何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「そして僕は途方に暮れる」感想 クズ男だけど嫌いになれない

どうもきいつです

ドラマ映画「そして僕は途方に暮れる」観ました

2018年にシアターコクーンで上演された舞台「そして僕は途方に暮れる」を映画化した作品
ささいなトラブルから人間関係を断ちながら逃げ続ける青年の姿が描かれます

監督は舞台も手掛けていた三浦大輔
舞台で主演を務めたKis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔が本作でも主役を演じています

 

あらすじ
自堕落な生活を送るフリーターの菅原裕一は
同棲している恋人の里美に浮気がばれてしまう
しかし裕一は話し合うこともせず家を飛び出す
そこから親友、先輩、姉のもとを渡り歩くが
ばつが悪くなると逃げ続け
ついには行き場を無くしてしまうのだった

 

感想
最低な人間だなと嘲笑いつつも
どこか共感できてしまう自分もいる
クズだけどなんか憎めない
そして、1番つつかれたくない自分のクズな部分をつつかれているような気も…

 

映画館で予告を見たときから気になっていたので観てきました

僕はダメ男が主人公の映画が好きなので
本作にも結構期待していた

どんなダメ男が描かれ
どんな結末が待っているのか
それを想像するとワクワクしてくる

 

本作のダメ男こと裕一は
クズはクズでも壮絶なクズですね
現実だとなかなかここまではできない
限界突破したクズです
もはやここまで行けば格好いいほど

とことんクズを追求した物語なので
やっぱり好感を持てない人も多いよういです

全く共感できないとか
クズすぎて好きになれないとか
そんな感想もよく見かけました

あまりにクズすぎて笑える
みたいな人もいると思います


一方、僕はというと
確かに滑稽な姿に笑えたりもしましたが
それよりも共感してしまう気持ちの方が大きかった

僕もこっち側の人間だな
と、あらためて痛感させられたかな…
僕もクズです

 

主人公の裕一はとにかく逃げます

自分の浮気ばれたことが発端で
彼女と話し合うこともぜずまず逃げる

その後も知り合いの家に転がり込んでは
ばつが悪くなるとすぐに逃げ出す
そして着信拒否

シンプルに最低ですよね

細かく言えばこの裕一にはダメなところがたくさんあるんですけども

根本的なところは
自分や他人と向き合わず目をそらし
その場しのぎでやり過ごそうとする
それが1番の元凶なわけですよ

こんなことしてるからダメなんだよと思いつつも
これがすごく共感できてしまうと言うか…

僕の場合は逃げたくなっても
逃げちゃダメだ…逃げちゃダメだ…
と、シンジ君ばりに葛藤してどうにか思い止まってはいますが

その場しのぎで逃げ出したい気持ちは十分に理解できる
実際に逃げたことたってあります


この映画を観ていると
そんな自分のクズな部分をチクチクとつつかれているようで
少し居心地の悪さを感じたりもしました

で、いつの間にか裕一にめちゃくちゃ感情移入してしまっています

てか、ここまで全てを投げ捨てて逃げている裕一には少し憧れたりも…

裕一は僕がやりたくてもできないことを簡単にやってのけてしまう
これには、もはや尊敬してしまう

 

最近では
逃げたいときは逃げてもいいよ
嫌なことは無理やりしなくてもいいよ
みたいな優しい言葉もよく耳にします

しかし、この映画では
世の中そんなに甘くないぞ
と、逃げた先の地獄をこれでもかと見せつけられる

こんな地獄絵図のような逃避行を見せられちゃうと
やっぱり逃げちゃダメだな…
と思わされるますよね

これがこの映画の面白さだと思う


さらに本作では
逃げずに向き合った姿も描かれます

最終的に裕一は彼女と話し合う決心をして真剣に向き合うわけですよ

普通なら
逃げずに自分の境遇に立ち向かったから
最終的にハッピーエンドで
逃げなくて良かったね
になるんですが

本作の場合は立ち向かっても地獄と言うね…
こんなことなら逃げてた方がマシ立ったんじゃね
みたいな

でも、これが現実だったりもする
逃げても地獄
逃げなくても地獄

そんな人生を経験するから人間は成長するのかもしれない
裕一が成長したのかどうかは分からないですが

まあ、理不尽だからこそ人生という映画は面白くなってくるのかな

 

あとは、主人公を演じる藤ヶ谷太輔が完璧にクズを演じていたのが印象的でした

絶対に本人はクズじゃないのにこの映画ではクズにしか見えない

目が泳いでる時やリュックに荷物を詰め込んでる時とか最高ですよね

やはり舞台で演じていたのもあってか
裕一という人物を完全にものにしているように思えました

終盤の鼻水垂らしながら泣く場面もすごく良かったですよね
この場面の感情ってすごく絶妙だと思うんですよ

裕一自身がなぜ泣いてるのかどうすれば良いのか全くわからず
ただただ感情が溢れてくるってシーン
とても抽象的な感情だけど
それがストレートに伝わってきました

 

この映画は
ハッピーエンドで終わるわけでもないし
裕一が成長したかどうかもわからない
そして、とことん裕一がクズすぎる

なので、この映画を受け付けない人もいるかと思う

特に逃げない強い心を持っている人からすれば
裕一がただの馬鹿にしか見えないかもしれません

でも、僕のように心に刺さる人もいると思います

本作は人間の弱さにしっかりと向き合った作品
そんな弱さから学べるものは大いにある

こういう作品はとても好きです