何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」 感想 ワンカット風の曖昧な世界が面白い

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どうもきいつです


ドラマ映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」観ました

第87回アカデミー賞作品賞をはじめとする
数々の映画賞を受賞した2014年の作品
かつてヒーロー映画で一世を風靡した落ち目の俳優が
再起をかけてブロードウェイの挑む中で
不運と精神的ダメージを重ねていく姿が描かれます
まるでワンカットのような映像が特徴の映画

監督は「バベル」などのアレハンドロ・G・イニャリトゥが務め
主演は「バットマン」シリーズなどのマイケル・キートン


あらすじ
かつてヒーロー映画「バードマン」で
世界的な人気を誇った俳優リーガン・トムソンは
今は落ちぶれ自身が脚色を手掛けた舞台に再起をかけていた
しかし、出演俳優が大怪我で降板し
代役にマイク・シャイナーを迎えるが
彼の才能に翻弄されるリーガンは次第に精神的に追い詰められていく

 

感想
一味違ったワンカット風の映像がとても不思議な魅力を醸し出している
現実と空想が曖昧な世界には
観ているこっちも翻弄されました
追い込まれ崩れていく人間を上手く表現できている映画だと思います

 

以前観たことがありましたが
久しぶりに観てみました

前に観たときにも思いましたけど
映像が面白いですね

前編ワンカット風の映像は独特の空気感を生んでいてとても魅力的だと思います

普通はワンカットって臨場感を生むために
使われることが多いと思います
ホラー映画やアクション映画とか
その中に入り込む感覚を味あわせてくれる手法だと思う

本作のような映画でワンカットというのはめずらしいですよね
ドラマ重視の内容でワンカットにする必要なんて無いようにも思えます

でも、このワンカット風の演出で没入感が生まれてますし
何よりもこの映像で主人公の不安定な精神状態を感じることができる

空想と現実が入り乱れる映像には
観ている側も何がなんだかわからなくなってくる
特に中盤から終盤にかけては
明らかに非現実的なものが現れだして
これは普通の世界を描いている作品ではないんだな
というのがわかってくるんです

序盤ではリアルなドラマを描いているようにも思えますが
終盤に近づくにつれ
現実の出来事を描いているというより
主人公リーガンの精神面を描いているように思えます

それを表現するにおいて
ワンカット風の映像が上手く機能しています

普通にカット割りされて映像が切り替わっていく映画だったら

これは現実
これは妄想
みたいに境界線がはっきりわかりやすくできてくると思います

ただ、本作の場合は前編ワンカット風で
全て地続きに最後まで映像を見せられる

その中で現実的なものから妄想のようなものまで
同じ画面の中に詰め込まれているので
現実と空想の境界線が曖昧
観ていて何が本当のことなのかもわからなくなってきます


リーガンは超能力的な力を使えるんですけど
はじめはそんな能力を持った人の物語なのかと
思いながら映画を観ています

でも、途中からは
この超能力って本当なの?
と疑問に思えてくる

地味に違和感のあるシーンが積み重ねられ
終盤に差し掛かる頃にあのぶっ飛んだ映像を見せつけられることで
一気に今まで現実だと思ってたことが崩れ落ちていく感覚

ここからは本当に何がなんだかわからない状況になっていきます


これは「ブラック・スワン」にもすごく似てますよね
現実と妄想の曖昧な世界を描いていているのは
共通していますし
主人公の不安定な精神状態を映像で表しているというのも同じです

成功するために苦悩するって点でも
ストーリーもなかなか似てます


「ブラック・スワン」とやってることは変わらないですが
ワンカット風という手法を使った映像は
他では見れない魅力を感じれて
とても面白く観ることができました

 

それと、この映画は映像が面白いだけでなく
ストーリーもなかなか心に響くものがある

落ちぶれて枯れてしまった俳優のリーガン
彼が再起をかけて挑戦する姿と
それでも上手くいかずに精神が不安定になっていく様子
家族や周りの人間関係も上手くいっていなかったり

そんな哀愁が漂っていいるリーガンの人生に引き込まれていきます
そして、どこか共感もできる


こんな感じに人生が思い通りにいかず落ちぶれて腐ってしまってるけど
それでもどうにか理想の世界に近づこうと
足掻いている人間の姿は
本当に心に刺さると言うか

なんか自分に重なる部分がたくさんあって
他人事とは思えなくなってくるんですよね…


でも、これは僕だけではなくて
多くの人が感じていることだとも思います

みんな何かしら悩みを抱えて
よりよい方向へ向かえるように足掻いているはず

そんな経験がある人、今そんな状況にある人が
この映画を観たらすごく心に刺さると思います

 

ラストに関しては

希望を感じることができる結末なんですが
なかなか掴み所がなくて解釈が難しい

単純にこの映画を観れば
普通に舞台が成功してリーガンが求めていたものが手に入った
みたいな終わりかたに見えるけど

現実と妄想が入り乱れている作品でもあるので
素直にそう受けとることもできない

そもそも、リーガンが生きていたことに
すごく違和感があります

だって明らかに銃で頭をぶち抜いていたでしょ

なのに鼻を撃ち抜いて怪我しただけになってる
しかも、鼻が無くなったとか言ってるわりに
かなり綺麗にもとに戻ってたりしますし

でも、結局は
リーガンが死んだかどうか
俳優として成功したかどうかは重要ではなく

リーガンが最終的に行き着いた境地に意味があると思う

舞台を成功させスターとして返り咲くために苦悩し
家族との関係性や抱える問題に苦悩し
それと向き合うことで成長して
でも、それによって精神が崩れていく

それを経ることで
最終的には舞台で演じる役と完全にシンクロして
本物の銃で頭を撃ち抜くという
見ようによっては完全に壊れてしまった人ですけど
俳優として最高の境地に達したようにも感じることができました

この境地に行き着くことができて
ある意味、彼は満足のいく人生を全うできたのかもしれません


これもすごく「ブラック・スワン」に似てますよね

自分の苦悩の人生が
最終的に演じる役の最高のエッセンスになる
そのために命を燃やすというところも
かなり共通してます


「ブラック・スワン」もとても好きな映画なので
個人的にこんなタイプの映画が好みなのかもしれない

少し暗い内容の作品ですがどこか希望も感じれて
自分も命を燃やしてそんな境地に達してみたいと
思っているのかもしれません

 

ちょっと暗い内容の作品なので
好みが別れそうな気もしますが
ワンカット風の映像はとても面白いですし
そこから生まれる現実と空想が入り乱れる曖昧な世界は
とても魅力的です

この映像だけでも
本作を観る価値があると思います

 


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