何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「酔うと化け物になる父がつらい」感想 想像よりも暗く重い ちょっと何を伝えたいのかわかりにくいかな

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どうもきいつです

ドラマ映画「酔うと化け物になる父がつらい」観ました

菊地真理子の実体験に基づいたコミックエッセイを実写映画化した作品
アルコールに溺れる父親とその家族の姿を赤裸々に描いた物語です

「ルームロンダリング」などの片桐健滋が監督を務め
主演は松本穂香と渋川清彦です

 

あらすじ
毎日酒に溺れる父と新興宗教はまる母を持ち
少し変わった家庭環境で育った田所サキは
普段はおとなしいのに酔うと化け物のように変貌する父の行動に悩まされ
いつしか自分の心を閉ざして過ごすようになっていた
そんなサキだが、明るい妹や学生時代の親友に支えられながら
つらい日々を漫画として笑い話に昇華することで
なんとか毎日を生きていたが…

 

感想
酒に酔う父親を面白おかしく描いた映画だと思っていたら
想像してたより暗くて重い映画だったので驚いた
面白かったかと言うとちょっと微妙
結局、何を見せたい映画なのかよくわからなかった

 

原作のことは全く知らず
なんとなく予告を見て気になったので
映画館まで観に行ってきました

予告を見た時点では
酒に酔う父親を面白おかしく見せるコメディー
最後に感動のいい話でお涙頂戴
みたいな映画だと思ってたんですけど

実際に観ると
すごく暗くて重たい
かなりネガティブな内容の映画

予告では感動的な映画みたいな宣伝のしかたをしてましたけど
ラストに関しては感動的なのかもしれないけど
なんかネガティブな暗い終わりかたで
ちょっと重たい気持ちになりました


思ってたのと違うからダメなのかと言うと
全然そんなことはなくて
正直、そんなことはどうでもいい


肝心なのは
この映画が面白いのかどうかということ

で、個人的にはあまりハマらなかった
別につまらない映画だとは思いませんが
特に何かすごくよかった部分があったのかと
考えてみても
いまいちこの映画のここがすごい!!
って部分は思い浮かばない


全体的に中途半端でどっち付かずな気がしたし
この映画のメッセージも
誰に向けられてるのか?
何を伝えたいのか?

最後まで観てもあまりそこが見えてこなかった

 

まず、最初にこの作品がとても暗い映画だと言いましたが
完全に暗い映画ではありません

特に序盤なんかは酔っ払った父親をコミカルに描いていたりもする
それ以外でも所々にコミカルな演出があったり
笑わそうとしてるんだろうなってシーンはあります

ただ、シリアスな部分とコミカルの部分の
バランスが悪いような気がするんですよね

いまいちこの映画をどういう気持ちで観ればいいのか定まってこないんです

笑えばいいのか?
暗い気分になればいいのか?

全体の印象は暗いんですけども
実はポップにしようとしているところも結構多い

冷静に観てみれば
シリアスとコミカルが半々くらいになってるように思えます

だから、どっち付かずの中途半端な作品に
なってしまっていると思うわけです

この映画は
暗い映画なら暗い映画
コメディーならコメディー
と、どちらかに振り切るべきだったと思う


それと、どうしても気になってしまった演出が
心の声を吹き出しで表現するという部分

これは、最終的には意味のある演出ではあるんですが
それにしても、この吹き出しが出てくる度に
暗い雰囲気がぶち壊されてしまう
せっかくいい感じで暗くネガティブな空気かんが生まれてきても
吹き出しが出てくることによって
これまでの雰囲気作りの積み重ねが崩れてしまう

でも、この吹き出し演出の全てが悪だとは思っていなくて
逆にこの吹き出しをもっと多用していたほうがよかったんじゃないかと思うんですよ

この吹き出しに関しても中途半端で
中途半端にちょくちょく出てくるから地味に気になって邪魔に思ってしまう

でも、思いきって吹き出しをうざいくらい
終始使いまくっていたら
それはそれで面白い表現になってたと思うし
この吹き出しの必要性や意味ももっと強くなるはず

最後の吹き出しが崩れるシーンも
さらに印象的でカタルシスが生まれると思うんです

 

そして、酔った父親の描写も
やっぱりどこか中途半端になってしまってる

嫌な酔いかたをしていますがどこか可愛げもある父親という描写が多く
この父親がそこまで嫌な父親には見えない

客観的に映画を観ている側からすると
これくらいなら許してやればいいじゃん
って思ってしまうんですよね

確かに主人公のサキからしてみれば
こんなのが子供の頃から毎日続いているわけで
そりゃ嫌にもなると思いますけど

でも、映画を観ている側からすれば
そんな時間の積み重ねは体験してきていないので
いまいちサキにも感情移入できないですし
酒に頼ってしまう父親目線からも観てるので
一体何を中心にこの映画を観ればいいのか
ちょっとブレた気持ちになってくる

酔った父親に翻弄されるサキを見せたいのか
無口だけどいろいろ抱え込んで酒に呑まれてしまう父親を見せたいのか
ここもやっぱりどっち付かずになってると思う


あと、サキに感情移入できないのは
エピソードの弱さっていうのもあると思いました

酔った父親のエピソードがどれもいまいち弱いというか
あまり化け物感がないんですよ

酔っぱらいオヤジあるあるみたいなエピソードが
最後まで続くだけ

これも毎日続いていれば嫌になるのが理解はできるけど
そこまで感情移入できませんよね

このエピソードの中でもっと酒の怖さやヤバさを
見せてほしかったですね

この映画のエピソードだけ見ても
別に酒がそこまで怖いものだとはあまり思えなかった

僕の父親も酒飲みだからあれくらいのエピソードはあるし


ちょっと否定的なことが多くなりましたが
いいと思った部分もあります

特に良かったのは親子のすれ違いの描きかた

サキと父親が最後の最後まですれ違い続け
気づいたときには後の祭り

こんなのを見ると親子のコミュニケーションの大切さがすごくわかる

全部1人で抱え込んでしまう父親と
自分の気持ちを表に出さない娘

この映画は酒がどうとかよりも
家族と向き合うことから逃げてしまった親子の
過ちの物語でもある

そう思えば
家族を描いたドラマとしては
なかなか深い内容のようにも感じました

サキの妹が酔ってろれつの回ってない父親と会話できるという
サキとの対比の表現も面白かったですし


母親が狂っていく過程の描きかたなんかにも
ゾッとさせられたりしました
酔った父親がうとうとしているところに包丁を突き立てる場面とかマジで怖かった

家族の描きかたは面白い部分がたくさんありましたし
深さを感じることもできました

 

ハマらなかったと言いつつも
心に刺さる場面もいくつかあったし
つまらない映画だとは全然思わない

吹き出しの演出も微妙に思ってしまいましたけど
挑戦的な表現でもあって好感は持てます

もっと酒の怖さは表現してほしかったですが…
でも、いい部分もいくつもありましたし
悪い映画ではないと思います

 


酔うと化け物になる父がつらい