何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「竜とそばかすの姫」感想 観てるこっちは置いてけぼり

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どうもきいつです


アニメ映画「竜とそばかすの姫」観ました

スタジオ地図によるオリジナル長編アニメ作品
インターネットの巨大仮想空間を舞台に
心に傷を負った女子高生の成長が描かれるSFファンタジーです

監督、脚本は「サマーウォーズ」などの細田守が務めています

 

あらすじ
高知の田舎に住む女子高生のすずは
心に傷を負い周囲に心を閉ざしていた
ある日、友達に誘われ
インターネットの仮想世界“U”にベルというアバターで参加する
すずは“U”で自分の歌を披露しやがて世界から注目される存在となる
そんな中、彼女の前に謎のアバター竜が現れる

 

感想
勝手に始まり勝手に終わる
観てるこっちは完全に置いてけぼりでした
全てが強引で観ていてちょっと疲れる
正直言ってつまらない映画
褒めれるのは映像の美しさだけかもしれない

 

細田守の最新作ということで観に行ってきました

僕は細田守のファンというわけではなく
作品がそんなに好きでもないです

「おおかみこどもの雨と雪」くらいまではそれなりに好きだけど
それ以降はかなり微妙かなと思っています

でも、映像は毎回素晴らしいし
細田守は面白い映画を作ってくれるんじゃないか
と期待は抱いているので
新作の度に興味はあるんです


で、本作の話ですけども
期待はずれというか…
予想通りというか…

あまり面白くないですね
最後まで観て
つまらない映画だなという印象が強かった

正直、褒めるところはあまりないかも…

絵のクオリティが高いくらいですかね?
田舎の背景とかはめっちゃ良かったですよ
キャラの動きともリアルでいいですし

アニメ映像に関しては日本トップクラスではないでしょうか

 

ただ、それ以外は本当に微妙かな…

特に脚本が悪いです

物語がすごく強引で観ているこっちは放ったらかし
何も納得できないまま終わってしまいます


やりたいことや伝えたいことがあるのは理解できる

でも、それのために
全てを強引に押し進めていて
それありきで物語も動かされてるんですよね

その上、詰め込みすぎで話がとっちらかってもいるし
だから伝えたいことがいまいちわからない

結果的に監督の自己満足の映画になってると思いました
観客のことなんてどうでもいいのかな?
とさえ思えてくる

1つだけわかるのは
細田守はネットの匿名で好き勝手言ってる奴らが嫌いなのは確実ですよね

 

何が悪かったのか細かい話をすると

まず、キャラクターはなかなか酷いと思いました
主人公のすずを筆頭に
どのキャラクターも本当に薄っぺらくて魅力がない

基本的にみんな中身がなくて記号的な存在で終わっている

例えばすずは
田舎に住む地味で消極的な女子高生で
母親を亡くしショックで歌が歌えない
幼馴染みのことが昔から好き
クラスに仲の好い友達が1人いる

みたいな設定は細かくあるけど
それ以上のものは無いというか…

そこから先の人間的な深い部分は全く見えてきません

他のキャラもみんな同じで
設定だけの記号的な人間で
全然生き生きとしてないんですよね

物語の決まったラストへ向けてただ動かされてるだけの駒みたいなもので
全然、感情移入もできないし冷たさすら感じます

行動原理や気持ちなんかが全く描かれず
ひたすらストーリーだけが先走っているので
めちゃくちゃ強引な印象も受けました

なぜこのキャラがそんな行動を取るのか?
どんな気持ちで動いているのか?
そんなものはすっ飛ばして
出来事だけを見せている作りには少し気持ち悪さも感じてしまう

 

そして、設定や世界観を生かせていない映画でもあります

ネットの仮想空間で別の自分になれるSNSのような匿名性のある世界
登場人物たちのバックボーン

そういう要素が物語の中で全然機能していないと思います

すずがベルとしてネットの世界で人気者になる
という話ではありますが
そこがストーリー上で面白く広がらないんですよ

普通なら別人になれるということで
すずの心の変化であったり
この世界の闇の部分が描けるはずなんすが
そういう部分もすごく薄っぺらくて
最後まで中途半端な描写で終わってしまいます

コンプレックスやトラウマを持つ思春期の女子高生が主役なんだから
調子に乗るとか過ちを犯すとか
そんな展開があってもいいのに
すずはずっといい子のままで面白味が全くないし

匿名で正体がわからないからこその人間の裏表なんかも
全然ないですよね

この映画のテーマは
ネット社会のメリットとデメリット
だと思うんですけど
あまり深掘りしていないなと思わされます

てか、何故そうしなかったのか?
普通ならそんな展開にするでしょ

あえて波風の立たないストーリにしてるの?
だとしても“あえて”の部分に意味は感じれないけど

この世界や設定を生かせば
もっと盛り上がる展開だって作れるはずなのに

いまいち弱い展開が多いし
最後までこれと言った盛り上がりのない映画になってしまってます

最後の方も取って付けたような展開で
あんまり盛り上がらないですよね…

 

あと、説得力の無い要素がすごく多いと思います

例えば
すずがネットの世界でベルとして
世界中から注目されて大人気になるわけですが
なんで?って感じですよね

歌が上手いから
可愛いから
って言ってるけど

そんな事だけで人気になれるのなら
この世の芸能人やユーチューバーは苦労しませんよ

これに関しては
すずじゃないと駄目な理由さえあれば納得できるんです
すずの魅力さえ描けてれば問題ないんですが
結局、キャラが薄いので説得力はありませんよね


ベルと竜が惹かれ合うのも理屈が通ってなくて
観てる側からすれば本当に納得がいかない

何故の部分が全く無く
ただ雰囲気だけで進んでます

「美女と野獣」オマージュにしたって意味を成していないです
「美女と野獣」でないといけない理由は感じれません

「美女と野獣」って見た目のコンプレックスや心の美しさの話だけど
本作は別にそんな話じゃなかったし
オマージュが全然機能してないですよ
オマージュですら説得力に欠ける


ネットの描写なんかも
あまりピンとこないですよね…

顔を晒すのがどうこうの話になるけど
別に顔を晒すことのマイナス要因なくない?

すずがどうしても今の地位を捨てたくないとか
顔を晒すと支障をきたすとか
それなりの理由があればいいけど
ただ恥ずかしいだけくらいの感じでしょ

この映画を観てる中で
すずが何に抵抗を示してるのかよくわからなかったし

ネットで顔を晒すという漠然とした恐怖が細田守にはあるのかな?
ネットで叩かれたりもしてるだろうし
ネットの悪意に敏感なのかもしれない

ただ、こっちからすれば
細田守は何と戦ってるんだよ?
と思ってしまうのは否めないです

メッセージはわからんではないですが
今さら感があるし踏み込んでもないし
架空の誰かと戦ってる感じもするし
あまり刺さってこないです


他にもツッコミたい部分はたくさんあるけど
それはどれも
自己満足で完結してしまっていて観客は置き去り
というところなんですよね

良くも悪くもオタクっぽい映画というか…
まあ、悪いほうの比率が大きいけど


それと、やってることが「サマーウォーズ」 からあまり進歩してないのもマイナスかな…

今の時代だからこそのネット世界の表現や問題提起は見せて欲しかった

 

音楽が素晴らしいって意見も多くて
そこを大絶賛する人もたくさんいますが

正直、悪くはないってレベルで
他の映画に比べて抜きん出てるかと言うと
べつにそんなにすごいとは思えない

あまり印象にも残らなかったし

この音楽のためにサントラを買いたくなるほどのものではないです

これは好みの問題かもしれないけど

 

映像のクオリティが高いだけの映画で
中身は本当に薄っぺらかったです
細田守に脚本は向いてないのかもしれませんね
映像だけでなく中身のクオリティも上げてほしい

夏、田舎、青春なアニメが好きなら観てみてもいいんじゃないでしょうか

 


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