何もかもが滑稽

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映画、漫画、アニメなどが好きで、その事についての感想、思ったことなどを書いています。 それ以外の事も時々書きます。

映画「ドント・ウォーリー・ダーリン」感想 らしさに囚われる男たちには哀れみすら感じる

どうもきいつです


サスペンス映画「ドント・ウォーリー・ダーリン」観ました

完璧な生活が保証されている街を舞台に
理想的な生活を送る女性の周囲で起きる不可解な現象が描かれます

監督は「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」で長編初監督を務めたオリヴィア・ワイルド
主演は「ミッドサマー」などのローレンス・ピューです

 

あらすじ
完璧な生活を保証された理想の街で夫のジャックと幸せな日々を過ごすアリス
ある日、彼女は隣人の女性が赤い服の男達に連れ去られるのを目撃する
それ以降、アリスの周りで不可解な現象が頻発しだし精神が不安定になっていくのだった

 

感想
理想的すぎてもはや気味の悪いこの世界
終盤にはこの世界に納得させられる
スリリングな展開もあって楽しめました
それにしても、男達の姿が滑稽だったな
哀れ…

 

予告を見て気になっていた作品でした
予告の段階ではどんな映画なのか予測ができず
ワクワクした気持ちで観てきました

 

どことなく掴み所の無い世界観だったり
物語の方向性もなかなか見えてこない作風ですが
終盤に明かされるこの世界の全貌には納得させるれる

まあ、ちょっとありがちなオチではあるけど
個人的にはすっきりしたし
嫌いな展開じゃないです

興味はずっと持続したので
最後まで飽きずに楽しめました

 

やはり、本作が面白いのは
前半と後半のギャップですよね

前半の理想的な幸せ生活からの
後半での世界の真実が判明
これが人間の愚かさや気持ち悪さを表現できていて好きです


まず、前半部分はと言うと
理想的な街でのラブラブイチャイチャ夫婦の生活が見せられます

お洒落な街で
お洒落な服を着て
お洒落な音楽が流れ
理想的な生活を送っている主人公のアリスや夫のジャック、隣人の家族たち

みんな仲良く裕福に何の不満もないような多幸感に溢れる最高の人生

とにかく理想郷を絵にしたような幸せが描かれているんですよ

観ている側も
映像的な美しさやノリの良いBGMから
この画面の中に憧れを抱いてしまうほど

観ているだけで楽しい気持ちにさせられる


ただ、あまりに理想的すぎるこの世界に
少し気持ち悪さを感じるのは否めない

規則的な並びや動きであったり
同じ日々の繰り返しであったり
みんなが同じような生活を営んでいたり

そこに若干、違和感を感じる
不穏な空気が漂っている
そこになんとなくモヤモヤさせられます


主人公のアリスは
そんな違和感に疑問を感じだし
そこからはちょっとホラーな展開になっていきます

幻覚のようなものが見えたり
急に変な行動をしてしまったり

この描写にはなかなか不安を煽られ
この辺からは怖くなってきますよね
シュールな怪現象や幻想的な映像などビジュアル的にも面白く観れました

ここからは謎がより深まるので
どんどんと本作の世界に引き込まれていきます
先の展開が気になり興味津々です


そして終盤になると真相が明かされますが
これがすっきりするので満足感がある

そこまで斬新なオチではないんですけども
今までの違和感や散りばめられていたヒントや伏線が
終盤の真相に繋がっていくので
気持ちよさがありますよね

怒濤の展開で一気に押し寄せてくる感じもあるので
ラストスパートはかなり盛り上がります

終盤はスリリングな描写も増えてきてエンタメ的な楽しさも満載

観終えたときはシンプルに面白い映画だったなと思えました

 

王道だけど
ミステリーやサスペンスの作りとしてはしっかりしていて
安定感がありました

 

で、本作の中心となるのはテーマですよね
本作のテーマは
わかりやすいほどフェミなやつです

男尊女卑からの女性の解放がそのまんま描かれたような作品になっている

女性らしさを強要された主人公が
そんな世界から脱出しようと抗う物語ですからね


単純に考えれば
女らしさを強要される女性は可哀想
女にも女の人生がある
みたいな女性側の強い主張のようにも思えるけど

個人的には
男性に対する哀れみのようなものが本作から感じられました

女性は女性で女らしさを求められているわけですが
男性は男性で男らしさに縛られていると言うか

日本でもそんな人多いじゃないですか
男なら外で金を稼ぎ家庭の中心で家族を支え
その金で妻を満足させ幸せな家庭を築く
みたいな

本作ではそれが如何に滑稽なことなのかが描かれています


アリスの夫ジャックにしても
現実の世界ではアリスが外でバリバリ働き
ジャックは仕事をしてるのかどうかもわからない状況

そこでアリスの人生を奪ってまでも
自分の理想の世界を築き上げそれを強要する

とにかく、自分の理想の“らしさ”に囚われるジャックの姿は滑稽だし哀れすぎる

ジャックだけでなく
本作に登場する男性はみんな“らしさ”に囚われた哀れな人たちなんですよね
言ってしまえば
この男たちはみんなオナニーしてるだけのようなもんなんですから

結果的に男たちの理想の“らしさ”を具現化した世界は崩壊してしまうわけで
ある意味、男たちも解放されたのかなと思ったり

本作は
女性の女らしさからの解放を描きつつ
男性の男らしさからの解放も描いていたのかもしれません


僕自身は昔から
よくある男らしさみたいな考え方に気持ち悪さを感じていたタイプなので
本作の男たちの滑稽さはより客観的に感じれたんですかね

“らしさ”というものは
強要されるにしても自分自身を縛りつけるにしても
自分を見失うことのきっかけになるのかなと思わされました

 

フェミ的なメッセージが込められてますが
一方的に男性が悪いと言ってる映画でもなく
男性は男性で縛られていて可哀想だな
みたいな目線の作品にもなっていました

エンタメ的にも楽しめる要素はたくさんあったし
なかなかクオリティの高い映画だったんじゃないかと思います

 


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