何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「SNS 少女たちの10日間」感想 自分の身は自分で守るしかないのかもしれない

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どうもきいつです


ドキュメンタリー映画「SNS少女たちの10日間」 観ました

SNS上で発生する
児童たちへの性的搾取をテーマにしたチェコのドキュメンタリー映画
12歳の少女を装った女優たちがSNSに登録するとどういったことが起こるのかを検証し
その行方を追っていきます

監督はチェコで活躍するドキュメンタリー作家のビート・クルサークとバーラ・ハルポバーです

 

あらすじ
巨大なスタジオに作られた3つの子供部屋に
オーディションで選ばれた3人の女優たちが集められた
彼女たちは12歳の女子という設定のもと
SNSで友達募集をする
その結果、彼女たちにコンタクトを取ってきた男性の数は2,548人
様々な専門家のケアのもと
撮影10日の中で何が起きるか検証される

 

感想
実際に起きる出来事を見せられることで
この問題についてより現実的に考えさせられる
本作を観ることで見えてくるものはありました
ただ、ちょっと掘り下げが甘いような気もします

 

SNSをテーマとしたドキュメンタリーで
この作品の試みはなかなか攻めていて興味深く
以前から気になっていたので観てきました


SNS上での性的搾取や児童虐待などはずっと問題になっていますし
知識として知っていることも多いですが

今回この映画を観ることで
よりこの問題について深く考えさせられました

 

まず、この映画の試みはなかなか面白くて
かなり攻めてますよね

SNS上では出演する女優たちは12歳という設定で見た目も12歳くらいに見える
そこに集まってくる男たちはそんなのを知らないガチなやつです

やってることは人を騙すようなことで
ちょっとゲスい感じもしますが

これによってSNSの現状はリアルに見えてきますし
SNSの世界で起きている犯罪行為を目の当たりにすることで
より現実としてこの問題を受け止めさせられます

ただ、少女たちに対する男たちの言動はあまりに不快で
観るのがキツいなという部分はあります
特に女性はより不快に思うかもしれませんね

そういう部分を含めて
この映画で行われている全てが
自分自身も向き合わねばならない問題だと感じさせてくれると思います

 

この映画を観て最初に思わされることは
やっぱりSNSってヤバい場所だな
ということですかね

正直、この映画で起きてることって想像通りではあるんですよ
こんなことが行われている場所ということは
みんな知識として知っているでしょう

でも、実際の出来事を映像として目の当たりにすると
かなり気持ち悪いですし
SNSのヤバさに現実味が出てきます


検証が開始され3人がSNSに登録するやいなや
早速、数人の男がコンタクトを取ってきます
たぶん友達申請かなにかだとは思うけど
その時点でSNSってそういう人間が蔓延っているんだな
というのは理解できる

その後のコンタクトを取ってきた男性たちの言動や要求は常軌を逸していて
この人たちの脳内の構造が理解できない

なかなか怖いですよね…

客観的に観ている成人の男ですら怖いんですから
直接やり取りをしている女優たちはもっと怖いだろうし
実際に被害にあっている子どもたち恐怖は想像以上だと思います

途中
コンタクトを取った男性がまともな人間で
それに対して女優が涙を流しますけど
これが異常な空間なことを表してますよね

普通の人間に出会って感動して泣くなんて
冷静に考えればおかしなことですよ


それに、問題なのは
こんな現状をサービスの運営側がある程度許容してしまってるところ

利用者を減らしたくない
広告収入を減らしたくない
という理由でしょうが

ってことは
それ目的の利用者がそれほど多いってことでもありますよね

そうなればSNSそのものが邪悪で
何も考えずに馬鹿みたいに使用しているのは
かなり危険だと思うわけです


この作品全体を通して
SNSの異常さを突き付けられたように思います
それによってSNSについて深く考えさせられるんです

 

で、そんな現実を観てこの問題について見えてきたのは
SNSを使って少女を狙っている男たちって
実はロリコンではないということなんですよ

映画の中でも軽く触れられていますが
この男たちって少女が好きだから狙ってるんじゃないんですよね

この映画を観た人ならわかると思いますが
コンタクトを取ってきた男たちは明らかにコミュニケーションが取れていません

何の前触れもなく陰茎を見せたり自慰行為をみせたり
胸を見せろだ写真を送れだとか一方的に強要します
あげく写真を拡散すると脅したりも

普通に考えてこの言動はおかしいですよね
まともな思考の人間ならこうはならない

仮に自分が12歳の女の子とセックスがしたいと思ったとして
こんなやり方をするかと言ったらしないですよ

例え不純な動機だとしても
普通なら相手に好意を持ってもらうことを先に考えるし
そこから関係性を積み重ねようとしますし
そこに至るまでのプロセスがあるわけです

ただ、この男たちはそんな思考は全く無く
とにかく自己中心的に自分の性欲を発散したいだけ

別に女児でなくても
性欲が満たされれば何でもいいんですよ


じゃあ、何故少女たちが狙われるのかの話ですが

これは簡単で
単純に大人の女性では無理だから
子どもならイケると思ってるからです

実際、子どもは無知だし精神的にも未熟だし
いろんな意味で弱い立場です
例えコミュニケーションの取れないイカれた輩であろうとも
子どもなら簡単に支配されてしまう可能性はあります


そして、この男たちも未熟な人間で
だからこそ人間関係が上手く築けず大人の女性には相手にされない
そうなれば子どもを狙うしかなくなるんでしょうね

セックスはコミュニケーションの行き着く先だと思いますが
この男たちにとっては自慰行為の延長線上でしかなくて
女性なんて物のようにしか思ってないのもしれないです


そんな人間が蔓延ることを許されるSNSはやっぱりかなり危険で
そこから子どもたちを守らなきゃならないんですが

この映画を観て思わされるのは
他人任せじゃ何も解決しない

性犯罪者を罵倒して批判することや
警察にもっと取り締まれと文句を言うことや
運営に規制を厳しくしろと言うことなど
言うだけなら簡単だけど

他人に解決策を求めるだけじゃ自分の身は守れないと思うんですよね

この問題に関しては
子ども自身が身を守る術を身に付けなければならないし
親が子どもを守らなければならない

犯罪者に訴えかけたところでそもそも良心なんて無いだろうし
警察の捜査には限界があるだろうし
SNSのサービスは慈善事業ではないし

それらが将来的に変わることは必要だけど
現在の子どもを守るにはあてにならない

ネットやSNSの問題については
親が子供に教育するしかないですよ

ちゃんとした知識や危険性を理解していれば
子どもも馬鹿じゃないから回避できるはず

現状は明らかにネットについてみんな考えてなさすぎる
子どもだけでなく大人も考えてない

この問題を解決するには
まずネットやSNSについてみんなが理解を深めることが重要

それさえすれば結構いろいろと解決すると思うんですよね


でも、現状では
親がネットの使用をただ制限しているだけ
教育を学校に丸投げ
など、親の意識が低いようにも思えます

今の時代、ネットやSNSは生きることと直結しているツールで
親が子どもにメリットとデメリットを教え
もし間違えれば、その都度修正してあげなければならない

生きる術を教えるのは親の役目で
それを怠れば子どもを危険にさらしてしまうことになると思います

 

そんな感じで考えさせられる映画ではありましたが
浅はかさがあるのは否めない
この問題についてそんなに掘り下げられてません

実際に起きているものは見せてくれますけど
そこから先が無いんですよね

いろんな男性とコンタクトを取り
様々なやり取りを行いますけど
この映画ってヤバい言動を引き出して終わり
なんです

ヤバい人間がいるのは伝わりますが
じゃあ、なぜそんな人間がいるのか
それぞれどんな思いでこんなことをやってるのか
そういった部分は全く引き出してくれない

終始キモい奴らを晒しているだけで
そこからでは問題解決には繋がっていかないように思います

終盤なんて
実際に相手を呼び出して直接接触しているのに
ただドッキリに掛けてるだけなので
ちょっとレベルが低いかなと感じました

せっかく直接接触しているのなら
もっとやることあるでしょ

女性を連れて現れた男なんて
絶対に裏がありそうで闇が深そうなのに
そこには全く触れてなかった


あと、途中に現れるイケメン好青年
SNSの世界にもまともな人がいて良かったね
って感じだけど
そうじゃないでしょ

このイケメンが仕込みかどうか
良い人間か悪い人間かは置いといて

これをこの扱いにしてしまうのが浅はかすぎる

現実は
いい人そうで実は悪い人間なんて山ほどいて
このイケメンも例外ではない

まともなコミュニケーションがとれた上で
他人を踏みにじることができるサイコパスがいるのは間違いなく
むしろ、そんな人間が一番厄介

ただ自分の性欲を満たすだけの人間だけでなく
巧みなコミュニケーションで子どもを騙し
子どもを利用して金儲けをたくらむ輩もSNS上にはたくさんいるはずですよ

この映画のテーマでそこをスルーしてしまうのはさすがにいただけない

 

そして、ラストの口論している場面
ここもちょっとレベルが低い

これに関しても仕込みかどうか定かではないけど
コンタクトを取ってきた男の中に
スタッフの知り合いがいたということで
直接批判しにいきます

この時の口論が本当に不毛でなにも生まれていないし解決していない

そもそも、相手が犯罪者と言えど
この作品を作るため結局は騙してるわけで
お互い様でしょ

そこを一方的に相手を批判してるのにはなんか違和感

てか、あんた達のやるべきことはそれじゃないでしょ
個人に怒りをぶつけたり断罪したり
やることがちょっとズレてるよ


この映画が性犯罪者の晒し上げだけで終わってしまってるのは
少しもったいないし
やってることが浅はかですよね

そんな点ではドキュメンタリーとしては
あまり良い出来ではないかもしれません

 

本作の試みは攻めていて面白いですし
そこから見える現実にはいろいろと考えさせられる

ドキュメンタリーとしてレベルの低いことをやっちゃってるのは否めませんが
観て損はなかったと思います