何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「HOKUSAI」感想 葛飾北斎を通して何を伝えたいのかわからん

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どうもきいつです


伝記映画「HOKUSAI」観ました

「富嶽三十六景」などで知られる江戸時代の絵師
葛飾北斎の生涯を描いた伝記映画
青年期から老年期まで北斎の様々な姿が描かれます

監督は「相棒」「探偵はBARにいる」などの橋本一が務め
北斎の青年期を柳楽優弥、老年期をた田中泯が転じています

 

あらすじ
町人文化全盛の江戸
後の葛飾北斎である貧乏絵師の勝川春朗は
あまりの傍若無人ぶりに師匠から破門される
そんなある日
喜多川歌麿や東洲斎写楽を世に送り出した版元の蔦屋重三郎が春朗の才能に目をつける
そして、才能を開花させた北斎は
江戸の人気絵師へと成長していく

 

感想
全体的にふわっとした内容
結局、北斎の何を見せたかったのか?
北斎を通して何を伝えたかったのか?
それがよくわからない映画
もっと北斎の魅力を引き出してほしかった

 

葛飾北斎を題材にした映画ということで以前から気になっていた作品
コロナの影響で公開延期になっていましたが
やっと公開されたので観てきました

かなり期待していた映画なんですけど
正直言ってちょっと微妙

いまいち北斎の魅力を描けていなかったように思います
その上、映画としても退屈な時間が多く
あまり面白い映画とは言えないかな

 

まず、本作は全部で4章に分けられていて
2章までが青年期
その後は老年期という作りです

1章は北斎の才能が認められるまで
2章は順風満帆な時期
3章は「富嶽三十六景」の完成
4章は最晩年
という分け方です

そもそも、4章に分ける意味を感じれなかったのと
それぞれの章でいまいちテーマがはっきりしていないのとで
この作り自体が下手だなと思わされました

1、3、4章は波の絵が完成する到着点があるけど
じゃあ2章はなんなの?って感じだし

 

1章では北斎が認められるまでのエピソードなんですが
これに関してはフィクションだと思ったほうがいいです
この時期の北斎のことはそんなに詳しくわかってないので
ここはかなり創作の部分が大きい

たぶん売れない絵師ではなかったと思うし
破門も師匠が死んだからだったような気がする

ただ、創作だからこそなのか
1章はなかなか面白いです
青春サクセスストーリーのようで熱い気持ちにもさせられる

ダメな男が才能を開花し認められる
それだけでカタルシスがあって
気持ちのいい物語になるんですよね

登場人物も喜多川歌麿や東洲斎写楽など
誰でも知ってるような絵師が登場して華がありますし

北斎と蔦谷重三郎との関係性には熱いものを感じれて
感動もできます

1章は普通に面白いストーリーに仕上がってると思いました


でも、そこから先はダメダメで
盛り上がりも全然ないし
メッセージ性なんかも伝わってこないし
てか、北斎の魅力が全然描けてないんですよ…

結局、この映画は何をしたかったんですかね…


特に2章が本当に謎で
これいらなかったですよね

ここで北斎の何を表現したいのかが全く見えてきません
子どもが生まれて父親になったとか?
だとしても全体の流れからして全く必要ないですよね

このエピソードの何が面白いのか?
淡々と仕事をこなしているだけの北斎を見せられても退屈なだけ
マジで2章が無駄

こんなのに時間を費やすのなら
もっと時間を割かなければならないものがあるでしょうに

3、4章にしたって
いまいち個々のテーマがあるわけではなく
ならなんで章を分けてるのかなと思いますよね

それに、淡々と出来事だけを見せてるような内容なので
観ていて全然感情が揺さぶられることもなく
なんかすごく退屈

章の終わりにしたって
なんかふわっと終わってしまい
あまり納得できませんよね

基本的にいろいろと下手なんですよ…
観客を楽しませたり感動させたりする作りではないんです

かと言って
アート映画というわけでもないし
北斎の人生のダイジェストとしても
チョイスが微妙すぎ
その上、史実と違うことも多いので歴史の勉強にもならない

あまり良いところが無い映画です

 

全体のテーマは
北斎が何故そこまでして絵を描くのか
というもので

芸術や娯楽を制限されている時代背景と共に
それが描かれていきます

でも、それもちょっと薄っぺらくて
口ではセリフでそれっぽいことを言うんですが
結局、言ってるだけ

北斎の根本的な原動力や
この時代の中でどう抵抗して芸術に向き合っているのか
そんなものは全然描かれない

堅苦しくてメッセージ性重視っぽく見える映画なのに
実はすごく浅くて
芸術の存在意義を深掘りしてないんですよね


変に小手先だけで頭の良さそうな映画にしちゃってるけど
一番重要な部分は押さえていません

この映画で重要なのは
やっぱり葛飾北斎の存在そのもので
北斎を魅力的に描いて
彼を深く掘り下げさえすれば
芸術とは何なのか
という部分も見えてくると思うんです

それを表現するには
北斎が絵と向き合う姿か必要

でも、本作は絵と向き合う北斎というのはほとんど見せてくれない

絵を描いてる姿はありますけど
北斎の絵に対するこだわりや
如何にして絵を完成させるのかなど
そんなものを映像として表現できていない

なんか意味不明な演出はあって
青い絵の具を浴びるとか
惨殺される人間が目の前にいるとか
青年期と老年期で一緒に絵を描くとか

なんか意味あり気な見せ方をしてるけど
正直、何も伝わってこない
ただそれっぽいだけの演出ですよね


「富嶽三十六景」は北斎の代表作でもあって
そこを深く描いてくれれば
北斎の魅力にも繋がると思います

しかし、本作ではここがすごくテキトー
北斎が旅をしている映像をダイジェストで見せて
帰ってきたらなんか絵が完成している
みたいな
めちゃくちゃあっさりと流してしまいます

でも、現実的に考えて
70歳を過ぎたお爺ちゃんが
自分の足で旅をして
さらに、超大ヒット作品を作り上げるわけですよ?
こんなクレイジーなことないでしょ

「富嶽三十六景」が完成する過程で
北斎が如何にすごい人間なのか
情熱に溢れてるのか
イカれてるのか
そんな部分をもっと引き出せると思うんですよね

こんな面白そうな題材が存在するのに
なんでこんないあっさりスルーしちゃってるんでしょうか
謎ですよね


北斎の人間関係や
日本の将来に憂いている姿など
変に深く重そうな話にするよりも

北斎が如何に絵と向き合い作品を完成させるか
というものを細かく描写するべきだったと思う

多少、過剰な表現であっても
常人ではない異常でクレイジーな北斎の姿は必要ですよね

そうすれば北斎の凄さや偉大さが伝わるし
こんな時代に絵を描くことの意味も見えてくると思うんですよ

 

なんかこの映画って
北斎という芸術家の物語なのに
遊び心やユーモアが全然無い

変に堅苦しくて真面目なだけのつまらない映画で終わってしまっていました

せっかく北斎という天才を題材にしてるのなら
もっと自由でアートな表現で彩ってほしかったですね

 

序盤は悪くなかったですが
全体的にはテーマが不明確で
表現もいまいちつまらなかった

史実に忠実でもないし
エンタメ的に面白いわけでもない

なんか狙いのわからない映画でした

 


もっと知りたい葛飾北斎 改訂版 生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)