何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「スキン あなたに触らせて」感想 普通とはなにか 美しさとはなにか 価値観の傲慢さに気付かされる

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どうもきいつです


社会派コメディー映画「スキン あなたに触らせて」観ました

奇形であるために社会から拒絶された人々を
メルヘンチックなビジュアルでコミカルに描いた
2017年スペインの作品
健常者と異なる容姿を持つ人々にとって
冷たい現実や世の中との距離感が描かれたダークな社会派コメディーです

監督は本作で長編監督デビューを果たした
スペインの新鋭エドゥアルド・カサノバ

 

あらすじ
口と肛門が逆さまになっているサマンサ、目の無いローラ、変形した顔を持つアナなど
奇形であるために社会から拒否された人々と
それを取り巻く健常者たち
そんな人間たちが独特な人間関係を築き
数奇な運命をたどっていく

 

感想
物語に掴み所がなく
面白いかどうかで言うと微妙な気がする
でも、そんな中で描かれる人間たちを見ていると
自分達の価値観が如何に傲慢なのかを気付かされた
普通や美しいということの疑わしさを突きつけられる


Netflixで配信されているのを見つけ
なんとなく気になったので観てみました

設定やビジュアルのインパクトで引き付けられたわけなんですが
実際に観てみると
いろんな意味で衝撃を受けた

とにかくクセが強い作品だと思います
人によってはホラー的な怖さを感じるかもしれないし
コメディーとして笑って見れる人もいると思う
単純につまらないと思う人もいるでしょうね

一筋縄ではいかないような映画

メッセージ性を強く感じるし
アート的に作られてる映画でもある
でも、結構笑わせにきたりもするし

そして、ストーリーはあまり無い
結局、なんの話だったんだろう?
と見終えたときに思ってしまった

全体的には掴み所がなくて
正直言って
よくわからない映画です

ファンシーで美しい背景であったり
独特の演出であったりで
雰囲気を楽しむ系の映画にも見える


感想に困るような
面白いのかつまらないのかわからない映画なんですよね

面白いと言えば面白いし
つまらないと言えばつまらない

この監督の長編デビュー作というのもあるので
荒削りな作品なのかも

 

でも、この映画を観て感じるものはたくさんある

特に普通の価値観、一般的に常識だと思っていることの
疑わしさや危うさをストレートに突き付けられてるように思う

この映画はいわゆる奇形の人々を主役に描かれます
簡単に言えば障害者ですよね

先天的に普通の姿ではない人
後天的に普通の姿ではなくなった人

そして、そんな奇形の人たちを取り巻く健常者たち

この登場人物たちを通して
如何に自分たちの考えや価値観が
傲慢で浅はかなのかを思い知らされます

 

一般的によくある障害者への考え方は

普通じゃなくて可哀そうな人
助けてあげなければならない弱い人
自分はこんな姿形になりたくない
だから、そんな弱くて普通じゃない人が頑張っているのを見ると感動する

某テレビ局の24時間なんちゃら
みたいな番組がモロにそれですよね

障害者を頑張らしてお涙頂戴
みたいなやつですよ

まあ、この番組自体を完全には否定しませんが…
社会に貢献している一面もありますしね

ただ、やっぱり僕はこういう系のテレビ番組とかは
昔からあまり好きじゃなかった

 

そして、本作なんですが
そんな固定概念をぶっ壊してくれた

それには爽快感さえ感じることができました

この映画を観てかゆいところに手が届いたような気がします


この映画は障害者を可哀そうな人間として描くのではなく
1人の人間として描いている

むしろ、この映画の登場人物たちは
普通という固定概念から解放された人たちだとも思える
普通の人たちよりも深く人生について考えてるし
自分らしさを求めている人たちなんですよ

だからこそ思い悩み自分らしく生きようと戦っている


例えば
口と肛門が逆になっている女性サマンサは
父親からはその顔を隠せと言われ
外に出れば笑われてしまったり
バカされたりしてしまう

彼女自身も普通の姿に憧れてるし
自分がおかしいと気づいている

でも、それ以上にありのままの自分で
生きていきたいという気持ちが強い人なんです

だから、自分の顔は絶対に隠すことはせずに
ひきこもることも無く外出する
インスタで自分の自撮りを公開しようとしたりもする

そんな彼女だから
父親の優しさに逆に傷つくわけです

父親はサマンサの存在を受け入れているし
彼女の幸せを願っている
普通に幸せになってほしいと思ってるんですよね

ただ、その普通の幸せというのが
サマンサにとっては一番の障害でもある

世間一般の言う普通というのは
サマンサの存在自体を否定してしまう言葉

父親が優しさで良かれと思ってやっていることは
全てサマンサを否定してしまうことなんです

健常者たちは障害者たちを自分たちの常識の世界まで引っ張ってきて
自分たちのように普通の状態に近づくことが
その人たちの幸せだと勝手に思い込んでいる

そんな、固まった価値観の危うさを
このサマンサのエピソードを観て感じました


それと、サマンサの描き方は挑戦的だと思った
障害者をイジるというタブーに挑戦してる

サマンサの口と肛門が逆になってるというのは
架空の障害ではあるものの
それをコミカルで滑稽に描いてます

インスタの自撮りが不適切だと削除されたり
スープをお尻から食べたり
ケーキのロウソクの火を消す時はおならだったり
お尻の口でアソコを噛みちぎったり

結構ギャグ的な描写が多い


いくら架空の障害だからと言っても
これを不謹慎だと思う人もいるかもしれない

ましてや実際の障害をイジってしまった日には
バッシングの嵐だと思います

でも、この腫れ物に触るような現状もどうかと思うわけですよ

ハゲやデブをイジっても笑いで許されるのに
目が見えない、足が無いをイジるのはダメ
この線引きは何なのか?

障害をバカにしたら傷つく人がいる
というのはわかります

ただ、ハゲやデブもバカにされたら傷つきますからね

障害だからイジっちゃダメ
っていうのは逆に差別だとも思える

本当の意味で差別がなくなるのは
この線引きが曖昧になったときなんだと思います

この映画はそんな線引きをぶち壊すような挑戦的なこともしてました

 

あと、顔半分が変形してしまっている女性アナのエピソードも印象深かった

アナは2人の恋人がいて
その2人を通してアナの価値観が描かれます

1人は健常者だけど普通の見た目の人を愛せない男
もう1人は火傷で顔がただれた普通の姿に戻りたい男
この2人とアナとの恋愛ドラマが描かれます

結局は
見た目でしか自分を愛していない男には愛想を尽かし
普通の姿に戻ろうとする男とは価値観が合わず分かれてしまいます

その彼女の心境は
見た目だけを愛されるのは嫌
でも、見た目を否定されるのも嫌
という複雑な感情だと思う

このエピソードでも
障害者だからと言っても価値観は千差万別で
一概に一つの答えは出せないということ

なかなか難しいですね

 

他のキャラやエピソードも興味深く
固定概念を崩すような内容になってます

美しいパステルカラーの色彩も
この物語ではとても異質で
美しさの曖昧さを感じる

この映画は美しさや幸せといった
当たり前と思い込んでいる価値観をぶち壊すような作品でした