何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「#マンホール」感想 よく考えると終盤の展開は唐突

サスペンス映画「#マンホール」観ました

マンホールに転落し出れなくなった男が
様々な方法で脱出しようとする姿を描いたワンシチュエーションのサスペンス

「マスカレード・ホテル」などの岡田道尚によるオリジナル脚本
監督を務めるのは熊切和嘉
主演はHey!Say!JUMPのメンバー中島裕翔です

 

あらすじ
不動産会社に務める川村俊介は社長令嬢との結婚が決まり順風満帆だった
しかし、結婚式の前夜サプライズパーティーに招かれた川村は
その帰り道にマンホールに転落してしまう
目を覚ました彼は
スマホの機能を駆使してマンホールからの脱出を試みる

 

感想
スリルのある展開にハラハラしながら観ることができました
終盤は予想外のどんでん返し
でも、そのどんでん返しは
唐突すぎるから予想できなかっただけなのかな…

 

映画館で見た予告に惹かれて観てきました

予告を見ただけでも
ワンシチュエーションの作品なんだろうな
と予測できる内容で
どんな物語になるのか気になっていた作品

2年前くらいに観た
カナダのB級ホラー映画「マンホール」が頭によぎったけど内容は全然違う
本作の方が全然面白かったです


ワンシチュエーションだからこそ
最後まで飽きないように工夫されていましたし
終盤には怒濤の展開で一気に物語に引き込まれる

ただ、よく考えると雑な部分も多い気がする

それなりに面白いんだけど
ちょっと惜しい映画だなとも思いました


本作は公式でもネタバレ厳禁と言われている映画なので
観る予定のある人はこの先は読まない方がいいです
ここからはネタバレあります

 

良くも悪くも気持ち悪くて不快な描写

本作はマンホールの中に閉じ込められてしまう
というシチュエーションで
主人公の極限状態を描いたパニック映画でもあります

なので、主人公が置かれる環境のリアリティは
とても重要で
ここがショボければ映画全体がチープになってしまう

本作はマンホール内のリアリティは出せていたんじゃないかと思います

マンホールの中と言えば
やはり不潔で気持ち悪い場所なわけです

そこを映画として変に見やすいよう小綺麗にするのではなく
こんな場所に居たくないな
と思えるほどに気持ち悪く表現されていました

うごめく虫や動物の死骸など
そういうものをちゃんと映像として見せることで
とても不快な気持ちにさせられる

雨によるジメジメした空気感もすごく不潔で気持ち悪いですよね
乾燥してるより湿度が高いほうがやっぱり不快感が強い

怪我の描写も
リアルで痛々しく表現されていたので
若干のグロさも感じます

不潔な環境に相まって
この怪我がすごく嫌なものに見える
こんな場所、1番怪我したくない場所ですから

このようなリアルな描写が
映画の中に引き込まれる要因の1つになってると思います

気持ち悪いものをちゃんと気持ち悪く表現していることには好感も持てる

ただ、だからこそ苦手な人はとことん苦手で
この映画を受け付けない人もいると思う
万人向けではない映画かな

ジャニーズ目当てで観に来る人も多いかと思いますが
軽い気持ちで観ると精神的にやられる可能性もある

ジャニーズ主演でこんな作風なのは
ある意味、攻めてる映画なのかも

 

飽きない工夫

ワンシチュエーション映画は
下手したら途中で体力が尽きて飽きられてしまうようなジャンル

でも、本作はそうならないよう
しっかり工夫されています

主人公が脱出するために悪戦苦闘して
上手く行きそうになっては失敗の繰り返し
脱出系映画の王道ではあるけど
そんな王道をしっかり押さえてるから安心して観れます

主人公がスマホを駆使して脱出しようとするアイデアも面白いですよね

動画撮影モードでスマホを投げてマンホールの外を撮影しようとしたり
SNSを使って助けを求めたり
いろいろ知恵を振り絞って努力する姿には
主人公を応援したくもなります


それに、そういうのを一本調子で延々と見せるのではなく
映像の見せ方にもいろいろ変化を出してるので淡々とせずメリハリも生まれてる

緊張感やスリルを感じる見せ方も多くて
ハラハラする場面がいくつもありました

 

中島裕翔の演技がいい

本作はほぼ一人芝居の映画です
画面に映っているのはほとんど主演の中島裕翔だけ

なので、演技が下手なら見てられない映画にもなりかねないわけですが
中島裕翔はそこを成立させる演技力があったと思います
むしろ、彼の演技で最後まで引っ張っているくらいですよね

とにかく迫真の演技で
極限状態の人間を嘘っぽくなく演じてる

イライラしてるときはちゃんとイライラしてるし
絶望的な表情はちゃんと絶望的だし
痛い時はすごく痛そうだし
本性を現したときはかなり怖いし

そんなリアルな主人公の姿によって
どんどんと映画の中に引き込まれていく

この映画を最後まで飽きずに観れる要因でもあります

 

終盤の展開は予想外だけど、それは唐突だから

本作の目玉でもあるネタバレ厳禁のどんでん返し
確かにこれには驚かされる
全く予想外の展開です

でも、よく考えると
予想外なのは当たり前なんですよね
だって、この展開を示唆する描写が全く無いから

主人公の川村が実はニセモノの川村だった
という展開だけど
そもそも、観てるこっちは本物の川村を知らない

そこに至るまでも
とにかくその真実については全く触れずに
完全に隠されているわけですよ

で、その時になって
急に川村はニセモノでした
と言われても…
うーん…って感じでちょっとモヤモヤする

そこに繋がる伏線なんかもないですしね

川村がすごく嫌な奴
というのが伏線なのかもしれないけど
そこもやっぱり元の川村を知らないので
元からそういう人間なのかなと最初から納得してますし…

川村がニセモノだった
本物の川村は死んでいる
という展開が取って付けただけのものになっているので
どんでん返しとしてはあまり上手くないかな…


真犯人に関しても同じで
急に出てきた黒木華が真犯人なので
そりゃ予想できないよね…

どんでん返しや真実が明かされても
なるほど!!
と、ならないのがこの映画のすっきりしないところ

 

主人公のキャラの振り幅がない

さっきも言ったけど
主人公が最初から性格悪いです
これはどんでん返しの伏線なんだろうけど
それのせいで主人公が本性を現したときのギャップが全然ないんですよね

序盤から
暴言を吐いたり身勝手なことを言ってたり
女癖の悪さは露呈するわ
すごく他人に対して疑り深いわで
とにかくずっと人間性に問題があるわけです

だから、本性を出したときに
そりゃそうか
と、変に納得してしまう

主人公のギャップによる驚きがないのは
せっかくのどんでん返しのマイナスにもなってます

最後の命乞いの場面も
どうせコイツ裏切るだろうな
と思ってしまったし

はじめはある程度善人っぽく見せてるほうが
本性を見せたときの驚きが大きいし
もっと脱出の応援もしたくなると思いました

 

映画の都合によって展開する物語

この映画がいまいちしっくり来ない理由は
予想外の展開が先走って
登場人物たちの気持ちが全然追い付いてないこと

こんな展開にしたら面白いだろ
という部分だけを重視してるから
なぜ登場人物たちはこんなことをしてるんだろう?
って部分が置いてけぼりになってる

ニセモノの川村が本物の川村を殺してなりすましていることに関しても
別の自分になりたかったというのは理解できる

でも、なぜ川村でなければならなかったのか?
人を殺してまでそうした原動力は何なのか?
みたいな部分が有耶無耶にされています


真犯人の目的にしても
めちゃくちゃ手の込んだ計画を実行してるわけですが
じゃあ普通に殺さない理由は?
なぜわざわざ回りくどい方法で痛めつけるのか?
ホンモノの川村の死体があるマンホールに落とした理由は?
てか、そもそも死体のあるマンホールをなぜ知ってるの?

と、疑問が次から次へと出てくる
そして、そんな理由は全く説明されない


最後の子供のやつとかも
確かに驚きはあるけども
それと同時に
あんな子供がどうやって長距離移動したんだよ
みたいな矛盾も生まれる


結局は作り手の都合だけで物語が展開しているからだろうと思います

どんでん返しもそうだけど
こういう展開にすれば盛り上がるだろう
みんな驚くだろう
ってところだけに力を入れていて
肝心の登場人物たちの気持ちなどは蔑ろにしている

その結果
登場人物たちにあまり感情移入できないし
細かいところで矛盾も生まれています

驚きの展開もいいけど
もう少し納得できるように作ってほしかったかな…

 

まとめ

気になる点は多少あったけど
このタイプの邦画にしてはなかなか出来の良い作品でしたね

観客を楽しませるための工夫をしっかりと考え作られていました

原作なしのオリジナルというのも好感が持てる

細かいことを気にしなければ
最後までハラハラドキドキ楽しめる映画だと思います