何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「アマデウス」感想 天才と凡人 やっぱり天才になりたい でも絶対になれない


どうもきいつです



音楽家モーツァルトの生涯を描いた映画「アマデウス」
観ました

 

ブロードウェイの舞台「アマデウス」を
映画化した1984年の作品です
モーツァルトと同時代に活躍していた
音楽家アントニオ・サリエリの視点から
描かれた物語になっています

 

本作はアカデミー賞などの数々の賞を
受賞したかなり評価の高い作品です





あらすじ
ウィーンの街で自殺をはかった
老人アントニオ・サリエリが精神病院に運ばれた
後日、病状が安定したサリエリを
神父フォーグラーが訪問し話を聴こうとする
そして、サリエリは
自分とモーツァルトの
にわかには信じ難い過去の話を告白しだした



感想
天才とは何なのか
天才と凡人の違いとは
それを考えさせられました
とても長い作品ですが
最後まで引き込まれる
魅力的な作品でした



モーツァルトという天才と
サリエリという凡人
この2人を通して
才能っていうものは
一体何なんだろう
と深く考えさせられる内容でした


この映画を簡単に言ってしまうと

天才になれなかった人間が
本物の天才に出会い
そこで抱いた複雑な感情を
描いた映画です

その中にあるのは
嫉妬、僻み、憎しみ、憧れ、敬意
マイナスな感情だけでない
複雑な心情で

題材となっているモーツァルトではなく
モーツァルトを陰から見ていた
サリエリを主役とした
サリエリの物語です


このサリエリ視点の物語
かなり共感できると思います

この映画を観る人たちは
ほとんどが凡人だと思います

多くの人はこのサリエリと
同じような経験をしたり
感情を抱いたことがあると思う


いろんなものをなげうって
地道に真面目に努力して
やっと掴めたもの
もしくは掴めなかったもの

それを、横で飄々と
簡単に手に入れてしまう人
って結構いますよね

そういう人に出会ったときに
何とも言えない
嫌な感情が湧き出てしまう


才能って話を抜きにしても

誠実に真面目に過ごして
他人に気を使い生きている自分が
つまらない人間だと言われ好かれない

でも、だらしなく自分勝手で
他人の気持ちなんて考えない
そんな人間のほうが
人気があって信頼もされている

そういう経験をしている人だって
いっぱいいると思う


この映画は
そういう時に生まれる感情を
面白く深く描いています

気付けば
サリエリという人間と
自分とを重ね合わせ
彼と一緒に
モーツァルトという天才に
いろんな感情を巡らせてしまっています


個人的には
この映画と自分とのシンクロ率が
とても高かった

サリエリの気持ちがわかり過ぎて
細かい感情もいちいち心に刺さる

ただ憎いだけじゃないんですよね

憧れているし
尊敬もしている

だから彼の作品を否定することができない
とんでもなく素晴らしい作品だとわかるから


でも、やっぱり嫌いでもあるんですよ
自分の持っていないものをたくさん持っているから

殺したいほどに妬ましい


そして、自分も天才になりたいと思ってしまう
でも気付きます
絶対に天才にはなれないと



で、ただシンクロしてしまう設定
ってだけでなく

そこまで入り込んでしまうほど
脚本、演技、演出が
良かったというのもあると思います

特に人物設定や演技が
とても素晴らしかったと思います

サリエリとモーツァルトの
キャラクターの対比が
とてもわかりやすい

サリエリの
堅実で真面目な性格
だからこそ多くの人に認められてもいる
でも、つまらない人間でもある

逆にモーツァルトは
お金や酒にだらしなく
自分が天才と分かっている傲慢な性格
だからこそカリスマ性があって
人には好かれる

その対照的な2人を
それぞれの役者がとても上手く演じています
こういう人間たちが
実際にいたんだろうな
と思わせてくれるリアル感があります

だから、観ている側も
この映画に入り込むことができます
感情移入がしやすいんです



さらに、この映画を最後まで観ると

天才、才能ってなんなんだろうな
と考えさせられる

ずっと、凡人であるサリエリに
感情移入していたという話をしましたが

映画を観進めると
天才であるモーツァルトの気持ちも
わかってきます

そして冷静に考えると

この映画の中では
明らかにサリエリの方が
世間的にも社会的にも
成功している
皇帝にに仕える作曲家ですしね

一方、モーツァルトは
借金だらけで仕事も無く
社会的には完全に終わってる

サリエリ別に負けてなくね?


そうです
サリエリは外側から見れば
普通に成功者なんですよ

そして、モーツァルトは天才過ぎて
凡人には理解できない作品ばかりで
現実的には全く成功しない


そう見てみると
結局、天才って何なんだろう
と思う

モーツァルトもサリエリと
同じような気持ちを
抱いていたんではないだろうか
そうも思えます

モーツァルトから見れば
サリエリは自分には無いものを
たくさん持っている人間
才能のある人間に見えていたのかもしれません

確かにモーツァルトは
素晴らしい作品を作る才能はあった
でも、それを世に知らしめる
自分をプロデュースする才能は無かったのかも

サリエリは後世に残る作品を作れなかったが
世の中を上手く生きる才能はあった


やっぱり
人間って自分が持っていないものを
欲しくなってしまうんですかね

無い物ねだりの気持ちが強くなると
自分を壊してしまう原因になる
のかもしれないですね


この映画が単に
天才が神に愛された者
凡人は神に愛されなかった者
ってだけの話では無いようにも感じました



そして、ラストの
鎮魂歌の作曲シーンからの
モーツァルトの死まで

ここでのサリエリの複雑な感情

殺そうと思っていた人間の才能を
間近で目の当たりにし
純粋にその才能に魅せられてしまいます

そして、モーツァルトが死んでしまい
1番その才能を惜しんだのはサリエリで
1番理解していたのもサリエリ

この部分がとても人間臭いなと

この時に
自分は天才ではないと悟り
かけがえのない才能を消してしまったという
罪を背負ってしまう

愚かな人間像ですが
決して嫌いになれない
人間ってそういうものだよな
って思えます



3時間ほどのとても長い映画
だったんですが
最後まで見入ってしまいました

才能とは何かと考えさせられ

人間って愚かだけれども
愛すべき存在だな
とも思わされました

そして、映画としても
とても面白い作品でした





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