何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「ルース・エドガー」感想 考察が難しい いろいろと心に刺さる

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どうもきいつです


サスペンス映画「ルース・エドガー」観ました

17歳の高校生ルース・エドガーの知られざる内面に迫り
彼と周囲の人々の思惑が交錯するサスペンスヒューマンドラマ
J・C・リーの戯曲「Luce」を原作としている作品です

監督は「クローバーフィールド・パラドックス」のジュリアス・オナーが務めています

 

あらすじ
白人の養父母と暮らす黒人の高校生ルースは
アフリカの戦火の国で生まれ過酷なハンデを背負っていたものの
それを克服し、文武両道で他の生徒からも慕われる
模範的な生徒として称賛されていた
しかし、あるレポートをきっかけに
アフリカ系の女性教師ウィルソンと対立するようになる
彼女はルースが過激な思想を持っているのではと疑い
それがルースの養父母にも疑念を生じさせていく

 

感想
人間の危うさを感じさせられる映画
表面的な差別問題というよりも
もっと根本的な部分に切り込んでいると思う
ただ、考察が難しい
なかなか消化しきれません

 

以前からとても気になっていた映画で
観に行ってきました

なかなか感想が難しい映画
ちょっとつかみ所がなくて
この映画をどう受けとればいいのか難しい

人によってこの映画に抱く思いは違ってくるかもしれません
明確に1つの答えが提示される作品ではないです

本作を普通のサスペンス映画として観てしまうと
なにこれ意味わからんつまらん
と思ってしまうかもしれませんね

謎がたくさん散りばめられているけど
結局、その謎は全く解消されず
最後まで謎のまま

犯人は誰だったの?
ルースは何を考えているの?
それぞれ登場人物の過去には何があったの?

疑問がたくさんある映画なのに
その疑問が疑問のままに終わっていく

ただ、この最後まで謎だらけの作風は
あえてやってるのは明らかで
そこには意味が込められている

そんなことを考え出すと
頭のなかがぐるぐると回って
考えを巡らせてしまう映画

そして、なかなか答えにたどり着けません


僕がこの映画で1番感じたのは

明確な判断材料が無いにも関わらず
なんとなくそれっぽいという理由だけで決めつけてしまう
そんな人間の危うさ

そこがかなり重要なポイントだと思う

それが人種差別やさまざまな問題に繋がってくる
人間社会の根本的な問題点だと思わされます


さまざまな謎を散りばめて
結局、何もかも解消されず意味不明な映画なんですけど
実はその謎の真相なんかはどうでもよくて

この映画を観た人間が
ルース・エドガーという人物をどう思うか
そこの部分に意味がある


この映画の作りはかなり意地悪で

ルース・エドガーの正体は何なのか?
事件を起こしたのは誰なのか?
というメインのストーリーになっていて

単純に映画を観ていると
ルースが普通にヤバいやつで危険人物に思えてくるし
事件を起こした犯人は絶対にルースだろ
と思ってしまいます

と言うか、ルースがヤバい奴、事件の犯人と
思わせるような作りになっている
ルースを怪しく描いているわけです

でも、実はこの映画の中で
明確にルースが犯人だという証拠は全く無くて
ルースの内面や本音なども全く見せられない

ルースが友達と意味深な会話をしてるようなシーンがありますけど
その内容は全くわからないし
レポートの内容の真意も明らかにならない

そもそも、ルースの過去に何があったのか
その真相がすごくあやふやだったりします

この映画を最後まで観ても
ルースが何者かは全く不明で終わってしまうんですよね


で、この映画を最後まで観た人は
たぶんルースを犯人だと思うはず
ルースが危険人物だと感じてしまうはず

でも、そう思ってしまった時点で
完全に手のひらの上で転がされてるんですよ

ほれ、見たことか
と言わんばかりに


なんか怪しいって理由だけでルースを犯人と決めつけてしまう
そこに人間の危うさがある

この映画ではルースを犯人っぽくは描いてるけど
犯人としては描いていない

その上、内面や過去も描かれていないルースには
感情移入なんか全くできない
ルースは自分たちにとって赤の他人なわけで

その正体不明の人物を見たときにどう思うかは
観客自身に委ねられます

この映画で観客目線の登場人物は
ルースに疑惑を抱いている女性教師ウィルソン
彼女が観客の気持ちを代弁している

と思わせてといて
実は誘導している

彼女は疑惑だけでルースを危険人物だと断定してるけど
そこには証拠なんて全く無くて
ただの彼女の独断、決めつけ

でも、観客の自分達はそこに流されてしまってるのも事実
彼女の存在でよりルースが怪しいと思わされる

ルースのなんか怪しい言動
ウィルソンの疑惑だけの主張

そんな曖昧な判断材料だけで
いつの間にか観ている自分達もルースの両親と同じように
なんかルースがヤバい奴かも、犯人なのかもしれない
と思わされていきます

何もわかっていないのに
ルースという人物をわかった気になっている
わかった気でいるけど実はわかろうとすらしていないことに
後々に気づかされていました


これが現代社会の問題点を浮き彫りにしているように思えます
特に差別問題ですよね

黒人だからなんか怪しい
のような
○○だから○○だろうという決めつけ

1つのくくりの中に1人の人間をはめこんで
個人としては何も理解していないのに
なんとなくこんな人間だろうと
なんとなくで判断する

そして、それの積み重ねが
人種差別などに繋がっていくと思うんですよ

黒人だから、韓国人だから、女だから、障害者だから
そんな曖昧なくくりで
1人の人間を1人の人間として見ない
ここが根本的な問題点だと思うわけです

1人の人間をちゃんと理解して
個人として向き合うことができれば
人種差別なんて起きるわけがないんですよ


で、これが他の国の話で
日本は関係ないじゃんと思うかもしれないけど
日本こそそんな問題が身近で起きてる

その代表格が
SNSでのバッシング、誹謗中傷問題ですよね

これこそ、この映画で起きていることそのもので
メディア、マスコミなどの一方的で曖昧な判断材料を鵜呑みにして
個人がどんな人間なのかを決めつける

実際はその人物がどんな人間なのか知りもしないのに
知った気になって決めつけ
そして袋叩きにしてるんです


この映画は
そんな個人を理解せず
曖昧な情報や勝手な思い込みで決めつけしまう人間の危うさに
警鐘を鳴らしている映画に感じました

 

それ以外にも
安易に差別問題をとりあげる作品に対する
皮肉を感じる映画でもあります

これは独善的な白人目線の人種差別に対する考え方
というのが見えてくる

この映画で言えば
ルースを優等生と称えることで
黒人を認めてやってるという
上から目線の考え方

本当は平等で同じ立ち位置のはずなのに

白人が黒人を認めてやることで人種差別問題は解決
みたいな
結局、白人が上で
黒人は認められるように頑張れよ
って風潮はあると思う

そして、黒人側も白人にならなければ
1人の人間として認めてもらえない
幸せになれない


この映画はそこに疑問を投げ掛けてると思います

差別問題に触れている映画でも
とりあえず黒人をカッコいい主人公にしてみた
女性を強く描いてみた
みたいな、とりあえず称えとけばいいんだろ
って安易な映画もたくさんあるし

本作はそんな作品に対し
それは違うだろ
と言ってるようにも思えるんですよね

結局、平等と謳いながらも
上から目線になってる時点で
なんか考え方がずれてるんですよ

 

この映画は本当にいろいろと考えさせられてしまう
本作を観ることで
自分の考え方の危うさにも気づかされましたし
人間の根本的に持つ危うさも感じることができました

単純に楽しめるような面白い映画では
ないかもしれないけど
観て損のない映画だと思います
少なくとも僕の心にはすごく刺さった

 


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