何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「回路」感想 普通のホラーと思ってたら終盤はすごい展開に…

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どうもきいつです


ホラー映画「回路」観ました

インターネットを介して奇妙な現象が巻き起こる恐怖を描いた2001年のホラー映画
謎のサイトにアクセスした人たちが
次々と姿を消していきます

監督は「カリスマ」などの黒沢清が務め
出演するのは加藤晴彦、麻生久美子などです

 

あらすじ
一人暮らしのOLミチは平凡な日々を過ごしていた
ある日、同僚が自殺してしまう
それからも他の同僚や勤め先の社長が姿を消していく
一方、大学生の亮介にはインターネットを介して奇妙な現象が起き始める
やがて2人は迫り来る恐怖に飲まれていく

 

感想
普通のホラーだと思ってたら
かなりすごい展開へと発展していき
ちょっと置いてけぼりをくらった
見ようによっては面白いけど
ここは賛否が分かれそう
でもホラー描写はちゃんと怖かった

 

前からずっと気になっていた映画で
最近になりやっと観ました

評判や内容など全然知らない状態で観たので
良くも悪くも予想を裏切られた気持ちです

観る前は普通のよくあるホラーかな
くらいの気持ちだったので
終盤のブッ飛んだ展開には驚かされました

本作は最後まで観ると
ホラーというよりSFのような印象を受けました

それでも、やっぱりホラーでもある
少し不思議な作風だと思います
しかも、かなり説明が少なくて難解な内容になっています
これはたぶん万人受けしないだろうなって映画

特に「リング」や「呪怨」みたいな
いかにもジャパニーズホラーって作品を求めている人は
本作をあまり受け入れられないかもしれません


本作と普通のホラーが大きく違うのは
幽霊の存在だと思います

ほとんどのホラーは
個人の幽霊単体が怨念や呪いで人間に襲いかかるわけですが

本作の場合は
幽霊の存在そのものが人類に襲いかかるという
なかなか突拍子のない話だったりします

ここがやっぱりSFっぽくも思えて
地球侵略にやって来たエイリアンとかにちょっと似てるんですよね

得体の知れない存在が人類の驚異になる
というあまりホラーっぽくない設定です

このホラーっぽくなさに驚かされる人も多いと思います

 

さらに、本作はなかなか意味不明で
そこが万人受けしない一番の要因だとも思う

これはあえて説明を少なくして
未知への恐怖を表現しているんだと思います

本作においての幽霊とは何なのか?
幽霊の目的は?
死んだ人間や消えた人間はどうなるのか?
てか、結局なにが起きてるのか?

よくわからないことがかなり多いです
最後まで観ても全然解決しませんし

そもそも、ストーリー自体もどこかフワッとしていて掴み所がなかったりもします

ただ、その意味不明さが恐怖に繋がってるのも確かで
この映画はいろいろ説明されて謎が解けてしまっては
怖さが全然なくなってしまうように思う

掴み所のない未知の恐怖を上手く表現できている映画でした

 

そして、掴み所のない意味不明な作風でありながら
意外とテーマは明確に示されていて
孤独と人の繋がりについて描かれている映画なんですよ

ここだけは
とてもはっきりとしていて分かりやすい

死んでしまう人や消えてしまう人と
最後まで生き残る主人公のミチ
この2つの違いもテーマから考えると
かなり分かりやすくなります

幽霊に狙われ消えてしまう人たちは
孤独や人の繋がりに対して考え方が違えど
孤独に怯える一方で人と繋がることにも怯えている人たちです

その心の隙を幽霊に狙われているように思えます
そして、おそらく幽霊にたちも孤独を感じていて
だからこそ孤独な者を引き込んで
お互いに繋がりを得ようとしてるように感じました


で、主人公のミチはと言うと
彼女は孤独に強い人なんだと思います
だから最後まで消えずにすんだ

一人暮らしで特別仲の良い人がいるわけではないけど
そこに不安を抱いているような様子はなく

でも、本作の中でも人一倍誰かを助けようという気持ちは強くて
そこを考えると人との繋がりを大切にしている人でもある


他の登場人物は
孤独を恐れどこか現実逃避をしています

もう1人の主人公の亮介は
人と繋がること望んでいるけど
馬鹿で夢見がちな
いつか人間は死ななくなるんじゃないか
みたいなことを本気で言っている

これは死という永遠の孤独に対する恐怖の表れだと思います

さらに、人と繋がりたいと思っているわりには
人に寄り添うことは全然しなくて
自分から孤独に向かっている人にも思える

亮介が消えた理由はそこにあると思うんですよね
孤独を恐れるあまりそこにつけ込まれたんじゃないでしょうか


でも、これも少ない説明からの考察で
結局、本当のところはよくわからない映画です

 


そんな、ホラーとしては少し変わった作風の本作ですけども
ホラー演出や映像の見せ方などは
なかなか怖かったりします

特に幽霊の動きは気持ち悪くてゾッとさせられました

ミチの同僚の男性があかずの間で出会う幽霊は
ほんとにすごく怖いですよね

特別怖いメイクをしてるわけでもない幽霊ですけど
あの独特な動きが異様で
そこにものすごい恐怖感を抱かされてしまいました

途中でカクッとこけるような動きとか
ゾッとさせられる

他にもシミの場所に人が現れる描写も
奇妙で気持ち悪さを感じたし

音の使い方もとても不安な気持ちを掻き立てられます
耳元で囁くような声もめっちゃ気持ち悪かったですし

死の描写もとても嫌な表現
飛び降り自殺の場面は妙にリアルで
かなりゾクゾクさせられました


そもそも、この映画の映像すべてが
陰湿で不穏な雰囲気を漂わしていて
それだけで常にちょっと気持ち悪いんですよね

色彩が少なく白黒に近いような色調で
さらに、全体的にとても暗い
影で登場人物の表情がわからないようなシーンも多くて
最初から最後までずっと不気味なんです

正直、終盤はやってることに映像が追いついてないようにも感じて
若干チープな映像になってしまってますが
頑張ってる方だとは思います

ホラー演出に関しては普通に怖さを感じましたし
突飛な発想の映画だけど
ちゃんとホラー映画としても成り立っていると思います

 

普通のよくあるホラーとは異なる作風なので
賛否が別れそうな作品です
僕はこの独特な設定は結構好きでした

考察するのが楽しいですし
ホラーとしても怖かったし
なかなか面白い映画だと思います

 


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