どうもきいつです
ドラマ映画「ミッドナイトスワン」観ました
トランスジェンダーの主人公の元に
親の愛情を知らない少女がやって来たことから始まる物語が描かれます
「神と人との間」などの内田英治が企画、脚本、監督、原作を手掛けた作品
主演は「台風家族」などの草彅剛と
オーディションで抜擢された新人の服部樹咲です
あらすじ
新宿のニューハーフショークラブの舞台に立つ
トランスジェンダーの凪沙は
育児放棄をされた少女の一果を預かることになる
セクシャルマイノリティーとして辛い日々を送ってきた凪沙は
家庭環境のせいで孤独に生きてきた一果と接するうちに
今までなかった感情が芽生え始める
感想
作り物の物語だけど
こんな人たちはこの世のどこに存在するんだろうなと思わされる
辛くて悲しい話ではあるけど希望を感じる映画でもありました
人間とは美しいものだと感じさせられる映画
評判がよかったし
気になったので観てきました
「台風家族」ではクズ役を演じていた草彅剛が
今度はトランスジェンダーの役を演じるということで
どうなるのかとても期待していました
実際に観てみると
草彅剛の演技がすごい
というだけでなくこの映画自体がなかなかすごい映画でした
とても感情を揺さぶられたし
最後にはこの映画の美しさに感動させられました
素晴らしい映画だと思う
最近はトランスジェンダーなどLGBTの人たちや
そこに生じる問題を描いた作品は多くなっていますが
本作も同じで
体は男性、心は女性の主人公を中心に描いていて
その中で主人公が葛藤したり社会の問題が浮き彫りにされたり
LGBTだからこその生きづらさが描かれていきます
そこから社会について考えさせられる作品だと思う
ただ、そんな社会問題を描きながらも
僕が本作を観て感じたのは
この映画は
LGBTの人間を描いた作品と言うよりも
凪沙という1人の人間の生き様を描いた作品
そう思いました
記号的にLGBTなどの社会問題をテーマにしている作品も多くて
そんな作品はメッセージありきだったりするんですよね
人間ドラマよりも主義主張が強いというか
こんな問題があるからそれについてみんな考えよう
みたいなメッセージを伝えることがメインになってるような作品
そんな作品も悪くはないと思うけど
そういうのって物語がおまけになってるような気もします
他には無理やりポリコレをぶっ込んでくる映画とかも最近多いですよね
個人的にはそういうのはちょっと興醒めしてしまってあまり好きじゃない
しかし、本作はそんなメッセージなんかよりも
人間の感情や生き様を描いた人間ドラマです
だから、この映画は
LGBT当事者の共感を得るだけではなくて
普遍的に心に刺さるものがあると思います
この映画からは
トランスジェンダーの生きづらさや苦悩だけでなく
人間の生きる意味とは何か
を感じさせてくれる
凪沙と言う人間の人生を通して
人生で大切なものは何かを教えてくれる作品だし
だからこそ、そこから見えてくる社会問題についても考えさせられます
本作の素晴らしいところは
なんと言ってもリアルさだと思います
リアルと言っても
設定に無理が無いとか
ストーリーが矛盾していないとか
そういう事ではなくて
この映画に登場する人物たちはみんな生きた人間に感じれる
この世界のどこかで
こんな人たちはいるんだろうな
と思わされるんですよ
リアリティには
やっぱり人物描写がとても大事だと思う
どんなに突拍子のない設定の映画でも
人物描写が優れていればリアルに感じれます
本作の主人公である2人
凪沙と一果は存在に説得力を感じれるんですよね
自分も街のどこかでこの2人にすれ違ったことがあるんじゃないかと思わされるほど
とても自然で現実味があるんですよ
これは単純に
この2人を演じた2人の役者の能力が大いにあると思います
まず、草彅剛ですけど
言わずと知れたナチュラルな役者です
昔から
どこかにいるような人を演じたら
右に出る者はいないんじゃないかと思わされる役者ですよね
昔はいい人役みたいなのがとても多かったですが
最近は役の幅が広がっていてクズ役なんかもしてます
今回はトランスジェンダーと
今までに無いような役でしたけど
やっぱり草彅剛らしさが出ていて
本作でもそこが上手くマッチしていたと思う
普通に演技としても女性に見えるいい演技をしているんですけど
それでも隠し切れない草彅剛がどことなく溢れ出ていて
そこがいい味を出してるんです
何とも言えない優しさなんかを感じれる
それに草彅剛って男らしい人でもあると思います
それがあるから
凪沙がただ綺麗なオネエにはなっていなくて
どこか気持ち悪さや汚らしさを感じてしまう
そこに凪沙の苦悩や憤りをよりリアルに感じれる
どうしてもなりたい自分にはなれない絶望を感じさせられるんですよね
かと言って
すごく美しく見える瞬間もあります
特に一果のために就職を決めたときのシーン
見た目は完全にただの草彅剛なのに
このシーンの凪沙はすごく綺麗な女性に見える
登場人物のリアリティを作る要素は様々あると思いますが
本作の場合は草彅剛の存在そのものが
凪沙という女性のリアリティにつながっている
他にもトランスジェンダーを上手く演じれる役者はたくさんいるだろうけど
この凪沙を演じれるのは草彅剛以外には
ありえないんじゃないかと思わされます
そして、凪沙と過ごすことになる少女の一果を演じる服部樹咲は
草彅剛に負けないほどの存在感でしたね
彼女は彼女でまた違ったリアルな存在感を放っていました
これはやっぱり新人と言うのが大きいと思う
いい意味ですごく素人っぽい
一果の役を昔から子役をやってるような女優が演じていたら印象が全然違っていたと思います
素人っぽいと言っても
服部樹咲の演技が下手なのかと言うとそうでもなく
普通に演技も上手いんじゃないでしょうか
演技をしているけど嘘っぽくなくとてもナチュラル
ベテランでも嘘っぽい演技をする人がいる中
初めてでこんな演技ができるのは才能があるんだと思います
徐々に心を開いていく表情の違いの表現なんか素晴らしいですよね
そして、登場人物の魅力だけでなく
ストーリーも心に刺さる作品です
主人公の凪沙の生き様は
辛くて悲しいものではありますが
どこか希望も感じれて美しくもある
凪沙の姿を見ていると
生きる意味や希望について考えさせられるんです
この映画から美しい生き方というものを教えられたような気がする
はじめ凪沙は孤独の中で自分らしさを追い求めていて
そこに凪沙の強さや信念も感じられるわけなんですが
実は空虚で寂しい人でもあるんです
自分らしく生きているようで
自分を見失っているようにも思えます
でも、一果と出会うことで
凪沙の考え方は大きく変わっていきます
凪沙は自分の姿を一果に重ねて
彼女の幸せを願うようになる
自分らしく生きることができなかった凪沙だからこそ
一果に同じ道を歩んでほしくないという強い気持ちもあり
一果の人生のために自分の人生を捧げるようになります
そうなってから凪沙はますます綺麗になり輝き出す
いつの間にか母親になっているんですよね
気付けば凪沙は自分らしさを見つけていて
一果に愛を捧げることで生きた証も残している
最終的には辛い道を歩んで
命も落としてしまうけど
凪沙は自分の人生においての役割や
生きる意味を見つけることができて
満足して死ぬ事ができたんだと思うんです
命は落としてしまったけど
一果とつながる事ができたから
想いはずっと受け継がれていく
この映画のラストにはすごく希望を感じさせられて
人間って美しくて素晴らしいな
という気持ちにさせれて感動してしまう
それに、ストーリーがいいだけでなく
映像も美しいんですよね
この映像の美しさでより感動させられます
終盤の砂浜でのシーンは本当に美しと思います
この映像だけでも涙を流せる
凪沙と一果の2人の想いともリンクしているし
このシーンは素晴らしいです
全体的に暗い雰囲気があって
どこか陰湿にも感じれますが
その中には美しさも散りばめられていて
独特な空気のある映像でした
凪沙と一果が交流を深めるシーンは
少し幻想的にも思えます
いろんな意味ですごくいい映画でした
生きた登場人物のリアルな姿がとても心に刺さります
暗い雰囲気のある映画ではありますが
中身は本当に美しくて希望に溢れています
自分もこんな美しく生きたいなと
心の底から思わされました
