何もかもが滑稽

何もかもが滑稽

映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「嵐の中で」感想 完成度の高いシナリオ 次の展開が気になる

f:id:kiitsu01:20210331221155p:plain

どうもきいつです


サスペンス映画「嵐の中で」観ました

ある女性が過去と繋がるビデオカメラを通し
25年前の少年を救うことをきっかけに
お互いの人生が大きく変化していく姿を描いたサスペンス
Netflixオリジナルのスペイン映画です

監督は「ロスト・ボディ」のオリオル・パウロ

 

あらすじ
1989年の嵐の夜
少年ニコは隣人の殺人現場を目撃し
そこから逃げ出したところ車にはねられ命を落とす
それから25年後
看護師のベラは夫と娘とともに
かつてニコの住んでいた家に引っ越してくる
そして、ある嵐の日
押し入れで見つけた古いテレビとビデオカメラを通じて
ベラは事件前のニコと対面するのだった

 

感想
謎が謎を呼ぶ展開と丁寧な伏線回収で
最後までハラハラドキドキと楽しめるサスペンスミステリーでした
最後まで観ると気持ちよく謎が解き明かされます
ただ、仕掛け重視で人間ドラマはかなり薄かった印象
主人公はあまり好きになれない

 

面白い映画だと耳にしたので観てみました

この作品は
とりあえず何も知らずに観るのが一番だと思います
ネタバレ厳禁系の映画

ここからはネタバレもあると思うので
気になった人は
とりあえずこの映画を観てみてください

 

本作はジャンルで言えばタイムスリップもの
「バタフライ・エフェクト」とかに似た雰囲気です

ただ、主人公がタイムスリップするわけではなく
過去に干渉することで自分の人生にも大きく変化が起きるって感じの内容

そこに殺人事件を絡めたミステリーや
主人公自身の謎に迫るサスペンスなど
とにかく謎だらけの映画です


で、そんな謎だらけな作品ですが
それを丁寧に解き明かしていく
なかなか作り込まれたシナリオ

序盤から所々に伏線を用意して話が進むにつれて回収していく
最終的には全てが1つに繋がり
観てる側としては
かなりすっきりした気持ちで観終えることができます

さりげない登場人物たちの言動が
後々に意味をなしてくるって作りはかなり上手いと思う

ベラの同僚がやけにベラの引っ越しのことに詳しかったり
隣の家のおばさんがニコの事故の話を嫌がったり
そういう場面が後になると繋がってきます


過去の改変による現在の変化に多少無理があるのは仕方ないけど
ちゃんと作り込まれているのでそこまでおかしなことにはなっていません
全然納得できる範囲

むしろ、最終的にはかなり上手くまとめ上げていました

特に終盤のベラとニコの関係が発覚する展開は
そっちの方向に話が転がるんだ
と、なかなか予想外の展開で驚かされた

ベラの時間軸とニコの時間軸を交互に見せることで
わかりやすく謎が解けていき
そして、さらに新たな謎を付け足されていく

そこに観ている側はどんどんと引き込まれていって
最後まで全く飽きずに観ることができる


全体的にかなりシナリオの完成度は高いと思います
矛盾が少ない上に
サスペンスやミステリーとしてもすごく面白くできている


1つ気になるとすれば
ベラの記憶だけ最後までずっと引き継がれているのはちょっと強引かも

特に理由があるわけでもないし
3つ目の世界が生まれたときですら
ベラだけ記憶が残ってるのには疑問を感じましたね…

ベラ死んでるし
それを無かったことにする過去の改変なんだから
ベラの記憶も無かったことになるのでは?
とか思ってしまう


とは言え
そこがそんなに気にならないくらいの完成度の高さなのは間違いない
ストーリーだけで言えば
SFサスペンスとしてかなり面白い部類だと思います

 

ただ、ちょっと微妙に思ってしまったのは
SFの仕掛けの完成度は高いけど
人間ドラマの部分がかなり薄いです

謎解きや伏線回収に全振りで
人物描写はちょっとおざなり

ドラマが薄いから
終盤のラブストーリー展開にもあまり感動できず

なによりも、主人公のベラに終始全く感情移入できない…
正直言ってベラがちょっと嫌い


基本的にベラがずっと自分本意で行動し続けて
かなりウザいキャラになってしまってます

彼女の行動原理は理解できるんですよ

急に自分の知らないパラレルワールドに放り込まれている状況ですから
そりゃパニックになります

ただ、ベラがずっとそのスタンスを貫くので
観ていてだんだんイライラしてくる

周囲の意見に耳を傾けるわけでもなく
ひたすら自分の意見だけを押し通そうとするのもかなりイライラ

その上、ベラがなぜそこまで元の世界に執着するのかはさほど描かれない

娘が大事なのはわかるけど
娘に対する愛情を感じる場面が少ないから
なんか取って付けた設定にしか思えないし

実は
ベラが娘の心配をする描写は全然なくて
ただ娘のいる世界に戻りたいと主張してるだけだったりするんですよ

でかい声で娘を返せと怒鳴ってるヒステリー女にしか見えない

もう少し繊細にベラの娘に対する愛情を描いていれば全然違ったと思う

 

そして、終盤は
娘のいる世界かニコと結ばれている世界かを選ばなければならない
究極の選択を迫られる展開なんですが

これもやっぱりドラマが薄いから
観てる側としては他人事なんですよね…

母子の関係にしたって
ニコとの関係にしたって
両方さほど深く描かれてないから
どっちでもいいじゃんって気持ちにしかならなかった

本当ならここで
どっちを選んでも心苦しい
って気持ちにさせる狙いだったんでしょうけど

そう思わされるほど登場人物に感情移入できていないですからね…


しかも、選択の末に行き着く3つ目の世界では
両方のいいとこ取りになってしまうのもね…

最後の究極の選択意味ないじゃん…
と思ってしまいました

ここは「バタフライ・エフェクト」くらい
切ない終わりかたにしてほしかった

 

文句も言いましたけど
シナリオの完成度はかなり高いです
謎解きを楽しめれば本作には十分満足できる

だからこそ
人間ドラマも深く描いてくれれば最高の映画になっていたと思う
特に終盤の展開はドラマが深ければもっと感動できました

悪くはなかったけど
素晴らしいというレベルの映画ではなかったかも