何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「サマーフィルムにのって」感想 溢れる映画愛から希望を貰える

 

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どうもきいつです


青春映画「サマーフィルムにのって」観ました

時代劇オタクの女子高生が映画制作に取り組む姿を描いたSF青春ストーリー
主人公ハダシや仲間たちと未来からやって来た凜太郎との交流が描かれます

監督は松本壮史が務め
主演は乃木坂46の元メンバー伊藤万理華です

 

あらすじ
時代劇を愛する高校3年生のハダシは
所属する映画部が恋愛映画を撮影していることに不満を抱いていた
そんなある日
ハダシは自分の撮りたい時代劇の武士役にぴったりの男子に出会う
それをきっかけに彼女は友達を巻き込み映画撮影に乗り出すのだった

 

感想
少し強引さが目立つ映画ではあったけど
可愛らしい雰囲気がなんか好き
終盤の盛り上がりも魅力的で妙に引き込まれる
そして、溢れる映画愛を感じる作品でした

 


なんとなく面白そうだったので観に行ってきました

シンプルな青春ストーリーで
シンプルなSF
あまりオリジナリティのある作品ではなくて
インパクトは弱い

でも、作品の雰囲気はすごく良くて
なんか嫌いにはなれない
むしろ、ちょっと好きなくらい

地味だけど魅力はあったと思います


ストーリーは
主人公のハダシが映画を作るために仲間たちと奮闘するという内容
そこに未来からやって来た凜太郎というSF要素がプラスされています

青春ストーリーとしてはかなりありがちで
ひねりはほぼありません
映画作りを通して仲間たちと絆を深めたり
淡い恋愛があったり
そして、映画作りに苦悩する

やりつくされたような物語でパンチは弱い

SFに関しても
今さらな設定や展開なのでいまいち盛り上がりはありません


これだけでは地味な映画でつまらなそうですが
この映画は妙な魅力があって
全然つまらなくはないし
観ていて少し心が癒されるような気がしました


この映画は
ちょっと粗削りだし強引だし勢い任せなところが目立つんですけど
逆にそこがこの映画の魅力になっていたように思います

これが上手くまとまってるだけの映画になってたら
本当にただありがちて面白味のない映画になっていたと思うんです


青春ストーリーと勢い任せな作風が上手くマッチしている

だから、未熟ゆえの可愛さや初々しさが
この作品からストレートに感じることができました

これは意図してなのか偶然なのかはわからないけど
とても良い作風で個人的にもすごく好き


それと、設定は面白くて
女子高生のハダシが時代劇大好きだったり
所属する映画部がアホな恋愛映画を撮ってるリア充集団だったり

そんな設定がコミカルで笑える

それにギャグみたいな設定なだけで終わってなくて
ストーリーの中でそんな設定が上手く生きてきます

映画愛や主人公の成長が
それを通して描かれていたりもする

最終的には感動させられました

 

可愛さで言えば
登場人物もみんな可愛らしい

高校生らしい初々しさがあります

役者の面々はみんな20歳以上のいい歳をした大人なんですけど
みんな高校生に見えるんですよ
10代の純朴さをすごく感じれます

ハダシ役の伊藤万理華なんてもう25歳だけど
普通に高校生に見える

会話の空気感も高校生って感じがするし
観ていてほっこり癒される

そんなナチュラルな高校生らしさも
この映画の作風にぴったりとマッチしていました

 

で、なによりも
本作はとても映画愛を感じれました

主人公ハダシが映画愛に溢れたキャラクターというだけではなく
この映画自体がとても映画愛に溢れている

それを感じるのが終盤の展開です

未来の世界では映画がなくなっていると知ったハダシがそれでも映画を完成させると決意し
凜太郎は未来で映画を作ると決意します

これは登場人物たちの声というよりは
もはや本作を作った人たちの信念ですよね


未来の世界では人々が映画に費やす時間が無くて廃れてしまった
という設定で
これは今の現実世界に重なる部分が大いにある

今や映画も
倍速再生やファスト映画などで
ただ消費されるだけのコンテンツとして扱われてたりもします

これから先はさらにそれが加速していく可能性だってあります


映画を作る側からすれば
そんな時代の流れの中で映画なんて作る意味はあるのか?
という疑問が生まれるのは当たり前で

自分が作った映画が
本来の状態で観てもらえなかったり
たった5分ほどで消費されてしまうのは
不本意に決まってます


でも、現実的に2時間の映画を観れないって人も増えてきていて
それが大多数になってしまえば
映画の存在価値が無くなってしまうのは間違いない

そうなってしまえば映画なんて作る意味がないわけですよ


そんな時代の流れの中での
作り手側からの答えがこの映画です

例え必要とされなくなっても自分達は作り続ける
そして、それを未来に繋げていく
というメッセージが込められている

もうメッセージと言うよりは
決意表明みたいなもんです


これは映画に限らず作品を作る人間がみんな持ってる思いで
それが愛なんですよね

だからこの映画からは映画愛をすごく感じれるわけです


倍速再生やファスト映画を見る人が増えて
それに対して文化の廃れを嘆く人は多くいます

僕もこんな時代の流れを感じて未来に不安を抱くことがある


しかし、写真の発明により絵画が必要とされなくなっても描き続けた人がいるように
映画が必要されなくなっても作り続ける人がいる

そんな人がいたからこそ
絵画はいまだに愛されている
映画もこの先どんな時代が来ようとも愛され続けると思う


この映画のような映画愛に溢れる作品を観ると
映画は不滅だと希望を抱かされます
それだけでこの映画には価値がある

 

本作の登場人物たちのように映画を愛し作り続けていく人がいる
この映画を受け取って映画の力を信じて未来に繋げていく人は絶対にいます

青春映画として魅力的なだけではなく
この映画から伝わってくるストレートな愛に
希望を与えられました