姿が
描かれます

「Perfume」「水曜日のカンパネラ」などの
ミュージックビデオを手掛けてきた
映像ディレクターの土屋貴史が
本作で初めて長編映画監督を務めます

 

あらすじ
幼少期をイギリスのロンドンで過ごした吉田は
閉鎖的な日本の空気に馴染めず高校生活を
過ごしていた
いつしか学校と距離を置くようになり
ヒップホップと出会った吉田はラップを通じて
自分を表現する場所や仲間を見つけていく
しかし、厳しい現実に自分を見失っていき
情熱を失った吉田はただのドラッグディーラに成り果てていく

 

感想
なんとなくいろんな感情が伝わってくる
映像にとてもこだわりを感じる作品でした
アルバムを聴いてるかどうかで見えかたが違うかも
ただ、ちょっと説明不足でわかりづらく
置いてけぼりをくらう

 

僕はSEEDAの曲が結構好きで
「花と雨」もかなり好きなアルバム
そんな「花と雨」を原案に映画化されると知り
とても期待していた作品です

SEEDAの生い立ちなどはそんなに詳しくなく
軽く知っている程度で
大ファンと言うほどではありませんが

でも、まあまあ好きな方だとは思います

 

映画の内容は
ほとんどSEEDAの自伝映画だと思います

彼がどう生きてきたか
ヒップホップとどう向き合ってきたか
そんなものを描いている映画

ただ、どこからどこまでが事実で
どの程度フィクションなのかはわかりません
それなりに脚色はされていると思いますし

全体的にはリアルな作風だとは思いました
事実を基に作っているからこそ
現実味のある物語に感じれる


若さが故の意地やプライド
自分の思い通りにいかないから
くすぶってしまう様子
あの時こうしとけばよかったという後悔など

画面を通していろんな感情が伝わてきました


スト-リーに関してはかなりシンプルだと思います
よくある音楽系のサクセスストーリーって感じで

辛い現状から抜け出そうとあがく姿や
そんな中で様々な過ちも犯してしまいますが
最終的にそれらを乗り越えてチャンスを掴む
みたいな内容

音楽系の映画でもヒップホップを取り扱った作品は
こんなストーリーが多いですよね
最近の作品では「WALKING MAN」「ガリーボーイ」
なども似たような内容でしたし

そんなシンプルでありがちなストーリーでは
ありますが
SEEDAの実体験を基に作られているので
リアリティを感じることができましたし
そこから、ヒップホップとはどういうものなのか
という部分も描かれています


特にヒップホップとは?
という部分は主人公の吉田を通して
しっかりと描かれていると思った

よく言われがちな
日本人のラップは本場のマネをしているだけ
日本人は恵まれていて
本当の貧困層なんていないから所詮お遊び
みたいな日本語ラップの偏見あるある

今の時代はさすがにそんな偏見も薄れてきて
古臭い考えにはなりつつあるとは思いますが
それでもそんな考えの人はまだ多いと思いますし

で、本作は
そんなことへの回答を描いていると思います

吉田は海外育ちというのもあって
日本のラップシーンを見下していたりするし
そこに関するプライドはとても高い
その反面、自分の恵まれた家庭環境に対して
コンプレックスを持っていたりもする

自分は本物なんだという気持ちと
自分なんて所詮偽物なんだという気持ちの
葛藤があったりするわけです

そんな中で、自分の境遇や人との出会い
過ちを犯してしまったり
取り返しのつかない後悔を抱いたり
そんな経験を経て
自分にとってヒップホップとは何か
ということに見つめ合っていく姿を見せて行く

吉田のそんな感情や葛藤や成長を見せることで
よくある偏見への回答にもなっていると思います

ヒップホップの本質とはこういうことだ
ということがこの映画を観れば伝わってくると
思います

 

そして、この映画は
SEEDAのアルバム「花と雨」を原案に
作られているということもあって
アルバムとリンクしている部分も多くある

この映画を観る前からアルバムを聴いていたり
逆に映画を観た後にアルバムを聴くと
映画単体で観たときと違った見え方もすると思う

このシーンはあのリリックの部分だなとか
この会話はあれだなとか
この感じははあの曲とリンクしてるなとか

アルバムを聴いていると
映画とリンクしている部分にいろいろと
気づく事ができたりもするので
そういった楽しみ方ができる映画だとも思います

曲を聴いてから映画を観れば少し見え方が
変わってくると思いますし
逆にこの映画を観てからアルバムを聴けば
曲の印象が違って聴こえるとも思う

そういう点でも面白い作りの作品だと思います
映画とアルバムが相乗効果で変化していく
みたいな作風はあまり観たことないし
新鮮な気持ちでこの映画を観ることができました

 

そして、本作は映像にかなりこだわりを感じる
作品でした

全体的に少し抽象的な感じではありますが
映像からなんとなくの感情が伝わってきます

演出や画面の色彩、カメラワークなど
そういうのが主人公の吉田の感情とリンクしていて
具体的ではないけどもなんとなく伝わってくる

この映画の作風は
全体的にセリフや説明などの言葉が
極力省かれていて
少し掴み所が無かったり状況が把握できない部分も
多々ある作品なんですが

映像の表現でその部分はある程度
補えていると思います

MVなどを作っていた人によくありがちな
独りよがりな自己主張とかもあまり感じなくて
独特な映像表現にも意味が込められてるように
感じたし
そこから表現したいものがちゃんと伝わってくる

センスの押し売りにはなっていなくて
観客に伝えようという姿勢は感じられました


とは言え、さすがに説明不足過ぎなのも否めない
全体の流れとしては理解はできるんですが

要所要所を見て行くと
これどういうこと?
なんでこうなってるの?
一体何が起きてるの?
という、よくわからないシーンがすごく多い

SEEDAのファンで彼のバックボーンを詳しく
知っている人なら
もしかしたらこの情報量でも何が起きたのか
わかるのかもしれませんが

僕が観たところでは
正直、置いてけぼりをくらった感じです

別のシーンに急に飛んだり
めまぐるしく映像が展開していったり
感情の表現としては伝わってきますけど

実際に何が起きてるのかという点で見ると
ゴチャゴチャしていてわかりづらかったりします


あと、リアル感を求めたことの弊害なのか
セリフがすごく聞き取りづらかったです

登場人物がみんなナチュラルなトーンで
会話を繰り広げるので
基本的に声は小さくてボソボソしてるし
滑舌もそこまではっきりとした喋り方ではなく
何言ってるのかわからないシーンが多かった

聞き逃してしまった
って言うのが多くて
そこが少しストレスに感じてしまいました

 

キャストに関しては
みんなすごく良い感じだったと思う
リアルな雰囲気もありますけども
キャラクター性も感じられるような人が多かった

特に吉田を演じる笠松将はとても良かったと思います
あのふてぶてしい雰囲気とかなんかリアルですよね
実際にあんな人いそう

ふてぶてしいしいけ好かない感じの人間なのに
どことなく愛嬌があって憎めなかったりもしますし
なんか応援したくなってしまう
最終的にはなんか好きになります

気持ちの部分でも共感させられてしまったり
すごくナチュラルだけど
心に刺さるような演技をする人だなと感じました


他の役者たちも魅力的な人が多かったし
それも相まって映画全体にいい雰囲気を
生み出せていたと思います


ちょっと説明不足で理解しがたい部分も
多い映画でしたけども
伝えたいことは伝わってきたし
映像のセンスもすごく感じました

この映画を観ることで
SEEDAの曲の良さにもあらためて気づくことが
できたと思います

 


花と雨