何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「田園に死す」感想 よくわからんけど独特な世界に引き込まれる

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どうもきいつです


ファンタジー映画「田園に死す」観ました

歌人の寺山修司が自身の同名歌集を基に映画化した1974年の作品
自伝的な要素がある作品ですが
劇中劇が用いられたり幻想的な表現が多く見られます
先行して刊行された歌歌集の短歌が映画の中でも朗読されます

監督、脚本を務めるのも寺山修司です

 

あらすじ
青森県の恐山の麓の寒村で
父親を亡くした少年が母親と2人で暮らしていた
母親との生活に嫌気がさしていた少年は
ある日、村にやって来たサーカス団から遠い町の話を聞かされる
そして、隣家の憧れの女性から
一緒に村を出ようと持ちかけられ村を出ることを決意する

 

感想
支離滅裂でよくわからない映画
一体どういうことだよ?
と疑問の連続で訳がわからなくなってきます
でも、独創的な世界観はとても魅力的で
映画の中に引き込まれました
最後まで見入ってしまう映画です


以前おすすめしてもらったんですが観れておらず
たまたまアマプラで配信されているのを見つけて観てみました


とにかく掴み所のない映画でしたね
ストーリーがよくわからないし
映像はシュールで奇抜

しかも、すごく哲学的なものも感じる映画で
ちょっと難しくもあります

だから、観終えた後はとてもモヤモヤしてしまいます
なんかよくわからないんですよね
意味不明です

独特すぎる
クセが強すぎる映画


どう感想を書けばいいのか…
そもそも、この映画を説明することすら難しいかも

意味深な演出や映像の描写がとても多くて
それらに意味が込められてるように思えるんですけど
それが一体何を意味しているのか…

とても難解


ストーリーに関しても支離滅裂で
どこを目指している物語なのかが一向に見えてきません

終着点はどこなのか?
どうなれば終わりなのか?
映画を観進めて終盤に差し掛かってもそこが見えてこない


結局この映画、意味不明なんですよ
何がしたいのか
何を伝えたいのかが謎

面白いか面白くないかで言えば
確実に面白くない映画だと思います


でも、すごく魅力的な映画なんですよね
意味不明だけど見入ってしまう
飽きずに最後まで観れるんですよ

この独創的な世界観は唯一無二だと思う
この世界はこの映画でしか観ることができないんじゃないでしょうか


そして、散々意味不明と言ってきましたが
この映画には確実に意味は込められています
難解だけど作者の哲学が溢れている

と言うか、この映画自体が寺山修司の頭の中を映像化した作品なのかもしれない

抽象絵画のように支離滅裂で掴み所のない作品ですけど
伝わってくる何かは感じることができます

この映画は狙っていろんな奇抜なことをしていると言うより
作者の感覚だけで作られてるのかもしれないですね
頭に浮かんだものを映像として残しているような

だから、夢のような妄想のような
何が現実で何が空想か
未来や過去の境界線も曖昧で
真実と虚構もごちゃ混ぜになっている

でも、そんなカオスでめちゃくちゃな世界の中に
寺山修司の哲学や思想がしっかりとあって
彼の作家、芸術家としての葛藤やこだわりなどが
これでもかとこちら側にぶつけてきてるような作品

特に印象的なのは
作品として自分の過去を美化することに思い悩む
という主人公の葛藤

この作品の中でも一番重要な要素だと思いますが

で、映画の中でその答えが見つかるのかというと
全くそんなことはなく
結局、最後まで答えは見つかりません

てか、答えなんて無いようなことで
作者自身もそれがわからないから
映画としてこれを表現したのだと思う

表現することで、その問いに向き合うことができて
答えが見つからなくとも
何か真実に近づけるのだと思います


そして、この映画を観た人たちは
その難解な問いかけに
それぞれが考え、それぞれが何かしらを見つけることができるんじゃないでしょうか

明確な答えは存在しないけど
考えることに意味があるんだと思います

考えることの先にあるのが芸術として作品を遺すことで
この映画はその形の一つだと思う

 

そして、哲学的で難解なだけでなく
やっぱりこの映画の魅力は溢れ出るセンスだと思います

ただ頭の中を映像化するだけなら誰でもできて
全然魅力なんて生み出せないと思うけど
本作は唯一無二の発想力の作品です

これは面白い映画を撮ろうとする人にはできないですよ
面白さなんてはなから考えず
とにかく表現することを重視しています

そして、その映像センスが本当に素晴らしい
世界観の作り方や色彩、造形など
映像の見せ方や演出も
全てが斜め上の方向

自分では全く想像できないようなものが
次から次へと見せつけられる

何より、あえて奇抜なことをやってやろう
というのが全く感じられない
ナチュラルにこれをやってると思うんですよね

寺山修司はヤバい人なんでしょうね


それに、奇抜なだけでなく
なんかカッコいいシーンも多いんですよ

劇中劇が終わって現実に移ったセピアな色調の映像で
タバコを吸いながら主人公と評論家が会話するシーンとかすごくカッコいい映像です

終盤の過去の自分と将棋を打つシーンは
すごくカオスで意味不明だけど
魅力しかないすごい映像


ラストシーンなんてカッコ良すぎる
よくあんなラストできますよね

普通なら怖くてあんなことできない
それをやってしまうのが本当にクール
あのラストシーンは脳裏に焼き付いて一生忘れないと思います

 

他にも音楽も独特で美しく
そして少し不気味
この世界観とマッチしていて
より映画に引き込ませてくれました


アングラなものなんかも描かれていますし
かなりダークで少しホラーな雰囲気も醸し出していたり
ドロドロとした人間関係が描かれ
気持ち悪さもあったりします

でも、この作品からは純粋さを感じることもできたりして

本当になんなんでしょうか
掴み所が全然ないのに
ビシビシと熱い何かは伝わってくる映画です

 

かなり昔の映画なのに斬新でとても刺激的
支離滅裂なのになぜか引き込まれてしまう
謎の魅力満載の映画でした

こんな映画は唯一無二ではないでしょうか

意味不明でつまらないと思う人もいるかもしれないけど
絶対に観て損はない映画だと思います

 


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