何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「プロミシング・ヤング・ウーマン」感想 一面だけを鵜呑みにするとこじらせそう

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どうもきいつです


スリラー映画「プロミシング・ヤング・ウーマン 」観ました

明るい未来を約束された女性が
とある出来事をきっかけに男性への復讐を企てる姿を描いたサスペンススリラー

ドラマシリーズ「ザ・クラウン」で知られる女優
エメラルド・フェネルが監督と脚本を務め
主演はキャリー・マリガンです

 

あらすじ
明るい未来が約束されていると思われていたキャシーは
とある事件をきっかけにその道を絶たれてしまった
それ以降、平凡な生活を送っているように思えた彼女だったが
夜になると周囲の知らないもう1つの顔があり
その謎めいた行動の裏には
ある目的があったのだった

 

感想
なかなか面白いストーリーで
どんどんと物語に引き込まれる魅力がありました
メッセージ性も強く共感させられる部分もある
ただ、主人公目線で全てを鵜呑みにしてしまうとこじらせてしまうかも

 

なかなか評判が良く
気になったので観てきました


復讐劇としてとても面白く
最後まで引き込まれるような映画でした
最終的には復讐が成功してすっきりする映画でもあります

ただ、ハッピーエンドとは言えないですが…
少し切ない終わりでしたね

 

全体的にストーリーや展開の見せ方は上手いなと思わされます

順序よく謎を散りばめて
徐々に真相が明らかになっていく
という流れはサスペンスとしてはベタで王道ではありますけど
安定感がとてもあります

やってることは王道だけど
先の展開はなかなか読めず最後までハラハラもさせられる

ずっと興味が持続して終わりまで飽きずに観れる映画です

山あり谷ありの展開がメリハリを生んでいて
上手い見せ方だなと感心させられる

フリの部分もすごく良くて
不穏な空気から安心させたり
逆に幸せから一気に転落させたり

どんどんと場面が移り変わって
気持ちがクラクラしてしまうような勢いがあるんです

主人公がラブラブに過ごしているところから一転する展開はかなりいいですよね
ここから一気にラストスパートで盛り上がっていきますし
心が揺さぶられてゾクゾクした

本当にジェットコースターみたいに起伏が激しいストーリーで
1度心を捕まれたら離されない魅力がありました

ラストへの持っていきかたも
カタルシスを感じれるように上手く作られていて
あまり良い結末ではないけど
かなりすっきりする終わりになってます

結構、爽快感はありますよね


それと、語りすぎないのも良かった

特に主人公の過去に関しては
かなり曖昧に描かれています

なんとなく何が起きたかは
登場人物の会話なんかから想像できて
理解できるんですが

細かい部分は全く描かれません
回想シーンも全くありませんし

過去の出来事を察することはできるけど
本当のところが実はあまりわからなかったりする

なので、創造力が掻き立てられて
より物語に引き込まれるんです

そういう部分でも
この映画は観客を惹き付ける魅力が生み出されていると思いました

 

そして、本作はメッセージ性もかなりあって
なんか強い思いが込められてるな
と思わされる作品です

特にフェミニズム的な思想はとても感じます

女性蔑視や女性の立場の低さなどは
以前より良くなったとは言え
いまだに社会に根付いていて

そんな社会に対して一石投じてやろうという気概を感じる映画です

ストーリーや描きかたを観れば
そんな社会をぶん殴ってやろう
という気持ちは強いと思います

登場する男性は基本酷い言動ばかりだし
大学の学長とのやり取りでは女性が蔑ろにされる立場の弱さを見せつけられる

結果的に
そんな人たちに復讐するという物語なので
ストレートにそういうメッセージが込められているのは明白ですよね

個人的にも納得できる部分は大いにありました


でも、これにを一方的に鵜呑みにして感化されてしまうのはヤバいな
という気持ちもある

この映画を観て
男なんて最低だ
男なんて所詮みんなクズ
みたいな考えになってしまうのはちょっと違うと思います

それに、確かにそういう一面のある作品ではあるけれど
僕はそんなに極端なフェミニズムの映画には思えませんでした


この映画は
あくまで主人公のキャシー目線の物語です

登場人物は何人も存在するけど
みんなキャシーの目から見た人物たち
キャシーというフィルターを通して描かれています

そこは徹底してるんですよ

そして、本作は善悪では描いていなくて
キャシーの行いが正しいとは言い切っていない

そこはかなり重要なポイントだと思います


さらに、ラストの展開は
エンタメ的にはカタルシスがあって気持ちのいい結末ですが
実はかなり切なくて
決してハッピーエンドとは言えない終わりかた

しっかりと締めて終わってるようで
曖昧なラストでもあります


全ての発端である
キャシーの学生時代の事件に関しても
キャシー目線での過去は語られるけど
事実の部分は見えてこない

出来事自体は事実で間違いないですが
被害にあったキャシーの友人ニーナについても
キャシー目線でしか語られません

本当のニーナはどんな性格でそんな気持ちだったのかは
実は全然見えてこない

過去の描写についても曖昧で
実際にどんな状況でそれぞれにどんな思いがあったのか
そのあたりも明らかにされません

ぞな曖昧な描写というのも
本作ではとても重要じゃないかと思うんです


結論を言うと
この映画はキャシーの姿を通して
あなたはどう思いますか?
と質問を投げかけているんじゃないかと感じました

キャシーの行動はあまりに一方的だし暴力的でもある
そしてただの自己満足でもあります

かと言って
現実に起きている事実に問題があることは間違いなくて
キャシーのそんな言動に納得もできる

現状を変えるにはそこまでしてでも戦わなければ変わらない気はするけど
じゃあ、キャシーが復讐に成功して
それが幸せに繋がったのかと言うと
全然幸せではないですよね

途中で恋愛によってキャシーの気持ちがブレますが
ここが別れ道なのかなと思いました

キャシーが全てを赦して幸せを選んだら
失うものはあったかもしれないけど
悲しい結末にはなっていなかった可能性もある


途中まではフェミニズム的なメッセージが強い作品だと思えたけど
最後まで観ると
一方的に思想を押し付けるのではなくて
観客に答えを委ねるような作品だと感じました

この映画の結末から
答えを見い出だすのはなかなか難しいですね
何が正解なのかはわからない


もしかしたら
そこまで深く作られてないのかもしれないけど
この映画を観てすごく思考を巡らされたような気がします


あと、全ての元凶であるアルやその関係者たちの過去が暴かれて
それに対するアルやライアンの反応や
若気の至りだとという軽い考え方なんかを見ていると

今、日本で起きているオリンピック関連のトラブルに重なる部分があって
とてもタイムリーな感じがして面白かったですね

今のこの状況だからこそ見えてくるものもありました

 

いろいろ考えさせられてしまうメッセージ性の強い作品ではありましたが

エンタメ的にも楽しめる作りの映画でした
演出や音楽などもカッコよく魅力があって
気楽に観ても面白い映画だと思います